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嵐咲く  作者: 加藤無理
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怒声と本音

 怒鳴り合ったものの、話は一段落した。砂漠の山も麻薬密売組織も互いに干渉しない。どちらかが攻撃を仕掛けたら容赦無く報復する。また、砂漠の山は今後も薬物常用者を回復させる代わりに、メキシコの環境保全に協力する。ロサはアルコール依存症や食中毒の回復にも力を入れる。その分、危険薬物から少し身を引く。


 砂漠の山の面々は徐の瞬間移動で公園から去って行った。残された密売組織の面々は苦虫を噛み潰した顔をしていた。プーランが会話を録音していた。簡単に取決めを反故にするわけにもいかない。無闇に砂漠の山に攻撃をすればメキシコそのものを攻撃する可能性が有る。全員まとめて暗殺するのも難しい。


 パブロは全身で溜息を吐く。不愉快な対話だったが、全く進展が無かったわけではない。他の首領達も似た心境だ。皆、険しい顔をしているが瞳には落ち着きが有る。安堵もしている。


 ホセは憎悪を込めた視線で地面を睨んでいる。パブロはホセに、

「今度は日本を薬漬けにするか?」

「いいや。このまま放っておく」

 ホセが暗い声で答えた。


 カリフォルニア州の事務所に戻った砂漠の山の面々は座り込んだ。全員、虚ろな目をして汗をかいている。特に徐は疲労困憊で顔色が悪い。何とか武装解除して着替えると会議室の席に座る。クァンが徐にペットボトルの水を出して労う。徐は礼を言って受け取る。


 皆がある程度、落ち着きを取り戻すと、ナニアがホセとの会話を説明した。佐藤は茶を飲みながら天井を眺めている。アヌラックは俯きながらコーラを飲んでいる。皆、不思議そうな顔でナニアの説明を聴いている。


 話が終わると崔が佐藤を睨んで、

「もっとマシな言い方があっただろ、チョッパリ!」

「『チョッパリ』とか言うなよ。バカ丸出しだぞ」

 ダンカンが落ち着いた声で諭した。崔は俯いた。プーランが不安そうに、

「ホセは今後どうするんだろう」

 ナニアが微笑み、

「恐らく何も攻撃してこない。日本に手を出すこともないと思う」

 ロサが腑に落ちない様子で、

「ホセもその仲間達も佐藤の言動を許容出来ないはず」

 ナニアは明るい声で、

「私はホセをじっくり観察した。大丈夫」

 ロジャンは安堵の溜息を吐いた。肩を落とす。


 皆、何となく解散するとプーランが佐藤・ナニア・アヌラックに録音を聴かせた。首領達と幹部達の罵声の他にダンカンの怒鳴り声とクァンと徐の大声も有った。いつも冷静な職場仲間達の違う面が知れた。佐藤は驚いて目と口を開けた。時折、怖気づく様子のないプーランとロジャンの声。佐藤は感嘆した。


 録音を聴き終えるとプーランとアヌラックは階下の部屋に帰って行った。佐藤とナニアの二人きりになる。ナニアは穏やかな顔で、

「ホセはまだ貴方を愛している」

 佐藤は不可解で眉間に皺を寄せる。ホセに好感を持たれる様な言動を一切した覚えはない。特に今回はホセを激怒させたとしか思えない。ナニアは真顔で、

「嘘ではない。私が嘘を言う理由が無い。よく考えよう」

「分かりました」

 佐藤は腑に落ちなかったが返事をした。

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