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嵐咲く  作者: 加藤無理
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ホセの作戦

 三日後。晴れた夜。ホセは先日と同じクラブを貸し切りにして前回とは違った客人と飲んでいた。国家公務員達と代議士達と麻薬取締官達と大企業の経営者達と投資家達。ホセの部下達五人とホステス達がもてなす。壁際で警察官達や自衛隊員達が整列して皆を囲んでいる。総勢八十人。


 ホステス達は緊張しながらも丁寧に接している。ホセの部下達は無表情。ホステス達に対しても客人達に対しても慇懃な態度を取るが余裕を見せている。客人達はホセ達を観察し、酒を飲まず、警戒心を隠さない。表情は固い。時折、ホステス達の差し出す茶を飲んでいる。皆、英語とスペイン語のどちらかを使用して臨機応変に訳し合う。ホセは相変わらず微笑んでいる。


 ホセは明るい声で、

「俺達は条件次第でこの国から撤退しようと思う」

 客人達は不思議そうに眉を寄せる。ホセは楽しそうに、

「白い岸だけではなく他の組織も撤退させる」

 麻薬取締官達は首を傾げる。代議士達は疑いの目でホセの部下達を見やる。部下達は動かずに平然としている。ホセはニヤリと笑いながら、

「佐藤華江に感謝するんだな」

 投資家達と経営者達は互いに目配せをする。代議士の一人が茶を飲む。ホセは両掌を天井に向け、

「日本女性達が我国に来ても俺達は一切暴力を振るわないし、しっかり敬意を払う」

 ホステス達は目を大きくさせてホセに振り向く。ホセの顔には屈託が無い。麻薬取締官の一人がホセを睨みながら低い声で、

「君達は我国に何を期待しているんだ?」

 フンとホセは鼻で笑い、

「君達は公正な態度で日本を再興すれば良い」

「解せない」

 代議士の一人が反発した。ホセは微笑みながら頬杖をつき、

「その気になれば俺達はこの国を滅ぼせるけれど、それで良いのか?」

 客人達は互いを見やる。皆、不可解で顔色が悪い。経営者の一人が、

「具体的に我々が何をすれば君達は撤退してくれるんだ?」

 ホセは頬杖を止めて、

「先程も言ったけれど、佐藤に感謝して不祥事を起こさずに働けば良い」

 皆、苦い顔をする。国家公務員達は腕を組む。代議士の一人が指を組んだ両手を膝の上に置き、

「分かった。これからもそうしよう」


 客人達は護衛していた自衛隊員達と警察官達を連れて出て行った。皆、不可解で顔を曇らせている。ホステス達はそれを不安そうに見送る。部下達はホセの様子をうかがう。一人がハッキリした口調で、

「これで本当によろしいのですね」

「ああ」

 ホセは笑みを浮かべる。しかし眼光は鋭い。


 ホセの言う通り、五月中には国内外の麻薬密売組織が撤退した。メキシコの巨大密売組織の隙を狙う組織も有ったが、それらの組織もシノギが阻まれた。白い岸による密告がなされたからだ。極道達の取り仕切る大麻や覚醒剤の消費も縮小したが、それ以上に新しい危険薬物が日本から消えていった。薬物常用者達や日本の売人達や製造者達はこの変化に驚いた。警察と麻薬取締局は次々に彼らを逮捕していった。


 日本の治安と経済は回復していく。白い岸の首領でホセの父親でもあるパブロは他の首領から文句を言われたが、それを冷静になだめた。しかし内心は、

「ここまでやる必要が有るのか?」

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