死闘
四月一日。サハラ砂漠から日の出。遥か前方の地平線から複数の何かが飛んできた。ダンカンは右手に持っているチタン合金のパイプから衝撃波を出した。砂塵と石が四方八方に舞う。地面が前へ前へと抉れていく。
衝撃波によって百本の鎖が一斉に弾かれた。全て成人男性の腕ほどの太さであるが、全て宇文に跳ね返ってくる。当たる前に宇文は全ての鎖を空に上げ、大地に叩き下ろした。ゴオオオン。宇文がその勢いで上に飛んで行く。
ダンカンは左手のパイプ先を空に、右手のパイプ先を前方に向けたまま、衝撃波を同時に出す。右のパイプを少し上に傾けていた。
百本の鎖はまた弾き返された。宇文にも衝撃波が襲う。宇文は今までの鎖を消しながら、自分の全身に鎖を巻き付けた。足から大地に向けて胴体ほどの太さの鎖を伸ばして岩場にも巻き付けた。衝撃波を受ける。
二人の距離は最初から十キロ以上、離れている。辺り一帯は石と砂が舞って視界が悪い。轟音も響く。ダンカンの周りには半径百メートルほどの窪地が出来ている。底にダンカンはまだ無傷で立っている。
周りが大小の塵で空間をまだ埋め尽くしていたが、左右から容赦無く胴体ほどの鎖が大地を削りながらダンカンを襲う。ダンカンは二本のパイプから衝撃波を出して弾く。
宇文は宇宙に吹き飛ばされずに耐えたが、先程の岩場は粉々だ。その跡地の後方に着地と共に宇文は攻撃を仕掛けたがこれも弾かれる。前方からまた衝撃波。宇文はまた鎖で全身を巻き付ける。更に大地に鎖を突き刺して張る。奥から前方の地面が抉られていく。しっかり固定していたが、宇文は鎖ごと一キロ後方に吹き飛ばされる。
ダンカンは左右のパイプを前方に向けて二発発射していた。大地はどんどん抉られていく。地形が変わっていく。ダンカンは無傷だが疲労で顔色が少し青白い。肩で息をしながら、全身に汗をかいている。
宇文は大地に叩きつけられる前に鎖を出して地面を叩いて受身を取りながら着地した。疲労と苦痛で顔が歪んでいる。全身で息をしながらゆっくり立ち上がる。足を前後にして地面をしっかり踏みしめ、前を向きながら両腕を後ろに向け、胴体ほどの鎖を勢いよく出す。それを前方へ思い切り振る。
左からの殺意。ダンカンは振り向くと右手のパイプで衝撃波を出してそれを弾き、左手のパイプから軽い衝撃波を出して自分の攻撃で身体が吹き飛ばされないようにした。
失敗に気付いた宇文は鎖を消す。悔しさと疲労で更に顔が歪む。歯軋りをする。腰を低くしてかまえると左手から鎖を出して後ろの地面を強く叩く。宇文が前方に勢い良く飛んでいく。
正面からの殺意。ダンカンは両手のパイプを前方に出して衝撃波を発した。手応えが有ったが、左右からまた鎖が襲ってくる。ダンカンはパイプを左右に向けてそれを弾く。渾身の力を振り絞ってまた両手のパイプを前方に向けて更に発射。
宇文は飛びながら全身を鎖で覆い、左右から鎖を出してそれを正面に強く振った。直後に身体にダンカン攻撃を受け、二本の鎖も弾かれる。宇文は後方に飛ばされる中、鎖で反撃と受身を繰り出そうとしたが、その前に衝撃波が直撃した。更に飛ばされて後ろの大きな砂山に当たる。それでも止まらずに岩山に叩きつけられる。全身を鎖で守ってはいたが、岩が粉砕され、宇文は跳ね返って地面に叩きつけられた。鎖は消えて身体中は血まみれ。服はボロボロ。うつ伏せに倒れたまま、宇文は動かない。
ダンカンは全身の痺れに耐えながら立っている。塵が空間を埋めているが、五感を研ぎ澄ませる。二本のパイプをかまえながら前方を睨む。全身は汗まみれで服は砂と埃まみれだ。顔色が悪い。
宙を舞っていた塵が落ちてきて、視界が開ける。風が吹くが戦闘の轟音は止んでいる。嗅覚も戻る。汗は出てくるが悪寒は収まった。殺意は感じられない。ダンカンは前方に向かって歩いて行く。右手でパイプをかまえながら左手はパイプを仕舞って小型望遠鏡を取り出す。
遥か前方で宇文が血溜まりの中で倒れている。その周りには大小の石が散らばっている。ダンカンは望遠鏡を仕舞うと、右足から衝撃波を出しながら大地を蹴った。
宇文の手前十メートルほどでダンカンは着地した。そこからでも宇文が絶命している事が分かる。ダンカンは右手のパイプを仕舞うとゆっくりと近づく。
ダンカンは腰を下ろす。うつ伏せなので宇文の死顔は見えない。ダンカンは宇文に触ろうとはしなかった。宇文の後頭部から爪先まで悲しい顔で見渡す。




