ロシアの二発
部下達がアメリカ合衆国で大活躍をしている頃、ロシアのシベリアにある荒地にダンカンとプーランがいた。プーランは小型核シェルターの中で特別なパソコンを駆使してロシアのサーバーと人工衛星をハッキングしている。シェルターは何時もカリフォルニア州にある会社の隣に有るが、今回は徐がプーランとダンカンと共に瞬間移動させていた。
外は真冬の激しい吹雪。しかしダンカンは核シェルターの上に平然と座っている。厚手のコートと手袋と長靴、鼻まで覆うマフラー、更にサングラスとイアホンを付けながら厚い帽子を被っている。防寒対策をしていても寒い。核シェルターに雪と風が叩きつける。視界も悪く嗅覚も鈍る。イアホンから時折、プーランの報告が聴こえるが、それ以外は不気味な轟音が響く。
シベリアは非常に厳しい気候と地形ではあるが、同時に豊富な水資源と地下資源と森林が広がっている。ダンカン達のいる所は丁度、何も無い荒地である。
遥か西の方から弾道ミサイルが発射された。あっと言う間に宇宙空間に近い上空に到達。音速を簡単に凌駕しながらロシアの国土を横断していく。高速で飛びながら予測不可能な動きをする。米軍やアメリカ航空宇宙局ですら迎撃が難しいと評判だ。
ミサイルは容赦なくダンカンのいるシベリアに向かう。
しかし、シベリアに激しい地鳴りと共に衝撃波が炸裂した。瞬時にそれが宇宙空間にも到達。ミサイルが制御を失って吹き飛ばされる。宇宙ゴミを消し飛ばしながらミサイルは地球から出て行った。真空の宇宙。月の軌道の手前でそれは大爆発。
シベリアを襲っていた吹雪が止んでいた。プーランのいる核シェルターは上下左右に揺れたが、壊れなかったし倒れなかった。しかし辺り一帯が窪地になっている。ダンカンは全くの無傷だ。服も乱れていない。ダンカンは身体全体で深呼吸した。
休む間もなく、今度は東から再度、弾道ミサイルが発射された。先程のミサイルよりも近くて時間が無い。
しかしこれもダンカン達を直撃する前に衝撃波によって宇宙空間に吹き飛ばされて、地球から遠く離れた真空で粉砕された。
一発目はモスクワ近郊の軍事施設から、二発目は北太平洋の中に潜っていたロシアの潜水艦から発射されていた。それをダンカンが発した衝撃波が弾いたのだ。
シベリアの荒地に半径一キロメートルの窪地が出来たが、奇跡的に人的被害は無かった。ダンカンとプーランのいる荒地には何も無く、周りの森林も河川も動物達も無事だ。核シェルターの机の下でヘルメットを被った頭を抱えながらうずくまっていたプーランも無傷だ。
被害といえば消失した数多の宇宙ゴミと二つの人工衛星である。中国産とロシア産が1基ずつ。二つの弾道ミサイルには核爆弾が搭載されていたが、地球は全く放射能汚染されていない。
プーランがハッキングしながら確認すると、ダンカンに報告した。ロシア政府は捨身の攻撃を諦めたようだ。ダンカンは核シェルターから飛び降りると綺麗に着地した。扉を開けて中に入る。プーランが振り返るとダンカンが青白い顔をしながらも笑顔で親指を上げている。真冬なのに汗をかいている。プーランは拍手した。
この件はすぐさま世界各国の諜報機関や研究機関に気付かれたが、誰も公表しなかった。報道陣も民間人も知らない。世界中の政府高官達や研究者達はロシアに非難声明を出す事すらしなかった。ロシアが自国の領土内で無茶な核実験を突然行った。政治的にも倫理的にも科学的にも問題ではある。この件を知る者達はロシアの失敗を嘲笑した。また、ダンカンとプーランの能力に驚嘆した。
核シェルターの中でダンカンとプーランは暫く休むと、徐を呼んで会社に戻してもらった。




