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嵐咲く  作者: 加藤無理
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頑張る八人

 一月下旬。アメリカ合衆国中心部のカンザス州にあるとある町。砂漠の山の面々八人がビルの屋上で作戦を開始する。プーランとダンカンは現在、ロシアにいる。


 徐が社長と副社長を会社のあるカリフォルニア州からロシアに瞬間移動させ、次に戻って残りの職場仲間達をカンザス州に移動させた。疲れたので休む。


 アヌラックとナニアがヘッドホンをかけながらノートパソコンを駆使して麻薬取締局と合衆国内の各州と米海軍と連絡を取りながら職場仲間達に指示を出す。


 屋上の中心部で佐藤とロサとロジャンがタブレット端末を睨みながら能力を発動する。ダボスから無事に帰った時に佐藤はアヌラックから能力を解除してもらっている。ロサが佐藤の右肩を左手で軽く掴んでいる。ロジャンも佐藤の左肩を右手で軽く掴んでいる。


 ナニアが号令をかける、

「作戦開始!」


 アメリカ合衆国を挟む太平洋と大西洋から二十五個ずつ台風が次々と咲き誇っていく。東海岸も西海岸も轟音が鳴り響き、大地が揺れる。台風が上陸していく。作戦開始から一時間ほどで一つの州に一つの台風が留まるようになる。カンザス州にも来ている。雷鳴が響く。


 クァンが自分達のいるビルを防御壁で覆う。合衆国中に風が吹いているが二次災害を起こすほどではない。雨が降る。雨足は強いがどしゃ降りではない。


 ナニアが指示を出す、

「崔、発動だ!」

 崔が目を閉じながら指を組んだ両手を額に当てる。


 数多の老若男女が建物や車に避難した。だが一部の人達が外に出て行く。外出した人々はそのまま、呆然と立ち尽くしている。皆、目が血走っていたり逆に虚ろだったりする。十分ほどすると、瞳も顔つきも姿勢も改善されていく。


 海洋で佐藤の咲かせた台風からロジャンは不純物を取り除く。ロサがその台風に解毒効果を与える。風雨に晒された人達から危険薬物が除去されていく。合衆国全土の薬物常用者達を一度に回復させる作戦である。依存症や禁断症状も取り除かれる。


 激しい民衆の動きによる不足の事態に備えてクァンが待機していたが、幸い事故は起きていない。


 崔が薬物常用者達に火事の幻を見せて誘い出したのだ。炎も煙も焦げ臭さも熱さもパチパチと燃える音も見事に再現されている。


 真冬だが北部でも雪は不思議と降らなかった。雨が降る。


 州兵達や麻薬取締局が確認して周り、監視カメラを分析し、頃合いを見計らう。作戦開始から三時間ほど経つ。十分に浴びた常用者達は我に返ると室内に戻っていく。路上生活者達も物陰に隠れる。見届けていた兵士や役人達がそれを報告していく。


 ナニアが最後の号令をかけた、

「作戦、終了!」

 皆、溜息を吐いた。雨と風が止んだ。全ての台風が消えていき、晴れていく。クァンも防御壁を解除する。死傷者は奇跡的に一人もいなかった。結果を聴いたナニアが、

「作戦は大成功」

 と、報せた。徐は拍手した。皆も手を叩く。疲労で青白い顔をしているが表情は明るい。


 雨天時には視聴覚も嗅覚も遮断されて通常は犯行に気付かれにくい。特に性犯罪が多発するが、この時は事件は起こらなかった。再犯を繰り返す性犯罪者達には低気圧で頭痛と悪寒と目眩と吐気を催させた。


 佐藤は作戦会議の時に性犯罪者達を殺戮すべきだと主張したが、崔が激怒して机を叩いて怒鳴った、

「まだ虐殺をしたいのか、チョッパリ!」

 佐藤は困った顔をして、

「分かった、諦めるよ、チョン」

 と、言い返した。崔は暴言に腹を立てて立ち上がり、椅子を蹴り倒した。更に佐藤を蹴ろうとしたが、徐とクァンに羽交締めされた。崔は、

「何故、アイツではなくて俺を止めるんだ!」

 と、怒鳴ったが、クァンが落ち着いた声で、

「落ち着け」

 徐は佐藤が崔を睨んでいるが座ったままで何も攻撃してこないのを確認すると崔に穏やかな声で、

「多分、大丈夫だ」

 崔は全身で溜息を吐くと大人しくなった。アヌラックが倒れた椅子を元に戻す。崔は気まずそうにそれに座る。ロジャンは心配そうに佐藤を見つめ、ロサは呆れた様子で崔を見つめている。

「佐藤、性犯罪者であってもくれぐれも殺さないように」

 皆が落ち着きを取り戻すとナニアが会議を再開させた。佐藤は素直に返事をした。プーランは涼しい顔でノートパソコンのキーボードを打ちながら記録を取り続けている。ダンカンは指を組んだ両手を後頭部に付けて天井を眺めながら耳で部下達を観察している。サングラスで目元は皆から見えない。


 会議でそんな不穏な事が起きたが、砂漠の山の面々は成功した。

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