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嵐咲く  作者: 加藤無理
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一本の矢

 翌朝。カリフォルニア州にある砂漠地帯に砂漠の山の面々が来た。トラックの様に大きな車二台に総員が乗り、会社の駐車場から現地まで徐の能力で瞬間移動させた。


 二台の車は砂漠の中心部にある岩陰に現れた。従業員達は降りる。ダンカンが遙か先にある窪地を指差すと、徐がダンカンの隣に立った。二人はそこに瞬間移動した。車近くで待機している他の従業員達からは約十キロほど離れた。


 ダンカンは先程からヘッドホンを付けながら金属製の弓矢を持っている。徐が不思議そうにそれを見ていると、ダンカンは、

「皆の所に戻ってくれ」

 と、指示を出した。徐はその通りにした。徐が戻ると皆、双眼鏡や望遠鏡を用意してダンカンの様子をうかがっている。徐も双眼鏡を車の中にある鞄から取り出すと、眺めた。


 ダンカンは矢をつがえるとそれを空に向けてかまえた。徐の隣にいたアヌラックが固唾を飲む。ビュー。ビュー。何度か強風が従業員達に吹きつける。皆、社長を眺めながら、こらえる。車の近くでプーランが一人、ノートパソコンを睨みながらダンカンにスマホで指示を出す。クァンが望遠鏡を覗き込みながら、車と職場仲間を囲む半円形の防御壁を作る。


 ドオン。轟音と共に地面が揺れる。疾風が社長のいる方面から襲ってくる。無数の砂や石が防御壁を叩く。防御壁は傷付かずに全てを弾き返す。従業員達は倒れないように踏ん張っている。


 ダンカンが勢い良く放った矢は一気に飛んでいった。晴天を突き抜け宇宙空間に突入。矢は周辺の宇宙ゴミを沢山消し飛ばしていく。真空状態でも勢いは収まらない。矢は地球に近付く隕石に当たる。隕石が見事に粉砕された。


 途中からプーランのノートパソコンにアヌラック・崔・ロサ・ロジャンが集まっていた。人工衛星が映し出している映像を凝視している。確かに隕石が原型を留めていない。破片の一部はまだ地球に向かっているが、大気圏に突入した時に全ては消え去った。


 徐・佐藤・クァン・ナニアはダンカンを終始眺めていた。一歩も動かずに体勢も崩れなかったダンカンがゆっくりと弓を下ろす。ダンカンのいる窪地が更に窪んでいる。半径百メートルほど抉れている。しかしダンカン自身は無傷でヘッドホンも服もサングラスも無事だ。


 徐と佐藤は呆然と立ち尽くした。NASAの報告を聴いたプーランがハッキリと、

「作戦は成功した」

 と、報せると従業員六人が笑顔で拍手した。プーランも微笑む。佐藤と徐は職場仲間を見渡す。クァンの防御壁が消える。ナニアが、

「徐。社長を連れて来て」

 徐は未だに驚きながらもその通りにした。ダンカンはニッコリと笑っている。全く疲労していない。徐はダンカンを職場仲間の所へ移動させた。皆、再度拍手した。


 帰りはアヌラックとロジャンが普通に運転して帰って行った。徐は少し疲労を感じた。


 ダンカンが破壊した隕石は直径十キロメートルほどの大きさであった。地球に直撃する可能性は低かったが、当たれば大惨事になる。車に揺られながら佐藤は俯いていた。

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