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嵐咲く  作者: 加藤無理
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崔とロサ

 十一月の下旬。アメリカ合衆国のとある州にある薬物更生施設。そこには薬物の過剰摂取により依存に苦しむ人々が集まっている。依存症は本人の意思だけで制御出来るわけではない。骨が軋むような激痛を伴う禁断症状も有る。薬物を中断しても骨や筋肉や内臓や脳神経に後遺症が残る場合もある。廃人寸前な者もいる。


 薬物といえば大麻や覚醒剤が有名だが、近年では次々と新しい危険薬物が開発され製造され売られていく。一見、それらは大麻や覚醒剤よりも安価で手軽のようだが、安全な使い方が全く確立されておらず、幻覚や多幸感を味わう前に廃人になったり死亡したりする例は多々有る。何度も銃弾に撃たれても暴れまわれるほどの身体能力を持つ場合も有るが、最期は悲惨である。その前に薬物常用者は二次被害三次被害を起こす。


 危険薬物はアメリカ合衆国だけではなく世界各国で問題になっている。


 ロサと崔楽は更生施設で治療を受けている利用者達に解毒剤を摂取させて回復させる仕事を今回こなす。特に禁断症状や幻覚に苦しんで暴れている利用者達を大人しくさせて解毒剤を注射したり飲ませたりする。


 ロサと崔は施設の職員と看護士に奥に案内された。大柄なヒスパニック系の男性が思い切り壁を叩き続けている。コンクリートの壁は既に何箇所もヒビが入っている。前面は鉄格子と防弾ガラスの二重になっており、廊下から中が見える。


 男は両手両足が血だらけになっているが、まだ壁を蹴ったり叩いたりしている。目は血走っている。職員と看護士は慣れているはずだが、痛々しそうに眺めている。ロサと崔も息を飲んだ。


 しかし崔は一度深呼吸をすると防弾ガラスと鉄格子で出来た扉を大きく手の甲で叩いた。すると男はピタリと動きを止めた。腕と足を下ろすと不思議そうに辺りを見渡し天井にも顔を向ける。突然、何かを避けるように伏せる。目を固く閉じて耳を塞いでいる。男はそのまま固まっている。


 崔は扉を開けて入った。ロサもそれに続く。男は気付かないのか動かない。崔とロサは男の背後に回り込む。崔は男の右肩を掴む。男は震えだしたが動かない。ロサは男の左腕に思い切り注射器を刺した。そのまま中身を入れていく。男はビクリと反応したが、暴れなかった。ロサが注射を終えると注射器を引き抜きながら後ずさった。そのまま扉に向かう。ロサが出ていくと崔も肩を掴んでいた手を離して出て行った。


 男はゆっくりと顔を上げる。先程の険しい顔と打って変わって穏やかである。血走った目の光も弱まっている。男は立ち上がる。廊下にいる崔とロサ、職員と看護士に振り向く。看護士は、

「気分はどう?」

 と、尋ねると、男は肩をすくめて、

「変な幻覚を見たけれど、大丈夫だ」

 と、言うと大人しくベッドに座った。一人目は無事に成功した。崔とロサは更に五人の利用者を落ち着かせていった。


 ロサは飲料水や食塩水を瞬時に解毒剤に変える能力が有る。薬物や毒で苦しむ人間にそれを飲ませたり注入したりすると一分も経たずに回復させる。ロサ自身も解毒する力が有り、青酸カリを飲んでも全く苦しまずに解毒する。風邪引いて服薬したり手術で麻酔が必要な時はその能力を抑える事も出来る。ちなみにワインを葡萄ジュースに変える事も出来る。


 崔は瞬時に他人の五感に直接はたらきかけて、強力な催眠をかける能力を持っている。既に相手が幻覚で振り回されても、それを凌駕する催眠で上書きする。先程は男に闇を見せて視覚を完全に遮断させ、冷暖房の音すら消して聴覚を遮断し、血や埃の匂いも消して嗅覚も遮断し、怪我している手足の痛覚も消して遮断。それらを同時に行った。男が混乱している間に男を狙う犯罪者達の銃撃戦を再現した。男は岩に隠れて耐えるように仕向けた。崔が肩を掴めば更に強い催眠をかけられる。男の痛覚を遮断してロサに注射させた。ロサと崔が部屋を出たら初めて催眠を解く。


 今回の仕事はむしろ比較的楽である。屋外で一度に複数の人間に催眠をかけた時もあるし、散弾銃を発砲しながら暴れる犯罪者を落ち着かせた時もあるし、演説している政治家を狙うテロリスト達を探しながら妨害した時もあった。ロサは解毒剤の他に鎮静剤も作って打ち込める。毒ガスに襲われてもロサが水を周囲に振りまけば浴びた人達は助かる。


 ロサと崔は仕事を無事に終えると副社長であるプーランに報告した。プーランは二人を素直に評価した。また、プーランは、

「年末までに新しい仲間が二人加わるかもしれない」

 と、報せた。ロサは不安を覚えた。崔は肩を落として不快を感じた。徐と佐藤の話は二人もプーランやナニアから聴かされている。徐には特別問題は無かったが、佐藤の言動は常軌を逸している。

崔は韓国人男性、ロサはメキシコ女性。

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