表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嵐咲く  作者: 加藤無理
11/40

交渉の提案

 十月の終わり。日本の横須賀基地。米軍は動画や画像を見せながら中国の被害状況をナニアと佐藤に淡々と伝えた。二人は顔面蒼白になった。傍らで聴いていたアヌラックは冷えた背中を震わせる。徐学も引きつった顔をしている。


 この百個以上の台風は中国が台湾有事を断念するように仕向けた脅しのつもりだった。佐藤が考案した。作戦名は「百花斉放」。百個の台風が一斉に咲き誇る。徐もアヌラックも悪趣味だと非難したが、佐藤はかたくなだった。ナニアが社長のダンカンに相談するとダンカンは笑い飛ばすどころかアメリカ・日本・台湾政府にその作戦を提案した。この危険で狂った作戦に日本政府は反対したが、アメリカ・台湾政府は賛成した。


 アメリカの国務省の役人がハッキング対策してある電子メールで佐藤に、

「失敗したら死んで責任を取ってもらおう」

 と、揺さぶりをかけたが、佐藤は、

「了解しました」

 と即座に返信した。作戦はナニアとプーランを中心に練られていった。それを佐藤が実行した。アヌラックと徐は気持ちを改めてその作戦を支えた。参加者全員が直接的に集まった会議はなされなかったが、機密性を十分に保持しながらオンラインで連絡を取り合った。対面しているのは佐藤・ナニア・アヌラック・徐の四人。結局、日本の自衛隊と総務省と外務省と警察も参加したが、佐藤とは一切、会わなかった。米軍も台湾軍も無論、参加していた。


 佐藤にとって女性が三百人も死亡した事は想定外であった。一人も死なせるつもりはなかった。一億人も体調不良になるとも思わなかった。


「この作戦は果たして成功した事になりますか?」

 佐藤が尋ねた。状況を伝えた米兵の一人が、

「大成功だよ」


 佐藤は提案した。日本と台湾が中国に対して声明を出す。台湾有事を断念する意思を明確にしなければ同じ凶行を再度起こす。日本の政治に干渉し過ぎたり歴史問題で外交上の脅しを仕掛けたり経済や軍事で日本を抑圧したり日本の文化を侮辱したり日本人を殺傷したりすれば、更なる凶行を繰り返す。


 涼しい顔で語る佐藤にナニアは無表情で、

「徹底しているね」

 アヌラックは血の気の失せた顔で俯いた。徐は溜息を吐いた。米兵達はその事を自国政府や日本政府に伝える。徐は皆に挨拶すると立ち上がり、瞬間移動して帰国した。台湾軍に報告するのだ。


 十一月の始まり。表向きは復興支援をしてきたが、日本政府もアメリカ政府もこの事件について何も反応が無かった。台湾政府は佐藤の提案した声明を修正した上で非公式に伝えた。日本と台湾への抑圧と攻撃を中止すべきだという点は変わらなかったが、佐藤と徐の存在は秘匿した。それでも既に中国側が気付いている事は承知している。


 「倭人の分際が!」

 ドン、と、机を叩きながら上官は怒鳴った。宇文は無表情で、

「佐藤華江よりもダンカンが脅威ですね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ