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嵐咲く  作者: 加藤無理
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百花斉放

 十月中旬のある朝。突如として太平洋上に十個の台風が発生した。それらは全て西に向かって行く。一時間後には日本海にも五個の台風が出現し、それらも西進していく。


 合わせて十五個の台風が中国に向かってくる。途中で日本にもロシアにも北朝鮮にも韓国にも上陸したが、その時は意外と風も雨足も穏やかで被害は少なかった。しかし低気圧の為か、頭痛・吐気・目眩・悪寒を訴える者が続出した。


 昼頃。北は黒竜江省から南は海南省まで台風が南北に並びながら中国本土に上陸した。穏やかだった台風が暴風雨になって牙を剥いた。傘は潰れながら飛ばされ、自動車は揺れ、あらゆる建物が雨粒に撃たれていく。窓ガラスも割れていく。雷鳴が轟く。道路が川になっていく。外にいた人々は転ばないように必死で高台や建物に避難していく。河川の氾濫が始まる。


 十五個の台風が更に西に向かう。夕方には陝西省・武漢市・湖南省を通り過ぎる。物理的な被害の他に、体調不良を起こす者が続出する。土砂崩れが多発する。森林の木々が激しく揺さぶられて根元から倒れていく。


 夜中にはウィグル自治区にもチベット自治区にも台風の勢力は衰えずに蹂躙してきた。


 中国政府は既に戒厳令を出して市民達の外出を控えさせていた。それでも猛威から逃れられない。世界各地でこの奇妙な現象が報じられる。人工衛星や観測所で様子をうかがっていた全世界の研究機関や諜報機関は分析を進めていく。


 西に向かっていた十五個の台風は中国の国境を過ぎると威力が急速に衰えていった。インド北部に到達した時には暴風雨は収まり、小雨になっていた。やがて全ての台風は跡形もなく消えていく。


 中国社会が復旧を開始しようとした翌朝。再び十五個の台風が東の太平洋と日本海から現れては突進してきた。人々は逃げたり隠れたりするので精一杯だった。前回、直線的に動いたのと違って今回の台風はどれも曲線的に動きながら西に向かって行く。これらの台風もインドを過ぎる頃には消えていった。


 宇文秋少将は部下達を叱咤激励しながら民間人の救助や施設の補強をさせる。自身も鎖の能力を使いながら台風から民間人や施設を守る。同僚達も混乱しながら宇文に負けじと指揮を取る。


 三日目も四日目も十五個の台風が出現しては襲う。あまりにも理不尽な事態に屈強な男達も涙を流す。老人達は血の気を無くして絶望し、子ども達は身体全体で叫ぶ。女達は怯えた顔で地獄に耐える。


 宇文は内地で対応に追われつつも日本に在住している中国の諜報員達にも要請していた。佐藤華江という日本人が怪しい。見つけ次第、殺害すべきだ。


 五日目も六日目も台風が襲う。佐藤に近付こうとしていた諜報員達全員が何故か日本から中国本土に来ていた。彼らを尋問した上官達は釈然としなかったが、何らかの能力で強制送還されたようだ。それを知った宇文は台湾人の徐学を怪しんだ。


 七日目。またしても十五個の台風。これまでとは威力が断然に下がったが、低気圧による体調不良が続出した。


 八日目。中国全土がウンザリしたところで久々の太陽が現れた。台風は一個も来なくなった。


 中国政府も地方政府も民間企業も各国の大使館も被害状況を調べていく。同時に復旧作業が本格的に開始される。軍民憔悴しながらも泥を掻き出したり瓦礫を整理したり負傷者を病院に運び死者を弔った。建物を修復したり更地にして建て直したりする。


 被害状況は軍事施設ほど大きかった。商業施設や民間施設や発電所の被害は比較的軽かった。中国全土に散らばる軍事基地に落雷が三十箇所は直撃している。一方で各地のダムの決壊は免れている。


 人的被害も不自然であった。死傷者の九割以上は成人男性である。この一週間で一億人以上が体調不良を訴え、一万人ほど死者が出た。女性の死者数はそのうち三百人以下である。男性老人は沢山亡くなったが、未成年の死者は百人以下。


 それを知った宇文は人為を強く感じた。これは無差別攻撃をする自然災害ではない。宇文は上官達にその考えを素直に伝えた。上官達は嘲笑するどころか青白い顔で黙ってそれを聴いた。


 中国による諜報活動は世界的に脅威である。既に宇文はアメリカの砂漠の山について知っているし、佐藤華江と徐学の経歴も調べている。しかしここまでの凶行を仕掛けてくるとは宇文も政府も想定外であった。

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