表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嵐咲く  作者: 加藤無理
1/40

宇文秋

 三月。中国国内のとある砂漠地帯で奇妙な軍事演習が行われていた。


 砂山や岩山だらけの過酷な場所。寒い夜中でも酷暑の昼間でも時折、砂を撒き散らしながら暴風が吹き荒れる。


 ドローンも無人機も戦闘機も戦車もトラックも何百機ずつ使用されている大規模な演習だ。ミサイルも打たれる。参加している将兵や軍属は総勢で三万人以上である。


 期間は十日ほどだが激しい訓練である。演習なので死者は出なかったが、千人ほどの負傷者が出ている。


 皆、あらゆる兵器を駆使しながら目標に向かって攻撃を仕掛けるが、悉く弾き返されていく。上からも前後左右からも一斉に仕掛けても目標は勢いが衰えない。ドオンドオン。目標から数十キロ離れても、轟音や地響きが鳴る。大地は揺れる。


 目標からの反撃は容赦がない。音速以上で飛ぶ戦闘機も、予測不能な動きをするドローンや無人機も、全て墜落していく。戦車が砲撃しながら近付いても、逆に攻撃を受けて横転してしまう。ミサイルが襲ってきても、着弾する前に粉砕される。


 目標からは絶えず大小様々な鎖が一度に何百本も飛び出して行く。それが的確に全てを弾き返し、叩き落とすのだ。


 七日ほど経つと目標の勢いが弱まっていく。また、兵器も消耗されている。万全装備した歩兵達が砂山や岩山に隠れながら近づいていく。一斉射撃。手榴弾も同時に何百も投げ込まれる。しかし、飛び出す数多の鎖はそれらを弾く。それでも弾丸が何千も目標に着弾していく。目標本体は鎖にしっかりと覆われているので反撃は止まない。


 十日目。歩兵達が明らかに疲労困憊だ。演習が終わる。目標は全ての鎖を消した。


 「お前ら、本気で国を守る気概が有るのか!」

 目標を演じていた宇文秋少将が怒鳴った。宇文は普段の容姿は冴えない四十五歳の男だが、怒ると非常に凄みが有る。負傷したり疲労したりしていた将兵は更に顔色が悪くなった。


 宇文自身も全身、傷とアザだらけである。更に右腕と左脚と肋骨が骨折している。宇文は演習場を見渡しながら座る。医療部隊が駆け寄る。


 辺り一帯の岩山はえぐられ、地面にも大小の穴が沢山も出来ている。演習開始前から足場は悪いが、より悪化している。また、粉々になったドローンや破壊された戦闘機や倒れた戦車が無数に転がっている。


 宇文は単独で部隊に勝ってしまった。


 二ヶ月ほど前に宇文は中国海軍の軍艦に乗り、日本海で米軍や海上自衛隊の潜水艦を一隻ずつ沈没させている。軍艦が潜水艦を発見すると、船尾に待機していた宇文は組んだ両手を振り上げて大きな鎖を出し、それを思い切り海面に叩き下ろした。鎖は勢い良く沈んでいき、千メートル近く潜っていた潜水艦に巻き付いた。手応えを感じた宇文は鎖を掴んだまま舳先へ疾走する。潜水艦が為す術もなく引っ張られる。舳先で立ち止まると鎖を消す。制御が利かなくなった潜水艦は近くの岩礁に衝突。


 この宇文の能力は中国政府も中国軍も広く承知しているが、国内の民間人には秘匿されている。無論、外国に漏れないようにしているが、一部の諜報機関は気付き始めている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ