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特殊能力解放?

学校に着くなり、俺は真っ先に自分の教室へと向かう。

雄也は部活に行くと行って颯爽と駆け出して行ってしまった。……アイツ部活やってたんだっけか?


教室に着き、鞄を机に置いて荷物整理をしながらさっきまでの事を思い返す。

最初はまさかと思い夢なのか現実なのかと疑っていたが、登校してきてわかる。俺の知ってる生徒ばかりなのだ。同級も先輩たちも、全員分かる訳じゃないが見知った人間を幾人も見かけた。

部活動に励む生徒たちからも俺の耳に馴染みのある掛け声が聞こえてくる。例え現実だとして俺1人なんかにこんな壮大なドッキリは仕掛けてこないだろう。


もうほんとに戻ってきてしまったんだと思いながらこの現実をまた歩んでいくしかないか。


それからは周りの動向を伺いつつ当たり障りのない返事をしてとその日を過ごしていった。

授業中が会話もなく一番楽な時間ではあるが、これが中学生じゃなかったら学力的に怪しかったかもしれない。


一日過ごせば、“大人”の余裕もあってかある程度流れが掴めるので日常生活はあまり心配要らないだろう。

しかし、今後の方針としては少し不安が残る。

卒業してから皆が一度はした事があるであろう『この記憶を持ったまま学生時代に戻りたい。』という議題。

社会人として生活してた俺がこうして中学生になってるわけだが、今のところは魅力的に思えない。周りに比べて多少物事の理解はあるかもしれないがその分不安や迷いも強いのだ。

この学校に通う中学生、更には新卒で入ったであろう若手の教員なんかより俺は長く生きている。

その分人生の過ちを知っているが正解を知らないのだ。それ故に、戻ってきたところでどう転ばせようかなかなか判断が難しい。

はぁ。俺にも明確な才能でもあれば違ったんだろうなぁ。

……才能?

そういえば、異世界転生といえば何かしら才能を持って生まれたり、転生特典みたいなものを得られるのが定番だよな。

ここは異世界じゃないから気にしてなかったけど、もしかしてあるのか?転生特典。


気になった俺は、放課後即座に帰宅して色々と試してみることにした。雄也に一人で勝手に帰るなとか言われたが用事があるって適当に断ってきた。

そして帰ってきてから何となくわかったことだが恐らくチート能力だとか魔力だとか所謂転生特典はないし前世に基づいてなんちゃらってのも、転生というよりタイムリープしてる時点で可能性は薄い。となると、これから何を目標に生きていくのかが明確にならないな。

ぶっちゃけ俺は社会人でそこそこやれてれば別によかったし。


そして、幾度となく考えていた『これは転生ではない』説。そう、『転生』とは別の命に生を受けるのであって俺は俺自身に生まれた13年後の姿、まぁ要は転生じゃなくてタイムリープだよねってこと。しかも中学入学からちょこ〜っと時間が経過してるあたりキリも悪い。

今更能力ありましたなんてこの世界の住人からしたらおかしな話だ。


もし、仮にだ。仮説を立てるとして何か意味のあるタイムリープだとしたら?

中学生という時期に戻り何かを成し遂げれば幸せな人生を送れるというヒントがあって……。

いやだから、俺は別にそこまで求めてないんだよな……。

ならば俺ではない誰かが求めているとしたら?

確かに、転生物(てんせいもの)なんかは自分と同じ転生者や召喚者やらが登場する。ここにも同じ境遇の人間がいるのかもしれない。


あくまで可能性の域は出ないがそれでも何もなしに生きていくよりよっぽど退屈しないだろう、雄也を初めとした色んな人間と関わって探してみるのも悪くない。

今の俺なら人の価値観も幅広く見ることも出来るだろうし、タイムリープ者を見つけられなくとも今後の人生にいい影響を与えてくれそうな人を見つけることくらいは出来るかもしれない。考えておいて損はない仮説と言える。

そう思うと、明日からの学校生活がちょっとだけ楽しみに思えてきた。

思わずニヤける。


「なぁにぃなんでそんなニヤニヤしてんのぉ〜?」


うふふうふふと笑いながら母親が話しかけてくる。不意に現れた事に内心驚く。


「いや、ちょっと今日面白いことがあってさ、思い出し笑いしてたんだよ。」


咄嗟に出た嘘。まずい、面白いことの内容を聞かれれば答えられない。


「え〜ほんとに〜?どっちかって言うと遠足前の園児みたいな顔してたけど、もしかして彼女でもできた?いやないか〜はははっ!」


……内容を聞いてこなかったのでセーフだが色々と見抜かれてる点はアウトだよ。


「まぁ明日が楽しみってのは認めるよ。」


「あら?ほんとに良いことあったんだ?お母さん嬉しいよ〜かずきが笑ってると〜。」


この人と会話してるとほんとに調子狂うな〜。


「かずき〜?図星だからって照れないでよ〜可愛くて抱きしめたくなっちゃうじゃない〜!」


うちの母親は読心術でも持っているのか?

まさか母親が能力者とか!?

物語の主人公は俺の母親でした!んなアホな!

てか能力で言うならどこから現れるか分からないその忍者スキルの方だろうな!やっぱり主人公じゃねぇか俺には何の能力も才能もないんだぞ!


「かずきねぇ。あんた昔から周りも自分も興味うすそうだけど、本当は色んなこと考えてるでしょ〜?あんまり思い詰めなくても、意外と何とかなるもんだから。自分には才能がないとか、そんな下らない事は考えないでもっと自由に幸せになっていいのよ〜。」


のほほんとした口調でなんて鋭く優しい言葉を掛けてきやがる。


「善処するよ。ありがとう。」


「あらあら、そんな難しい言葉使っちゃってぇ。遊びも勉強もほどほどに、気ままにいっちゃってね!」


緩いな。

でもまぁ、俺が社会に出るまでは女手一つで育ててくれた母親が大切で、これから先もずっとこの人の為に稼ぐと心の中では思っていた。

喧嘩して家を出ていくまではね。きっかけは些細なことだったな。

だがこうして改めて接してみるとやはり底知れぬ何かを感じはするけど、やっぱり俺は母親が大好きで忘れることは出来ないんだと実感する。なんの比喩でもない、実家のような安心感。いや実際実家なんだけど、俺にとっての実家は母親ありきって事だ。

タイムリープしてるから、喧嘩のことなんて母親は覚えちゃいない……というよりまだ知らない。ならば、そうならないよう、真っ当に生きていくのも一つだ。どうせ一度見た人生。目的の一つや二つ欲張ったところで罰は当たらないだろう。



自室に戻り一息つく。さて、ある程度考えが纏まった所で一服でもするかとタバコを探す……。

いや待て待て、どうして気付かなかった今は未成年だぞ!タバコなんて持ってるわけないしお金だってないんだ。

あ〜そう考えると今まで楽しんできたお金を使ったお遊びは出来ないわけだ。ドライブも行けない、好きなゲームも買えない、お酒も飲めない。マジかよ、なんか萎えるな、これ。

さっきまでのウキウキが嘘のように心が沈んでいく。こういった弊害が出てくることも視野に入れてこれから先やって行くことになる。ちょっとめんどうだな〜。


まだタイムリープ一日目。もしかしたら次に目を覚ますと見知らぬ天井だ、なんてことも考えうる。(つまりは病院で寝てましたパターン)

晩御飯までの間、風呂に入りつつ明日からの行動に具体性を求めていく。


今はこれでいい。結局、どれだけ長考しようと自分に出来る事には限度がある。それなら、身近な幸せを一つ一つ積みなおしていくだけでも、また新しい事を見つけられる。今朝は混乱していたが、冷静になればある程度前向きに受け入れられる、ような気がする。

きっとこの先も俺の環境は変わらない。ならば変わるのは俺だし、変えるのも俺だ。

才能がないのなら努力し直して、これから花を咲かせるのだ。


そう決心して、また気を張り直した。

引き続き楽しんでいただけていたら幸いです。

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