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薫陶

「須藤、あんた何がしたいのよ。」


「悪い、後で話す。少し考える時間をくれ。」



和希を初めて朝練に呼んだ日。

俺と美少女は朝練の後この会話をして別れた。

昼休みになるなり、校庭へと流れていく生徒たちと共に、俺と美少女は自然な動きで校庭へと出る。

そしてその足取りは他の生徒とは逆、つまりは校庭ではなく校舎側にある生垣の方向へと向いている。


「で。朝の事だけど、あんたどういうつもりよ?」


「いやー悪かった悪かった。一言で言うと、和希にはタイムリープの事は言えても特殊能力の事は伏せて起きたかった。」


「……それじゃなんの意味もないわ。あたしたちはタイムリープ者同士で思い出話に花を咲かせたいわけじゃない。それはあんたが一番求めた事じゃないの?」


「お前はさ、その魅了の能力がもし和希の能力だったら、どう思う?」


「どうって……そんなの想像したこともないしわからないわよ。」


「そうかー……俺はさ、それが嫌なんだよね。

まー和希がそんな乱用するような人間には見えないけど、もしもさ……特殊能力があったら……人より優れた能力があった時、それに気付いた時、アイツは変わらずに居てくれんのかな……。」


美少女、清水はそれを聞いてハッとする。

ただでさえタイムリープしている時点で他の一般人より大きくリードしているってのに、能力があるなんて知った日には、人がどうなるかなんて、他人が無責任に決められることではない。ましてや、後悔のある人間だった場合尚更だ。


「……まぁ。あんたの言いたいことはわかるわよ。和希はしないってのもわかるけど、そうとも限らないとも思える。」


「だろー?だから俺は特殊能力の事を和希には……」


「でもそれだけじゃダメって言ってるのよ!

自分たちだけの問題じゃない、あたし達の他に能力を乱用している人間がいるかもしれない以上、ただ身構えてるだけじゃいけない。」


熱くなり、立ち上がる美少女。

やっぱダメかなー。そんな単純じゃないんだよ、この世界はさ。


「あれ、お前ってそんな熱い人間だったっけ?」


「うるさい。あたしが熱い人間かは関係ないわ。あなたも見たでしょ?それとも、自分たちが満足出来ればそれでいいって言うの?」


「どうでもいいとまでは行かないけどさー。やっぱり現実問題、出来ることと出来ない事があると思うんだよなー。」


そう言うと、美少女は呆れた様にため息を吐く。

多分、お互い言いたいことは分かっているのだろうがあと一歩主張が芯まで届いていない。


「まぁいいわ。でもあんた最近変よ?和希を守りたいのはわかるけど、それに固執しすぎてこれからの事をおざなりにしない事ね。」


そう言い残して美少女は立ち去っていく。

今はこんな状態だが、俺としては美少女の存在を失うわけにはいかない。

アイツも俺の大切な情報源であり、和希にとってもかけがえのない存在になるはず。

俺だってそう簡単に譲れるものでもない。


と、思ってたんだが、次の日の朝練。

和希が予想以上に詰めてくるもんで、特殊能力の事が遂に露呈してしまった。俺の計画がぁ……


和希はさほど驚く様子もなく聞き入ってたようだが、正直のところ俺の方は気が気じゃない。


お願いだ和希……お前だけは真実に気付かないでいてくれぇ!

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