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異世界転生?

ジリリリリリリリ!!!!


けたたましく鳴り響く目覚まし時計。薄目を開けて時刻を確認する。午前6時30分。あー、こりゃ遅刻だな。会社に連絡して遅れて出勤する旨伝えて……。

あれ?


違和感。目覚ましで起きたのに遅刻?

辺りを見渡す。うん、間違いなく自分の部屋だ、スマホもないし、ベッドも違うし、間取りも違うけど間違いなく自分の部屋だ。

大学に進学して独り立ちするまで暮らしていた実家の自分の部屋なのだ。俺もう社会人5年目なのに。

ちょちょちょ、ちょっと待った!いくらパワハラと激務のとんでも会社勤めのサラリーマンだからってストレスだかなんだかで無意識に実家のベッドで寝てましたなんてことあるのか!?

落ち着け、冷静になるんだ。何があったか思い出すんだ……

どうやって家に帰った?……だめだ思い出せない。こうなったら思い出せるところから記憶をたどっていくしかない。


昨晩、恒例のノー残業デー(表向き)でなぜか一人残された俺は会社で資料作りをしていたと。

そのあと、確か喉が渇いたなーって思って、ロビーの自販機に飲み物を買いに行って、ついでに小休憩ってことでタバコでも吸おうかと屋上の喫煙所に行って……

あ~、確かそこで中途採用で入った井上君……だっけ?うちらの上司にめちゃくちゃしごかれてて……ていうか胸ぐら掴まれてて……。

経年劣化でフェンスも外れかけてるから危ないですよ~って止めに入ったらなぜか標的が俺に代わり突き飛ばされて……

あれ?俺その衝撃で屋上から落ちてね?俺の会社のオフィスって何回建てのビルだっけ?7?8?どっちにしろ死んでね?

昨日までの出来事は夢だったのか?それとも今が夢なのか?それともそれともここは死後の世界ですか?思いっきり実家なんですけどー!!まさか昨今巷で話題の異世界転生ですか?実家ですけど。

まさかそんな……違うよね?


何かの奇跡で助かって、ことを荒立てたくないと思った会社がとりあえず実家に運んだとかそんな程度だよね???いや実家に運んだらそれはそれで問題になりそうなんだけど。

とりあえず今の状況を確認しなくてはな。


ベッドから起き上がり部屋を出ようとして、違和感。身体の感覚がどことなくおかしい。

確認すべく急いで部屋から飛び出して母親とばったり。


「あら、目覚まし通り起きるなんて珍しいわね」


少しバカにしたような表情で母親が言う。雰囲気は印象と変わりないが、俺の母親こんなに若かったっけ?


「お、おはよう……お母さん。」


正直まだ状況が呑み込めていないがとりあえずここは当たり障りなくやり過ごして状況を整理するか。


「え~何よいきなり、昨日までママだったのにいきなりお母さん呼び~?」


またまたバカにしたような表情でおちょくってくる。もう何年も会ってないのにこの対応かよ。この人は昔からこうなのだ。人をおちょくって楽しむが実際は本心を見抜いていたりと侮れない。まぁそれに嫌気が差して実家を出たんだけどそれは置いておいて。

昨日までママ呼びってのは理解できないがまた俺をおちょくってるのだろう。


「ふん」


軽く鼻息を鳴らしてあしらっておく。

とりあえずはいつもの母親だってことで安心しておくことにして、洗面台へと向かい、鏡を見る。

…おお、お兄さん若いねぇ!いや若いってか幼ぇ!!昨日までママ呼びってそういうことかよ!


鏡に映った俺の姿は社会人とは程遠い、というより社会人“には”程遠い幼い姿になっていた。

ストレスとお酒のせいかぽっこりと出っ張った腹はそこにはなく、スラッとした好青年もとい少年が唖然として立っているのが映っている。

小学生?中学生?昨日までママ呼びだったってことは中学一年生くらいか?中学一年生。

……ああそうだよ!俺は中学一年生までお母さんのことママって呼んでたの!お母さんって呼びだすタイミングって難しいんだよ!!思春期だと恥ずかしさもあんの!

いやいやツッコミ入れてる場合か!

何がなにやら、転生でもなく夢オチでもなくタイムリープ?死に戻り?いやそれ異世界転生だろ!!ってな!

いや待て。落ち着いて状況を整理するんだ。


まず夢にしてはあまりに意識が鮮明すぎる。

そもそも夢の中だとしてこれは夢なのかと疑問を持つ事がおかしいとも思える。つまり夢オチはない。とりあえずはそうしておく。


次に転生パターン。

これに関してはあまりにも情報がなさすぎる。

なんせ未だに母親としか出会っていないし、だがしかし実の母親と出会ってることから所謂“異世界転生”ではないとも言える。


では死に戻りか?タイムリープか?

とにかく意識がある今、転生あるいは死に戻りの線で情報を集めていくのが良いだろう。


と、言う事で二階の自室から降りてきました一階のリビングでございます。

居間にテーブルを挟んで二つの椅子が向かい合わせに置いてある。

横繋がりになった部屋にはソファが置いてあるだけの質素な空間だ。

うちのリビングには、母親が食事中はやめてくれって事でテレビが置いてない。

家族団欒を大切にしたいんだと。まぁうちは母親と俺の二人家族なんだけどな。

そしてソファには乱雑に放り投げられた中学校の通学鞄。

懐かしいな〜。よく体操着も出さないまま放置して母親に怒られたっけ。

さてさて、今はこの鞄も情報源になりうる。

鞄を開け、中身を見る。お世辞にも綺麗とは言えない鞄の中は、教科書やら筆記用具やらが入っているが、掘り起こしていくと、それはあった。名札だ。

当時は中学生にもなって名札なんて要らないだろうと思ってたけど、なるほど死に戻りした時には貴重な情報源になりうる訳だなー(白目)

名札を見るとそこには『一年四組 杉山和希』の文字。紛れもない俺の名前だ。

念の為、鞄をひっくり返して中身を全て確認するが名札はこれしか出てこなかった。つまり俺は今中学一年生である線が一番濃厚という訳だ。


次に日付を確認する。これは簡単だ。

玄関に置いてある電波時計を確認する。そして、“今現在”まだスマホは普及していないがガラケーならば中学入学と同時に母親から貰っていたと記憶している。

自室に戻り、勉強机の上に置かれたケータイを手に取り玄関へと戻る。

ケータイを開いて日付を確認する。

『2010年4月27日 午前6時38分』

ガラケー、電波時計ともに同じ時間を示している。およそ十五年前に戻ったって事か。

いやてか最初から日付確認してたら良かったやん。アホやな〜。


しかし、腑に落ちないな。

例えばここが死後の世界、何かしら未練のある時代への死に戻りだとしたら、中学生なんて半端な時期じゃなくて小学生からやり直したいし、楽しかった時期も間違いなく小学生だから、どうせならそっちに戻りたい。

因みに高校時代なら、俺はクラスの一部ヤンキーたちからのいじめを受けていたので絶対に戻りたくはない。

なら中学ではどうだ?中学生に戻るメリット……。うーんわからん!


「あんた何やってるの?学校遅刻するわよ〜」


突然真後ろに現れた母親に言われる。

驚いた。いつの間に居たんだ?


「あ〜、そうだね、もうこんな時間か。」


「あら?もしかして学校行きたくない?

色々あるわよね〜学校だもの〜。」


「いや、ちょっと考え事してただけだから。

今から支度するよ。」


「あらそう?」


母親が拍子抜けしたような感じで返事をしてるが放っておく。

とりあえず今は、外の状況も確認しておきたい。


俺は一般的な通常ルートとは違い高校でいじめを受けたから大学でも社会人生活でも薄っぺらい人生を歩んでいた。お陰様で過去の思い出の方が強く、今でも中学時代の生活はある程度思い出せる。

しかーし!もう十五年も前の話!多少思い出せたところでメンタルの方がついて行かない。

考えても見てほしい。目が覚めるまで俺は社会人だったんだ。それが今から中学校に通えって、どう考えても不安しかない。

昨日誰と話したかもわからない状況で、いきなりいつも通りを演じろってのは結構無茶な話なんだよなほんと。


『ピンポーン』


そんな事を考えていると家のチャイムが鳴る。

決して非常識な時間ではないが客人にしては早い時間だ。


「は〜い、今出ます〜。」


母親が間延びしたような具合に返事をしながら玄関へと小走りで向かう。

それを横目に俺は制服へと着替えて、これくらい持って行けば無難であろう教科書やらノートやらを鞄に入れたのを確認していると玄関から母親の呼び声が聞こえてきた。


「かぁずき〜ゆうやくん迎えに来たわよ〜!」


ゆうやくん?それってもしかして俺の中学校生活を支えてくれた須藤雄也くんではないか?

中学を卒業して疎遠になったから思い返しもしなかったけど、当時同じクラスで席順が前後だった為に話したのが出会いのきっかけでそこから意気投合してよく一緒に登校してたんだっけ。これは何気ない日常会話から情報を得るチャンスかも?


「ちょっと待ってて!すぐ行く!」


手短に身支度を済ませて玄関へと向かう。

そこには懐かしき友である須藤雄也の姿があった。

短髪と整った顔立ちで一見ヤンキーにも思えそうな風貌だが実際は温和な性格で物腰も柔らかいので信頼と安心の友達だ。信頼と安心は皮肉ではないぞ!


「おはよ〜和希。この時間に起きてんだ。」


うん、確かに中坊の頃の俺は時間管理が杜撰だったみたいだ。


「まぁこういう日もあるんだよ。いいから学校行くぞ。」


「お?妙に張り切ってんなー。お母さんまたご褒美で釣ったんすかー?」


「うるせぇ構うなほら行くぞ!」


半ば強引に雄也の腕を引き家を出る。


「気をつけてね〜」


と後ろから母親の見送る声が聞こえてくる。


「なんだよ〜お前お母さん雑に扱いすぎだろー!」


雄也は死ぬほどお人好しだからな。俺の母親だろうと悲しむ顔は見たくないんだろう。


「まぁまぁ。帰ってくればまた会えるからいいじゃんか。それよりさ…」


「お前家帰ったら家族がいるのが当たり前とか思ってんの?」


「いやまぁ、悪かったよ、今度から気をつけるから。」


うん?確かにお人好しだがここまで綺麗事に似た事まで言う奴だったか?

まぁいい。今はそれより今の状況確認が優先だ。

そこから昨日のテレビ何見たとか、最近誰と誰が仲良くなったとか、そんな何気ない会話をしながら学校へと向かった。



初投稿になります。拙い文章、ご容赦ください。

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