余談33 社会福祉士制度構築の大失敗による福祉崩壊
「でもしか職」に実は「福祉専門職」が昭和末期まで含まれていました。1987年(昭和62年)に社会福祉士国家資格が誕生する前までは。それまでは「社会福祉主事資格」と言って別名「3科目主事」とも言ってほぼどんな文系大学を卒業すると誰もがなれる専門職資格だったのです(教員免許を持っていれば確実に社会福祉主事資格もついでに持っていた)。それじゃ能力の担保になってないということで社会福祉士国家資格が誕生したのですが……。
――この資格、免許じゃないのです
ええ!? 嘘? 本当?
本当です。いわゆる名称独占資格です。業務免許じゃないんですよ。これを「生活相談職の免許」とすれば今頃福祉専門職制度の崩壊につながらなかったのでしょうね。ちなみに介護福祉士国家資格も1987年誕生です。それまでは無資格だったり看護師に全部お任せというのだから恐ろしい時代ですよね。介護福祉士もヘルパー検定さえとれば別に国家資格がなくとも働けるというのだからこちらも欠陥資格ですよね。なんで准看護士に組み込まなかったのでしょうね。
でもこんなのまだまだ序の口です。1999年に精神保健福祉士資格が誕生しました。これにより社会福祉士という資格では精神保健に関する生活相談が禁止になりました。建前上名称独占資格ですが必置資格なので事実上の独占資格つまり免許となりました。これにより社会福祉士資格を持っていても短期養成施設で6か月を経てからでないと精神保健福祉士国家資格を受験できないようになってしまいました。もちろん大学に精神保健福祉学科という学科を作る羽目になりました。つまり高校3年時点で「一般社会福祉」の分野に行くか「精神保健福祉」の分野に行くか選べという悲惨な状況になり1998年頃の当時の現職PSWは短期養成所に通ってWライセンサーになる羽目になりました。
どう見ても資格商法です。本当にありがとうございました。こんなのはそれこそ4大社会福祉学科の上に1年の専攻科を設ければ自動で無試験で精神保健福祉士を自動で取得できるようにすればいいではないか。しかしそうはならなかったんですね。で、精神病院及び精神科デイケアでは社会福祉士資格が無事無効になりさらに社会福祉士の業務範囲が狭くなりました。あろうことかベテラン相談員が精神病院から去って行ったのです。じゃあ精神病患者の社会復帰が進んだかって? そんなわけないじゃん。相変わらずB型作業所という別の隔離施設に身を置いたり精神病院内の虐待は続いている。2022年には滝川病院事件が発生しました。一体この世界は宇都宮病院事件から何を学んだのでしょうね。
さらに介護保険導入にともない精神保健福祉士制度誕生の前年となる1998年には介護支援専門員いわゆるケアマネージャーが誕生しました。こうして「ケアプラン作成」という業務が社会福祉士から外されたのです。もっとも救済措置として5年以上んの実務経験で介護支援専門員国家試験に臨みますがこんなのは介護福祉士や看護師からでも果ては理学療法士や作業療法士からでもケアマネが取れるのでいよいよ4大社会福祉学科を出る意味が消失しました。そう、ケアプラン作成業務すらも社会福祉士の業務範囲から消えてしまったのです。社会福祉士業務に残されたのは高齢者生活相談と障碍者福祉と児童福祉と公務員職限定の生活保護業務分野だけです。
そして2027年に「こどもソーシャルワーカー」という資格が誕生し社会福祉士、精神保健福祉士から「児童福祉」の業務が外されます(ただし対象が児童でも精神病院内やデイケア内であれば精神保健福祉士資格が有効)。もう社会福祉士に残された業務は老人福祉の生活相談と知的障碍者施設の専門職としてだけです。しかも社会福祉士、精神保健福祉士から「こどもソーシャルワーカー」を取るには約1年間の受講を経てさらに国家資格試験に合格する必要があるのです。ただし主任保育士からでも約1年間の受講を経てさらに国家資格試験に合格すればなれるのでそこは保育士にとってプラスで保育士経由こどもソーシャルワーカー職の人は逆に一生涯の仕事が誕生となります。これに伴い教員免許or保育士or社会福祉士のついでに自動で取れた「児童福祉司」という資格は消滅予定です。
2027年以降の社会福祉士業務に残されたのは高齢者生活相談と障碍者福祉と公務員職限定の生活保護分野だけ。
この国は馬鹿ですか? 介護福祉士職は低賃金、激務で次々人は辞め、介護専門学校は倒産のラッシュです。なのにこうやって次々と資格だけ作って天下り先を確保する。こんだけ自称先生だらけになったのだからさぞ世の中が良くなったのかと言ったらもちろんノーです。これだったら申し訳ないけど「社会福祉士」に一本化すればいいじゃないですか。本当に馬鹿じゃないのかと。百歩譲って精神保健分野は専門スキルが必要なんだというのであれば4大卒+1年専攻科卒で無試験で精神保健福祉士を取得出来ればいいようにする。それで何の問題がある? ケアマネージャー資格なんか廃止にするべきだ。
なお医療行為が出来ない介護福祉士も資格制度として失敗で本当は2級看護師にするだけでよかったんですよ。2級看護師なら医療行為出来るのだしね。おかげで老人福祉施設には介護士と看護師が混在するという意味不明な状況になりました。そうじゃなくて病院・老人福祉施設に看護師を1.5倍の数にする。つまり短大・専門卒以下で取れる2級看護師(准看護士をそのままスライドさせる)と大卒以上が取れる1級看護師の2分割でよかったのです。
ちなみに社会福祉士資格を取っても最初は介護業務からという現場主義のおかげでどんどん福祉系4大の不人気が爆発しかつて福祉の東大とも言われた日本社会事業大は偏差値35と付いてます。時期にBFになる見込みです。これは他の福祉系名門大学でも同じで淑徳、立正、日本福祉、東北福祉は偏差値BFにまっしぐらです。介護職なんて大半が1年とて持たないからです。なので福祉の現場では介護福祉士の試用期間が1年で1年間はまるまるアルバイト身分なんて言うふざけた求人がまかり通っています。とうとう日本人が介護職に寄り付かず外国人技能実習生の巣に落ちました。
――どこまで日本国政府は人間を馬鹿にすれば気が済むのですか?
じゃあケアマネでいいじゃないかって? 保険点数ビジネスに落ちたせいでこちらも精神を病む書類の山となりました。そしてカスハラの巣です。そもそも「DX」と言いながら書類の山という昭和の光景はいい加減に止めませんかね。ということで福祉という世界は資格商法でボロボロになりみんな低賃金労働者に落ちたのでした。めでたし、めでたし。
答え:福祉の世界には行くな(※最初はピュアな使命感を持って福祉の世界に入っても君は福祉のドス黒い現実を見てほぼ90%以上の確率で絶望する。なんで理事長だけ高級車に乗り邸宅住まいなのか。ちょっとは考えようね)
余談:1987年以前は本当に奉仕の精神、もっと言うとキリスト教の精神や仏教の精神で老人福祉を行っていました。ガチのクリスチャンも普通に居る世界でした。そうした社会事業、もっと言うと慈善事業を「介護保険点数」で壊し社会福祉の世界に民間が参入したことでいわゆる老人虐待が日常茶飯になりました。この世界で大事なのは学力ではありません。冗談抜きでハート、もっと言うと慈善事業の精神、さらにもっと言うと信仰心が無いととてもじゃないがやっていけない仕事なんです。だから宗教立の社会福祉法人がこれらの仕事を担っていたし同時に社会に居場所がない人の職の受け皿でもあったのです。そういうピュアな世界を壊した昭和後期の政治家は万死に値します。アメリカ型社会は人を不幸にする。いい加減に学んでほしい。アメリカ人男子の平均寿命は2025年現在でたったの73歳です。そんな国がまともに「福祉事業」なんてやってるか? でも残念ながら我が国のお偉いさんはそんなことすらも分からなかったんだな。
――福祉事業で大事なのはお金でも学力でも資格でもなく「心」だということに。
え? 臨床心理士職を目指す? 修士まで行って? じゃあ現実を見せてやろうか。