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久々の外出でモテまくる!

 なずなの起床はまるで寺の修行かってくらい早いらしく、午前5時に起きているようだ。


 下宿だから部屋は一つしかないのでなずなはベッド、俺はベッド横の床に布団をしいて寝ている。


 シャンプーの香りで目覚めて最初に見たのは、俺をまたぐパジャマ姿のなずなだ。


 なずなと目が合ったので、とりあえずあいさつをする。


 「ふあ、おはよう」


 「恭介くんおはよう、朝は五目ご飯とみそ汁でいい?」


 「いいよ。じゃあ、俺はトイレ掃除でもしてくる」


 パジャマのまま、俺はトイレへ向かった。


 ピカピカになったトイレの水面に、のっぺらぼうが映っている。


 今日から学校だな。顔はなずながペイントしてくれるが、水とか浴びて落ちたらまずいな。確かに、彼女と離れたらいけない。


 1ヶ月ぶりの学校。時刻は8時20分。俺となずなは校門前から生徒たちを見ていた。


 右を見ても、左を見ても人でめまいがするほどだ。


 「さあいくわよ、イケメンと化した恭介くん! 私から離れないでね!」


 なずなのペイントは芸術の域だからのっぺらぼうを超絶イケメンにペイントしていたんだった!


 なんか男子からのあこがれの目と、女子からの熱い視線を浴びてる。


 まるで、芸能人にでもなったかのように注目の的だ。


 中学の頃なんて非モテだったから、一人で登校していたのに……。


 これが、いわゆる高校デビューというやつか?


 「恭介くん、ボーッと立っていないで! 始業は8時30分、急がなきゃ遅刻よ!」


 突然走り出したなずなの背を、まるで磁石に吸い寄せられるかのように追う。


 豆腐っぽい校舎へ続くアスファルト道を走って、校内へなだれ込んだ。


 教室前で、立ち止まっている俺となずな。


一年F組、そういえばここが俺の教室だった。なずなが、ゆっくりと教室へ続く引き戸を開ける。


 「8時27分、なんとか間に合ったね。さあここが私たちの教室、入りましょう」


 うんと言いたいが、一緒に住んでいることがバレたら冷やかされる。


 オドオドしながら入室すれば、待っていたのは歓迎(かんげい)の嵐。女子たちの黄色い声がこだましている。


 「あの人すてき!」


「超絶イケメンじゃない!」


 「彼女いるのかな?」


 のっぺらぼうになって、感動している。こんな気持ちは生まれて初めてだ!


 うれし涙がこぼれかけたが、顔が消えるので慌ててこらえる。


 するとーー。


 「恭介くん、あなたの席は右端の最後尾よ!」


 なずなが思いっきり名指し、さも親しげに満面の笑みを浮かべて!


 「ふふっ、私と隣だね!」


 下宿だけじゃなくて、席まで隣かよ! もはや、神様のイタズラだ。


 俺が席に着いた頃合いを見計らうかのように、なずなも着席する。


 そうしたら、彼女の前へオレンジのセミロング女子が立ちはだかった。


 「あら、変な紫ヘアのなずなさん。隣の彼と知り合いなの?」


 「ええ。知り合いも何も彼とはどう……」


 やめろっ! 国家機密レベルのトップシークレットだぞ!


 「どう? 彼がどうしたのよ?」


 「ああ、彼はどう……。いや、彼は童貞なの」


 早々ときわどい情報を流す恐ろしい女、それが純粋ななずなだ!


 いつか、同居のことをバラしそうで怖い!


 オレンジセミロングの女子は喜び勇んで俺の前に躍り出て、


 「あたしの名前は黒薔薇(くろばら)かれん。よろしく!」


 「あ、ああ。俺は蓬田恭介、よろしく」


 「へー、かっこいい名前だね。それよりキモい鈴代がどう~とか言うから、あたしてっきり2人が同棲(どうせい)してるのかと思ってたー。よかったー」


 鋭いぞこの女。いやまて同棲? あくまで同居だ!


 「ところで恭介くん。初日にみんなの前であいさつした時と、なんか雰囲気が変わったよね? もしかして、イメチェンしたの?」


 何その名探偵なみの鋭さ!


 「そ、そうなんだよ……ははは」


 まじまじとかれんに見つめられている。


 ど、どうやって切り抜けよう?


 しかし、神様は俺を見捨ててはいなかった。


 「はい、みなさん。席に着いて下さい!」


 今日ほど先生の存在が尊いと思った日はない!


 茶色のボブカットにピンクの

ワンピースを着た女教師! あなたは最高の恩師として、我が心にその名が刻まれるだろう。


 ……名前忘れたけど。


 ともかく、俺はかれんの魔手から逃れることができた!

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