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守ることか、ランクか

「どうなってんだよ……ブリザード・ドラゴンが雪山以外に出現するなんて……」


 俺は目の前の状況を言葉に紡ぎながらも、その状況が夢か何かではないかと常に疑念を抱き続けていた。


 まるで高熱を帯びた鉄板の上で、水が凍り始めるような……それぐらい、有り得ない光景である。


「と、とにかく助けに行かねぇと! あそこには村があるんだ、早くしないとあのドラゴンは――」


 村を破壊し尽くし、人々を蹂躙するだろう。


 モンスターは基本的に人間に対して敵対行動をしてくる。


 人間の所有する物を破壊し、人間そのものも“破壊”しなければ気が済まない……そういう邪悪な生き物なのだ。


 俺はエリオットのほうを見て言った。


「お前と組むのは嫌だが、非常事態だ! いくぞ!」


「いや」


 対するエリオットは、目の前の異様な光景に驚愕はしつつも、既に行動の指針は決まっていたようで、


「ここでブリザード・ドラゴンを倒しても、今月のランク査定には影響しないだろうな」


「は!? なに言ってんだよ、今は――」


「森にブリザード・ドラゴンが現れたと言って、そう易々と信じる奴がいるか? 必ずギルド側の調査が入る。討伐が証明されたとしても、来月になってからの可能性が高い。ともなれば、今月のポイントにはならない」


 こいつ、こんな状況でランクにこだわってんのか!?


「ダンジョンに入る前にリソースを失うのも避け――」


 俺は感情に任せているのを自覚しながらも、突き動かされる衝動に抗うことなく、エリオットの胸ぐらを掴んだ。


「エリオット!!! てめぇ、いい加減にしろよ!」


「離せ」


「ダンジョンなんていつでも入れるだろうが! それより目の前の脅威に対処するのが冒険者ってもんだろうが!」


「離せと言っている」


 エリオットは冷たく突き放つように言葉を吐くと、俺の体を引き剝がして地面に叩きつけた。


「がぁっ!」


「ランクが全てなんだよ、冒険者というのは。人々から称賛されるのは、ヒーローじゃない。S級冒険者パーティーなんだ。それにお前も知っているだろ。ランクを捨てた冒険者の末路を」


 冒険者は自身のランクと、所属するパーティーのランクに応じて、ギルドから報酬を受け取る。


 それだけではない。


 ランクによって武具・防具屋の優待を受けたり、冒険者の店の設備の使用権が手に入る。


 果てには爵位の購入も行えると聞く。


 最高のSランクと最低のFランクでは、生活の質がまるで違うのだ。


「お前は俺に、自分の生活を捨ててまで人を救えと言うのか? あんな小さな村よりも、よっぽど価値のあるものを俺たちは手にしているんだ」


「クソが……ッ!」


 俺は立ち上がりながらも、エリオットを睨みつける。


「幸い、あのドラゴンは手負いなのか進行速度が極端に遅い。あれなら村人が逃げ出す時間ぐらいはあるだろう。村が壊滅しても、命があれば問題ない。またやり直せる」


「あなたは最低ですッ!」


 フェリカはエリオットの前に立ち、震える手を押さえながら、強く叫んだ。


「家を建てるのも、畑で小麦を育てるのも、今日の晩御飯を作るのだって、とっても大変なんです! それがある日突然壊されても、命が助かったからよかったなんて……思えるわけないでしょう!」


「気が済んだか?」


 しかしフェリカの言葉も、エリオットの凍てついた心には一切響くことは無く、彼は俺たちに背を向けた。


「アキト、現実を見ろ。お前一人じゃなにもできない」


「ッ……!」


 ああ、俺は回復役だ。


 いくら回復量が多いからって、対象に触れなければ回復できない。


 惨めだ。


 クソがつくほど惨めな存在だ。


 だけど。


「お前のような腐り切った冒険者にはなるものかよ!」


 俺は駆け出した。


 森の湿った土を蹴りあげて、全力で村へと向かった。


 見捨てることなんかできるか。


 だって俺は、人を助けるために冒険者になったのだから……!

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