ステータスを他人に見せるのって恥ずかしい気がするんだ
結論から言うと、俺はフェリカの提案に乗った。
飛び乗った。
ランクなんてこの際どうでもいい。冒険者を続けられる。たったそれだけの事実が俺の背中を押してくれた。
お手軽な討伐依頼をギルドの紹介で受け、現在に至る。
が、一つだけ懸念するべき事柄があった。
「どうして、ステータス見せてくれないんですか?」
森へ向かう街道を歩くフェリカは、一歩先を歩いている俺の背中にそう問いかけた。
「……無理だ」
「うぅ! 冒険者パーティーを組むうえで、ステータスの相互確認は常識じゃないんですか!?」
ごもっともだ。
こいつは回復ができる、前衛は任せられない、補助魔法にこんなのがある……そう言った情報は共有されて然るべきだし、共有するのがマナーというものだ。
しかし俺は見せなかった。
「私のステータスも見せますから。はい、ステータスオープン」
ーEXH-39-19385213ー
【名前】フェリカ・イサク
【職業】冒険者(ランクD)
【HP】90/90
【MP】1000/1000
【筋力】10
【技量】5
【知力】1
【敏捷】22
【耐久】13
【幸運】3
・スキル
《聖女体質》
破格の魔力を保有する。身体から排出される物質は全て魔力液に変化する。
体内に流れる魔力の影響で《聖女魔法》しか習得できなくなる。
《聖女魔法:レアドロップ》
レアアイテムがドロップする確率が上がる、常時発動スキル。
《聖女魔法:マインドハピネス》
周囲の人々の気持ちが穏やかになる。複数回同じ対象に使用すると効果が薄れていく。
《聖女魔法:概念反転》
一定時間、触れた相手が与えるダメージを回復に。回復をダメージに入れ替える。
聖女らしく、フェリカのスキル欄には見慣れない名前のスキルや魔法が並んでいた。
ちなみにステータスの数値の平均は「10(HPとMPは100)」だ。それを基準に人並み以上か以下かを決めるのが、一般的な冒険者の考え方である。
「悪いが、お前のステータスを見るのは五回目だ」
「えっ!?」
「ついでに言えば、このやり取りも五回目だ」
「えぇえぇぇぇぇっ!?」
この《【知力】1》のバカ聖女め。
「何回やっても無駄だ。俺は見せない。至近距離で触れた相手を回復できる。回復量には自信がある。以上」
「《聖女魔法:マインドハピネス》!」
突然、街道に吹く風の匂いが変わった。
草木が風に揺れ、白昼の光が二人の向かうべき道を優しく照らす。
小鳥たちのさえずりが花々の中で踊り響いている。生命の素晴らしさと、大地の力強さを感じた。
視界の先に広がる森、その近くにある村の民家の窓から、スパイスの香りが立ち昇っている気がした。
今日の晩御飯はサツマイモカレーかな?
村の前に広がる麦畑が黄金に輝いている。
ああ、心がどんどん穏やかになっていく。
今ならエリオットのことも許せそうだな~。
俺たち仲直りしようぜ~。
「アキトさん!」
「なぁにぃ?」
ああ、今ならなんでも許しちゃうなぁ~。
「ステータス見せてください~」
「いいよぉ。ステータスオープン~……はッ、しまった!」
どうやら【知力】のステータスに悪知恵は含まれないらしい。
俺はフェリカの魔法にまんまとかかってしまったわけだ。
ーH-15-213520ー
【名前】アキト・ルーベル
【職業】冒険者(ランクC)
【HP】120/120
【MP】110/110
【筋力】15
【技術】11
【知力】17
【敏捷】8
【耐久】7
【幸運】3
【称号】追放者
・スキル
《近接回復》
対象に触れることで回復魔法を使える。
《回復適正SSS》
回復魔法に対する適性が非常に高い。
《魔法距離F》
魔法の射程距離が至近に限定される。
《童貞適正S》
純潔の守護者たる証。童貞を失いにくくなる。
「ど、どう、てい……」
見てしまったか、フェリカよ。
そうだ、俺は童貞なのだ。童貞の才能を持って生まれた男なのだ。
なんであるんだろうな、こんなクソスキル。
「……満足か?」
「はぅっ……え、っ、っと、その……」
ほれ見ろ、顔が真っ赤じゃないか。初々しいな、こんちくしょう。
「す、素敵だと思いますよ!」
「ありがとう!!!」
フェリカは精一杯のフォローをしてくれたので、魔法を使ったことは不問にしてやろう。
「ちなみに回復量はこんな感じ」
俺はステータスを使用可能魔法一覧に切り替え、その中でも一般的な回復魔法を一つ選択して見せた。
《回復魔法:ヒール》 消費MP10
対象のHPを回復させる。
回復量:500
「ご、ごひゃく!?」
「触れることでしか回復打てないからな。一度の回復量を極めることにしたんだ。まぁ、やりすぎってよく言われるけど……」
どれだけHPが高い相手でも、これなら一回で全回復できる。
まぁ触れられなきゃ回復できないんだが……。
そんなこんなで、お互いにステータスの恥部を晒し合ったところ(そう書くとエロい)で、俺たちは目的の場所へと到着した。
背の高い木々が立ち並び、その足元には薄霧に覆われた新緑が広がっているここは、〈シイの森〉と呼ばれる場所だ。
俺とフェリカの初依頼。それはシイの森に定期的に出現する凶悪モンスター、ゴブリンの討伐だった。
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