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glow heart -九月の向日葵-   作者: haruki
第一章 九月の向日葵 - 明日は夏を追い越して -
7/14

#06 日差しは眩しいのに向かってしまう

涼一≫部室前≫放課後≫


第二校舎三階の一番西側の奥。屋上へと続く階段のすぐ近くに僕ら天文学部の部室はある。

なんというか、今日一日寝て過ごしてしまったというのもあって、「申し訳ないなぁ」と思う反面、「過ぎたことだ。もう明日に生きよう。」と思う僕がいる。結局のところ後者が僕の意思を乗っ取ってくれたお陰で、いつも通りに部室のドアを開けることが出来そうだ。


よし。


部室のドアに手を掛け、いつも通りの僕をしよう。

ガーっ。(ドアの音)


涼一、龍一、桜井、柊≫部室≫放課後≫


龍一「おぉ!涼一!復活したか。」

涼一「悪いな、龍一。やっぱりちょっと疲れてるみたいで。寝たら復活できたよ。」

龍一「そりゃ、一限前からずっと寝てりゃそうなるよな」


笑いながら言ってくれるこいつの言葉にはたまに精神的に助けられるなぁ。


桜井「日向君、大丈夫?無理してない?」

涼一「大丈夫、ありがとう。朝は迷惑かけてほんと、ごめんね。」

桜井「いいんだよ。こういうときはお互い様だよ!」

涼一「桜井さん・・・」


・・・と桜井さんの優しさに浸っていると。


和沙「おかえりなさい。」

涼一「さっきはありがとうございました。」

和沙「いえ、さっきは寝坊しそうな後輩をいじめてみたくなったから保健室に寄っただけよ。」

涼一「それは・・・どうも・・・。」


苦笑いしか出ない言葉を平気で出す先輩。もう二年近くもこのノリなのだからそろそろ慣れてくる。


和沙「さて。早速だけれど、今度の観測についてね。はい、日向君。」


先輩はいつもこうやって資料や、観測内容、スケジュール等を事細かに記載して、僕らに手渡してくれる。


「僕ら」と言っても、僕、龍一、桜井さん、柊先輩の四人でこの部の実質全ての人間になる。先輩が部を設立する為に名前だけ借りた幽霊部員が数人いるらしく、学校の規定であるところの


『5 人以上部員がいない場合、部活とは認定されず同好会扱いとなり、一切の部費、その他経費は学校側は負担しない。』


という条件を達成出来ている。そのお陰で部費を頂けているのだから、幽霊部員にも感謝せねばと観測の度に思うのだった。


和沙「じゃあ、軽く目を通してくれたと思うけれど今回は 5/6 の、水瓶座η(エータ)流星群がメイン。あとは、6/27の、うしかい流星群を観測予定よ。」

龍一「なんで、水瓶座なんですか?」


確かに以前から疑問だった。

僕ら天文学部は何故か水瓶座を観測することが多い。


和沙「私の誕生日が 2/2 で水瓶座だからだけれど、何か?」

龍一「・・・すいませんでした。」

桜井「(今まであえて聞かなかったのに何かしなきゃいけないオーラ出ちゃったじゃんかー!このバカ!)」

龍一「うっ!(わるいって!!)」


僕の位置からは龍一の足を何の躊躇いもなく踏む桜井さんが見えた。まさか、このタイミングで龍一が地雷を踏むとは思わなかった。

しかも、先輩卒業間近のタイミングで誕生日とか。


和沙「まぁ、私の誕生日はあと 10 カ月もあるのだから頭の中心に置いておくとして。」


中心なのか!?まぁ、それはいいとして


涼一「あの、先輩。」

和沙「どうしたの?」

涼一「うしかい流星群って、」

和沙「あぁ、それね。」

桜井「どうかしたんですか?その・・・うしかい流星群が。」

涼一「えっと、この流星群はとっても気まぐれなんだ。見えない年は全く見えない。見える年は3分に 1 度くらいのペースで見える。だから、正直に言うと観測にあんまり適してないのかもと思ってね。」

和沙「大丈夫、もし見えなかったら皆で新星でも探しましょ。」


先輩はあたかも日常の1ページみたいなそんな言い方をするもんだから、本当に新星が見つかりそうな気がして怖い。


和沙「じゃあ、私から話すことは今日はおしまい。長々と喋っても皆の時間を割くだけだもの。質問がなければ、今日は解散。日向君の具合もあるしね。」

涼一「・・・すみません、」

龍一「一応、心配だし送ってくわ。行くぞ、涼一。」


こいつはホント、頼りになるんだかならないんだか。



涼一≫自宅≫リビング≫



いつも通りの帰り道、いつも通りの中身があるんだかないんだかの会話。真っ直ぐ帰ったけれど、やはり帰宅部の一花の方が早いようで、玄関には靴がきちんと揃えられていた。

ドアを開けると夕飯の匂い。


涼一「ただいま。」

一花「おかえりなさい。思ったより帰りが早かったのでまだ夕飯の支度が終わってなくて、」

涼一「大丈夫だよ、そんなに焦らなくて。今日はカレー・・・だよね?匂いで分かった。」

一花「あともう少し煮込むだけなので、待っててくださいね!急ぐので!」

涼一「うん、ありがとう。」


急いで煮込んでも変わらないだろうに。

たまには可愛い妹の言いなりになってやるのも兄の務めか。


ピコーン。


メールの着信音。


えっと、差出人は桜井さん?


/////////////////////

FROM:桜井しずく

≫明日の放課後、時間ありますか?よかったら、今度の数学のテスト範囲教えてくれないかな?集中したいから

出来れば二人きりで!

その文面を見た瞬間、『二人きり』という言葉に呼応するみたいに、胸がときめいた。

FROM:日向涼一

≫了解!じゃあ僕も英文の和訳で分からないことあるから教えてほしいな?

FROM:桜井しずく

≫こっちも了解!じゃあまた明日ね。

/////////////////////


一花「お兄ちゃん?」

涼一「なに?」

一花「何かいいことでも?」

涼一「え、何で?」

一花「だってにやけてます。」

涼一「いっ・・・いや!なんでもない。なんでも・・・ないよ?」

一花「なーんか、変なの。」


今まで綺麗な人だと、高嶺の花だからもう僕なんて色々と対象外だと思ってたけど、部活も一緒だし、こうやって二人で勉強だって誘われて・・・


涼一「・・・いや!そんなわけない!!」

一花「お兄ちゃん?夕飯できましたよ。」


ぱっと見た一花は何故か禍々しいオーラを放っていた。



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