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glow heart -九月の向日葵-   作者: haruki
第一章 九月の向日葵 - 明日は夏を追い越して -
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#05 風が前髪を揺らした

涼一≫夢≫回想≫


一花が中学2年生の時、二人でチューリップ畑に行った。そこでは色とりどりのチューリップがとても愛らしく彼女は、無邪気に駆け回っていた。


一花「みて、お兄ちゃん!一面のチューリップよ!愛らしいわ!とても!」


息を吸っては吐き、花の香りを楽しむ。


一花「チューリップはね、色によって、花言葉が違うのよ。」

涼一「へえ、じゃあ赤は?」

一花「赤のチューリップは、”愛の告白”」

涼一「ピンクは?」

一花「ピンクのチューリップはね、”愛の芽生え”、紫は”不滅の愛”、白は”失われた愛”。愛にまつわっていて素敵よね。それにね、チューリップの品種は 5000 品種以上あるのよ、花の色、花びらの形、咲き方、それぞれ魅力があって魅了されちゃう。」


夢中に話す一花は、本当に楽しそうに花々を見つめている。


涼一「じゃあ、一花は、好きな人には何色のチューリップをあげるんだ?」

一花「えっ?」


好きな子でもいるのだろうか?みるみるうちに赤いチューリップに負けないくらいの顔色に変っていった。


一花「好きな、人なんて・・・いないのです。」

涼一「あげるなら?」


じっと、一花の瞳を捉えると観念したかのように小さくつぶやいた。


一花「・・黄色のチューリップ」

涼一「花言葉は?」

一花「内緒です。」


人さし指を唇にあて、シッーというしぐさをしたあと、一花は再びチューリップ畑を歩きだした。どこまでも、続くあの花畑を無邪気な笑顔と僕を呼ぶ声で。


一花「お兄ちゃんー、はやく!はやく!」


僕は声が出ない。


一花「お兄ちゃんー、」


やっとの思いで声を出す


涼一「・・・ち・・・か、・・・って・・・よ」

一花「はやくー」

涼一「いち・・・か・・・、ま・・って・・・」


遠ざかる一花。僕は全力で走るけれど、とても追い付けない。


一花「お兄ちゃんー」


一花、待ってよ。僕はそんなに早く走れないよ。


一花・・・一花・・・



涼一≫保健室≫ベッドの上≫


涼一「待ってよ!!!!!」


がばっと起きた僕は、これでもかというくらい汗にまみれていた。時計を見ると15時34分。


涼一「・・・寝過ぎたなぁ。」


これだけ寝てれば誰か昼前には起こしに来てくれてもいいものだけど。

っていうか、もうすぐ部活の時間じゃん。

そんなことを思いながら起こす身体はやけに重たい。


涼一「よっと。」


起き上がるときにこんなことを言うようじゃ、僕はろくな歳のとり方しないな。しかし、あの夢は何だったんだろう。何かの暗示?


涼一「まぁ、考えすぎも良くないか。」


身体を起こして、


涼一「部室行くか。」


僕がぽつんと呟いたその時、


和沙「日向君、いる?」


この声は・・・。


涼一「柊先輩、おはようございます。」

和沙「おはよう、日向君。」


ひいらぎ 和沙かずさ。僕らのいる桜海高校の一つ上の学年にあたる3年生。そして、我らが天文学部唯一の3年生であり、部長だ。

というか天文学部自体を作ったのは柊先輩だ。


先輩の夢は二つある。


先ずひとつ目が「自分の為だけの超超巨大なプラネタリウムを自分自身で1から作ること」。

そして、もうひとつが「新星を発見すること」。

なんともまぁ、スケールの大きい夢を掲げる人だが、この人ならやってのけてしまうだろうと思わせる人間性、カリスマ性を持っている。

その夢の第一歩として天文学部を作ることにより、学校内で自由に天文学について研究が出来るということらしい。

僕や龍一、桜井さんが天文学部に入るきっかけもこの人がくれたに他ならない。


和沙「で、もうすぐ部活が始まるのだけれど、今日は来れそうかしら?」

涼一「あ、はい。しっかり寝たので部活にはちゃんと顔出します。」

和沙「夏河君から『疲れてるみたいなんで今日は部活休ませようと思ってます。』と聞いていたけれど、大丈夫そうね。」


龍一が休ませようと言っていたのに、こうやって僕に聞きにくるあたり。この人も中々だよなぁ。


和沙「何か思ったかしら?」


え!?思っただけで何かを察するこの人何なんだ!?


和沙「まぁ、取りあえず私は部室で待っているから。あとでね。」

涼一「いえ、僕も一緒に行きますよ。」

和沙「いいえ。貴方は一応病人?・・・なのだから、ちょっとその頭起こしてから来なさい。」

涼一「は・・・はい・・・。」

和沙「じゃあね、」


と、先輩は髪に付けた大きめのリボンをヒラヒラとなびかせて保健室を出て行った。


涼一「・・・敵わないなぁ。」


一息ついた瞬間。


和沙「日向君。」

涼一「はい!?」

和沙「そんなに驚かないでもらえるかしら。私そんなに怖い?」

涼一「いえ、そんなことは・・・。」

和沙「否定するならもっとちゃんと否定しなさい。まぁ、いいわ。」

涼一「・・・で、どうしたんですか?」

和沙「私の直感だけれど、」


先輩が僕の目をじっと覗いてくる。

十秒程経っただろうか。


和沙「もし、何か隠しているのなら上手に隠しなさい。」

涼一「は・・・はい。」

和沙「人間、意志とは裏腹に隠そうとすればする程に口や表情に、そして雰囲気に出してしまうものよ。」


全て、見透かされているようだった。


和沙「また、あとでね。」


先輩が保健室から出て、ドアが閉まるのをきちんと確認した後に、大きなため息が出た。


涼一「ほんと・・・敵わないや。」


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