#03 それは突然の眩さで
涼一≫自宅 リビング ソファーの上≫
18:30
一花「お兄ちゃん!!」
一花が強く僕を呼ぶ声で目を覚ました。
飛び起きた訳ではなく、夢の続きを見るみたいにゆっくりと瞼を開けた。
一花「良かった…良かった…お兄ちゃんが…呼んでも返事してくれなくて…」
涼一「一花…」
辺りを見渡す。
いつの間にか家に着いている。
涼一「一花、まさか僕をここまで…」
龍一「んなわけねぇだろ。」
だよな。
龍一「そりゃあ、10 分後に下校してたら同じ道歩くんだ。そしたら見つけるだろ。見つければ当然連れてくだろうが。」
涼一「ごめん、龍一。」
龍一「いや、その台詞は一花ちゃんに言ってやれ。」
ぱっと一花を見るとまだ泣いている。
龍一「えっと、その。こういうときって病院とか行かなくてもいいのか?」
涼一「ありがとう、でも大丈夫。酷いようなら自分で行くよ。」
昨日行ったばっかりだし。
龍一「そうか。まぁ今日はおとなしく寝とけ。んで、明日は元気に学校来いよ。」
涼一「ありがとうな。」
龍一「あ、明日は放課後部室集合な。今度の観測何処でするか決めるんだから。」
涼一「あぁ、そうだったな。分かった。じゃあ、明日。」
龍一「おう。一花ちゃんも、こいつのことよろしくな」
一花「勿論です!」
当たり前ですと言わんばかりに何故か誇らしげに返事をする一花。今日は流石になんにも言えないなぁ。
一花「お兄ちゃん、晩御飯は軽いものにするので今はお部屋で休んでいてほしいのです。」
涼一「…そうするよ。」
涼一≫自室≫19:00
病院で言われたことを思い出す。
”医者「貴方の身体はもう死んでいます。貴方は、死んだまま生きているんです。」”
涼一「・・・。」
そしてあの夢の影響もあるのかもしれない。
一花があんな事を言うのもいつもの事だし、考え過ぎなのかもしれない。
それより、もう今日は疲れた。ゆっくり…休もう…。
涼一≫自室≫21:45
起きた時にはもう既に 22 時前だった。
一花のことだから、ご飯の時くらいは起こしてくれそうなものだけれども・・・どうしたんだろう?
喉も乾いたし、リビングでお茶でも飲もう。
涼一≫リビング≫
リビングから夜のニュース番組の音声が聞こえる。
きっと一花がそこにいるんだろうな。
涼一「ごめん、一花。少し寝すぎちゃった・・・」
そこにはリビングのテーブルにうつ伏せて眠っている一花。その前にはラップされたサンドイッチ。
この気の抜けた顔を見ると僕はやっぱり安心してしまう。
涼一「ほんと、風邪ひくぞ。」
上着を被せる。
すぐに起こして一花の部屋へ連れて行ったほうがいいけれど、今は少し眺めていたい。
この顔を知ってるのはきっと僕だけなんだろうなぁ。食べ終わったら、ベッドに放り投げてやる。
一花「おにぃ・・・ちゃ・・・」
涼一「あ、ごめん。一花起こしちゃった?」
一花「すぴぃ・・・。」
いや、寝言か。
一花「む・・・り・・・」
涼一「一花?」
うなされてるのか?
やはり起こした方がいいのか?
一花「む・・・り・・り・・・」
誰だか知らないが、僕の大事な妹に夢の中で何してんだ!
涼一「一花、起きて!」
一花「む・・・り・・・。」
涼一「一花!」
一花「むにゃむにゃぷりりん!!!!!!!!!」
涼一「・・・。」
一花「すぴぃ・・・。」
そのあとすぐ担いでベッドに放り投げた。
僕もベッドに飛び込んだ。
涼一≫自室≫6:15
4/11
一花「お兄ちゃん!!!」
ショットガンのような声で目が覚めた。今日は何か貫けそうな気がする。
・・・っと、起きなきゃ。
今日も目覚めることが出来たことに感謝を覚える。
涼一「ごめんね。昨日やっぱり疲れてたみたいで少し寝坊しちゃった。」
一花「いえ・・・その、お兄ちゃん?時間は大丈夫なんです。」
時計を見るとまだ 6 時 15 分。
涼一「ん?・・・どうした?」
一花「あの・・・リビングにいた筈の私は、なぜ寝巻になってベッドに横たわっていたのでしょうか。」
涼一「僕が着替えさせて、ベッドまで運んだんじゃないか。」
一花「え・・・」
涼一「一花もきっと疲れてたんだよね。僕が持ち上げても全然起きな・・・」
一花「び、びっくりぽん!!!!!!!!?????????」
ドタドタと音を立てながら部屋から一花は出て行った。と、思いきや突然『バン!!!!!』と音を立て開いたドア。
一花「お兄ちゃん・・・さ・・・先に行ってきます!!!!!」
涼一「え、あ・・・うん。いってらっしゃい。」
顔を赤らめてる。
どうしたんだろう?
再度時計を見れば時刻は 6 時 30 分。
僕もそろそろ支度しなきゃ。