第45話 再会
「こんばんは~!」
また誰かが入ってきた。聞き覚えのある女性の声だった。
俺は飛び上がって、ドアの方を向いた。ガチャッとドア開いた。しかし、この家は客が勝手に入ってくるようになったのか?
「こんばんは~。って、先輩いたんですか?」
相変わらずなのか。なんなのか。随分大人っぽくなった気がする。
「何、口開けてぽかんとしているんですか?」
「絵理さん。兄はちょっとおかしくなっていますが、あまり気になさらずに」
阿依は笑顔で言った。
「咲耶ちゃんも元気だった?」
「はい」
咲耶は頭を下げた。そうか。こいつは咲耶の恩人なんだよな。
しかし、俺へのスルーっぷりが何とも。まぁいいか。10年経っても何も変わりやしない。
「あ~。先輩。あの時の借りは返してもらいますからね」
絵理は蔑んだ目で俺を見た。
「あ、ああ。わかったわかった」
ちょっと待て、ちょっと待て。皆来るのか?
「お、俺自分の部屋に行ってくるわ」
俺は皆から逃げる様にリビングから出た。俺が廊下に出ると、ドアがガチャッと開き、見慣れた顔が現れた。
「おう! 透哉!」
博人だった。
「もういるの?」
後ろから麻美の声が聞こえた。
「おいおい。俺んちそんなに人入らないぞ?」
って、今日が初めてだよな。
「皆リビングにいるから。ここ真っ直ぐな」
俺はリビングのドアの方を指した。博人と麻美は邪魔だ邪魔だと言わんばかりに、俺を押しのけて、リビングへと向かって行った。
今日は何かあるのか?
俺は自分の部屋のドアを開けた。真っ暗な部屋。ああ。そうだ。パソコン点けっぱなしだった。
俺はPCの前まで行き、椅子に座った。ああ。こんなの見てたのか。
俺は、背もたれに寄りかかった。ああ。落ち着く。真っ暗な中、天を仰いだ。俺は……。
「透哉君」
「ひぃっーーー」
急に名前を呼ばれて、椅子から転げ落ちた。
パッと部屋全体に明かりが灯った。
「透哉君。相変わらずだね」
聞き覚えのある声だ。酷く懐かしいような。最近聞いたばっかりの様な。
「あ、葵……」
手を振ってニコッと笑った。
「久しぶり」
「ま、まさか、本当に葵なのか!?」
葵は俺に向かって歩いてきた。目の前に立つと、俺に抱き着いてきた。
「本当に葵なのか?」
「うん。しつこいよ。馬鹿!」
葵は泣いているようだった。
「俺、やっぱり……」
涙がすぅーっと頬を伝っていく。口が震えてうまく言葉が出ない。
「やっとあの時の透哉君に会えた」
「あの時?」
「うん。話したい事が沢山あるよ」
葵は俺から離れた。涙を手で拭っている。
「おっ。感動の再開ってやつか!?」
俺は振り向いた。
「博人。茶々入れちゃダメだって」
麻美がそう言って笑っている。
「お前ら……」
俺は涙で言葉に詰まった。
「おいおいおいおい。泣くなんてらしくねーじゃん」
色々思い出して、泣かないなんて無理な話だ。てか、こいつら仕組んだな!?
「お、俺もお前たちに、み、皆に話したいことが山ほどあるんだ」
俺は手で涙を拭った。
「それじゃ~それはご飯を食べながらにしようよ」
阿依が言った。
「行こう。透哉君」
葵が俺の肩をポンと叩いた。
俺は頷いた。
「今日は飲むぞ~~~!」
博人と麻美が大声で叫びながら、リビングに戻っていった。
「皆、席に着いたかな?」
博人が音頭を取っている。ほんと変わってないな。
「今日、来れない人もいるけど、そんな奴らは置いといて、俺たちだけで盛り上がろう!」
「ちょっ。ちょっと待って」
「何だよ透哉」
博人は気の抜けたような顔をした。
「いや、ごめん。何で今日なのかなって」
俺は全員の顔を見た。
「それは咲耶ちゃんに聞いてください」
絵理が言った。
「自分が書いたことを忘れてるような男はほっといて飲もう!」
皆が缶ビールや缶チューハイを手に取ったので、俺も慌てて、目の前の缶ビールを手に取った。
「透哉と葵ちゃん、それに皆の無事と、それと俺たちの再開に乾杯!!」
「乾杯!!」
俺は久しぶりにビールを飲んだ。苦いけど、最高に美味しかった。
皆ありがとう。
いつもお読みいただきありがとうございます。
感想、評価、ブクマを付けてくださっている方々、本当にありがとうございます。
次話でラストになります。