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第44話 ただいま

「ただいま~」





 玄関のドアを閉めた。靴を脱ぎ、玄関の明かりを点けた。





 廊下の先のドアから「おかえりなさい」と阿依の声が聞こえた。





 リビングのドアを開けた。





「案外早かったね」





 テレビを見ていた阿依が振り向いた。俺はリュックを床に置いた。





「そんなに早かったか?」





「うん」





 俺は座って、壁に背もたれをついた。





「いつの間にか寝てたみたいで、それで警備員に見つかっちゃってさ。それで帰ってきたんだけどね。後、なんかスマホが変なんだよ」





「へぇ~。スマホは壊れちゃったんじゃないの?」





 ポケットからスマホを取り出し、床に投げた。





「ご飯は?」





「これからだよ」





「てか、何だよニヤニヤして。気持ちわりい」





 なんだ。まだご飯作ってないのか。俺は天を仰いだ。





 あれは夢だったのか。何だったのか。でも、感触は残っている。





「ただいま~」





 女性の声だ。誰だ? 阿依の友達か?





「友達か? 今日来るって言ってたっけ?」





 おいおい俺は疲れてるんだぞ? 頼むぜ全く。





「何寝ぼけたこと言ってるんだか」





 阿依はあきれ顔で俺を見た。





「はぁ?」





 俺は意味が分からなかった。ドアがガチャッと開いた。





「ごめん。ちょっと遅くなっちゃった。あっ!? お兄ちゃんもう帰ってたんだ」





 女性はそう言うと、カバンを置いて、俺の隣に座った。





 はぁ? お兄ちゃん? 誰だ!?





「えっと? どちら様でしたっけ?」





 俺は女性の顔を見た。女性はキョトンとしている。





「お兄ちゃん頭おかしくなった?」





 阿依が俺を見た。





「あ~。えーっと……」





 誰だ。誰だ。誰だ? あー。誰だ!?





「うーん。えーー。……ま・さ・か……」





 まさか。まさかだよな。





「さ・く・や?」





 俺は女性を指さした。女性は笑顔になった。





「そうだよ」





 咲耶は言った。





「ええええええっ!」





 俺は後ずさりした。確かに面影はある。





「どうしたんこの馬鹿?」





 阿依は俺を指さして笑っていた。





「ちょっと待てよ? ちょっと待ってくれ」





 俺は胡坐をかいて考えた。つまり。そういう事だよな。





 俺は立ち上がった。





「いいか? 俺の知っている咲耶っていう女の子はこのくらいの女の子だ」





 俺はジェスチャーをして説明した。





「うん」





 咲耶頷いた。





「ところがどうした? 咲耶は……こんなに大きくなって……」





 腰が砕けそうだった。足がガクガクしている。





「つまり。つまりだ。そういう事か!?」





「そういう事なんじゃない?」





 阿依が笑って言った。咲耶が立ち上がった。





「私はあの時、お兄ちゃん達に助けられた。今でも忘れないよ」





 咲耶はそう言うと、俺を抱きしめた。





「ちょっ。ちょっと」





 俺はどうしていいかわからず、手をバタバタさせた。





「もうその辺にしときなって」





 阿依は笑いを堪え切れない感じだった。咲耶はごめんと言うと、俺から離れた。





 俺はその場で仰向けに倒れ込んだ。白い天井が見える。





 俺はやっぱり過去に行っていた。やっぱり過去に行っていたんだ。




いつもお読みいただきありがとうございます。

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