日本代表VS世界代表‼︎‼︎前日章
国際連合…第二次世界大戦時、イギリス首相ウィンストン・チャーチル、アメリカ大統領フランクリン・ルーズベルト、ソビエト連邦最高指導者ヨシフ・スターリンの三名により構想され、アメリカの構想した草案によって設立された世界の安全保障と経済、社会、文化などの国際協力を取り組む国際機構である。
とある世界線において。
2020年5月1日、世界中でコロナウイルスが発生し外出自粛をしていた頃、日本の西之島で謎の粒子が発見された。
発見したのはコロナが流行る前から野宿で調査していた地質学者のチームだった。
謎の粒子はすぐに調査された。
第一の事件は東京大学の研究室で起きた。
科学者たちが謎の粒子について研究している時、中規模の地震が起き壁の写真や棚にあった論文などが落ち、謎の粒子も保存容器から溢れたのだ。
粒子は床に落ちると突然光りだして、研究室内を閃光で埋め尽くした。
科学者たちが目を開けると、研究室に1人の男が立っていた。
彼は科学者なら誰でも知っている人。
研究室の壁にも写真が飾られており、彼の論文は大切保管されている。
名は湯川秀樹。ノーベル物理学賞を受賞した日本人科学者である。
湯川秀樹の復活は日本中に知らされた。
偽物かと疑われたが物理学の見識の深さと存命中の遠戚が問うた親族だけに伝わる本人のエピソードを答えたことにより本人と断定された。
復活した原因は謎の粒子と湯川秀樹に関する資料である。
詳細な研究の結果、謎の粒子は呼応子と改められた。
呼応子は死人または現在、生存していない生物を世界中の認識から読み取り、現存する資料を元にして存在を呼び起こすのだ。
呼び起こされた人物は自身が過去の存在であることをはっきりと認識していた。
死んだ記憶があり、そこから現代へ飛ばされた感覚らしい。
起きる直前に全盛期の身体に戻り、現代の常識や世界の状況などが客観的に刷り込まれるようだ。
呼び起こされた人物は国籍や人種がバラバラだったとしても言語に関して自動的翻訳されていた。
第二の事件は2022年のG20で起こった。
日本の動きをいち早く察知した世界のメディアは呼応子について追及した。
情報が漏れたことに慌てた時の首相は過去の人物を呼び出し通訳なしで話すことができると言うことは歴史に隠れた真実を明らかにする事ができると世界へ向けて発表した。
これに慌てたのはアジアの領土問題で日本と揉めている国々や過去の日本に対して後ろめたい事のある国の首相たちである。
日本を除いた国々の首相たちは利害の一致を確認し、日本から呼応子を取り上げようとした。
この時、先陣を切ったのは某国の大統領である。
「世界は過去の事よりも未来に向けて新しいことに挑戦するべきだ。呼応子などは使うだけ時間の無駄だ。そんなモノを使って他国の揚げ足を取ろうとする国を信頼なんてできる訳がない。軍を本国に戻そうと思っている。」
大統領記者会見より抜粋。
大国の発言により世界情勢が大きく変わる中、G20は開催された。
議題は奇跡の物質、呼応子の取り扱いについてがメインとされた。
世界は日本に対して呼応子を破棄するように言い、日本は長年に渡って議論された国際問題を解く鍵だと言って反論した。
議論は白熱し仕舞いには怒号が飛び交った。
後日、日本の内閣総理大臣は国民への記者会見を行った。テレビに移された総理はG20前よりも白髪が増えていてとても疲れた様子だった。
世界との交渉は失敗に終わり最悪なことに世界中が敵に回ったと国民へ知らされた。
国会は怒号が飛び交い、世間も先の見えない未来を不安に思い、日本中が暗くなった。
世界が敵に回ったとしても日本は戦争を放棄した国。戦争はできない。
呼応子を捨てるにしても今更遅い。領土問題が子孫へ引き継がれるだけだし、もっと悪化する可能性もある。
困り果てた内閣は日本中のありとあらゆる有識者を呼び会議に会議を重ねた。
ある日のことだ。
ある県の知事も有識者の1人として東京に来ていた。
彼が興味本位で最初の復活者、湯川秀樹に中間子について説明を受けていた時、文字や数式だけではこんがらがって分からなくなり模型はないかと尋ねた。湯川は例となる様なモノを探しながら中間子の仮図形を頭に思い浮かべた。すると呼応子が反応し、湯川が思い浮かべた通りの図形が模型となって現れたのだ。
これを発見した知事は奇策を思いつき、すぐに内閣に連絡して世界に対する自身の奇策を提案した。
以下、国会中継
「茨城県知事、水戸光吉です。
私たちは戦争が出来ません。それは過去に起きた悲劇を繰り返さないためです。
しかし世界の状況は大変宜しくありません。
そこで私は、呼応子を使った代表戦を提案します。これは海上に巨大なスタジアムを建設し、そこに大量の呼応子を敷き詰めて過去の人物たちに戦ってもらう策です。」
「代表戦というが代理戦争ではないのか?」
「呼び起こされた人物はすでに死者であり、生者ではありません。また湯川氏によると怪我をしても次の日には万全の状態に戻っているようです。また、これによる戦争利用は不可能です。理由は以前の呼応子の性質の通りで呼応子は西之島の約1300キロメートル半径でしか反応しないためです。」
「巨大スタジアムについて教えてください。」
「国立競技場よりも大きなスタジアムを西之島から東へ500キロメートル進んだ太平洋上に建てます。建設の方は水戸グループの中心となって行います。」
「呼応子の量は足りるのか?」
「研究チームによると西之島の火山より今もなお噴出しているようです。
呼応子をスタジアム全体に満たし日本の偉人や伝説を呼び起こして世界の猛者たちと対戦してもらうのです。呼応子は呼び起こされた人物の経験や偉業、伝説を再現することもできるのです。」
「仮にそれをやるとしても日本の歴史上の人物が世界と比べた場合、圧倒的に少ないのではないか?」
「その点はご安心ください。
私の実家、水戸家の祖先、水戸光圀が製作した大日本史があります。これは明治に完成した後、大正から日本中の伝記や風土記、伝承を集め今も新しい歴史書を編纂中です。
古代から現代にかけての皇族、貴族、平民、政治家、軍人、芸人、商人、医者、料理人、農家、漁師、スポーツ選手、職人、大工に公務員。日本史に名を刻んだ者なら誰でも呼ぶことができます。
これは言わば日本史対世界史ですよ!!
日本国民の皆さん、我々の歩んできた歴史に誇りがあり自信があるならやってみませんか?」
4年後、西之島東500キロメートル地点。
第零回戦!!
世界代表!国際連合、フランクリン・ルーズベルト!日本代表!大日本史、水戸光圀!
万国旗と国際連合旗が掲げられた道をゆっくり車で進むアメリカ人男性は大戦時の大統領。護衛に守られながらも不自由な両足でしっかりと立つ男は星条旗の元に今、呼び起こされた。
対するは50人の学者を引き連れた藩主。徳川家でありながら将軍の法を破り自由に人生を歩んだ老公。歴史書に魅了され200年以上の大事業を為し遂げた御隠居様は己の大日本史により呼び起こされた。
「世界はまた混沌としているのか。しかも火種があったとしても油を注いだのが我が国とはやるせないな。」
「ほほう、海外を相手取ったか。面白いのう。して、使われるのが儂の史書を中心とした日本史書か!ハッハッハ!!愉快愉快!!」
「日本の爺さん、笑ってるし。日本ってやっぱ脳筋か戦闘民族しかいないのか?」
「そんなわけあるかい、いいか、若いの。時代はイマジンとファンタジーじゃ!!」
「イかれてるな。まあ、始めるか。国際連合加盟国史より参照する。
人類史を映し出せ!!」
「年寄りを舐めんのも大概にせい。全日本国史より参照する。日本史を映し出せ!!」
日本代表対世界代表、第零回戦、開始!!
助さん・佐々木宗淳
「水戸光圀様は隠居後は落ち着いた方だったが…。」
格さん・安積澹泊
「それ以前はそこらのかぶき者より奇想天外な人だったからな。史料探訪には苦労した。」