採取クエスト
採取クエストの報酬は明確には決まっておらず、その素材の状態によって増えたり減ったりするらしく、ノアが見つけた…というよりは育てたんだがそのキノコはものすごく質が良いらしくキノコ採集の平均報酬は1人あたり8000フラムらしいが俺たちはその3倍の24000フラムが渡された。
「本当にもらっていいのか?」
「いいよ、だって僕たちパーティでしょ?」
ノアはにっこりと笑ってみせた。
「ふぁ〜…それよりも私もうクタクタだよ…初日からいろいろあったしもう宿に泊まるから…じゃぁね」
「あっ、じゃぁ僕も…トーゴはどうする?」
「俺は…ちょっと用事があるから…あとで行くわ」
東吾は手を振り2人を見送った…そして。
「あいつらいい奴らだな……さて情報収集だ」
あの受付のお姉さんの反応ならウサミシゲユキはそれなりに位が高いもしくはかなりの有名人のはず…それなら酒場の冒険者でも何か知ってるはずだし酔っ払いだ、止められててもきっと口を滑らせるはずだ。
ギルドに入ると昼に入った時よりも強い酒の匂いと酔っ払いの怒号や笑い声が飛び交っていた。
凄いなこの活気…昼来た時とは全然違う。
「おい、坊主〜突っ立ってねえで飲めよ!一杯奢ってやるぜ〜?」
ぐでんぐでんに酔った男が酒を片手に東吾を手招きする。
そういえばこの世界の成人っていつなんだ…?
「ありがとうございます、お言葉に甘えて…いただきます」
隣に座り差し出された酒をグイッと飲んだ。
「おっ?ニイちゃんイケる口か?ほれ、飲め飲め!」
別の冒険者も東吾に酒を差し出し、東吾もそれを受け取った。
「あ、ありがとう…ございます」
「そう硬くなんなよ〜気楽に行こうぜ!」
酔っ払いのサムズアップに東吾も応えた。
いや…不味い、非常に不味い…むしろ苦い。よくこんなもん飲めるなこの人たち…。
「ほれ!飲め飲め、ガハハハハっ!」
次第に酒を飲むのではなく酒に飲まれていく東吾であった。
「あったまイテぇ…どこだここ…」
気がつくと朝、そして路地裏でぶっ倒れていた…。
「クッソ…なんの収穫もなかった…いや酒はやばいってのはわかったか……うぐっ」
朝から最悪だ…頭ガンガンするし…とりあえず口をゆすごう。
「にしてもあれだな…いい人たちだったな」
今日はクエスト休もうかな…。
「あれ?東吾なにしてるの?」
「おぅ…おはようテイル。俺今日は…」
「トーゴは朝早いんだね。今日のクエストは何行く?山菜採り?」
「いや、俺今日はやす…」
「山菜採りいいね!早速受注してくるね」
……ま、いっか。
「着いたねぇテオ山…」
テオ山…火山ではあるが何百年も噴火していないらしい。
「しかし暑いなぁ…こんなとこに山菜なんて生えるのか?」
何よりこの世界にゼンマイがあるってのに驚いたわ。
「コレ…依頼のじゃないかな?」
ノアが手にしたのは少し小ぶりだが確かに依頼のゼンマイだった。
「相変わらず早いな。でもやっぱり生えてても小さいのか…」
「いや…そうでもないみたいだよ?」
「おーい見てみて!」
テイルが持ってきたのは1mは超えるほどのそれはそれは見事なゼンマイであった…。
「デケェよ…もうそれだけで足りるんじゃないか?」
「いや…キノコの時もそうだったけど採った分、採った質だけ報酬が変わるからせっかくきたのにもう帰るのは勿体ないよ」
確かにノアの言う通りではあるな。
「しかしあんなにデカイのだとカゴに入らないしなぁ…収納魔法とかあったら便利なのになぁ」
ゼンマイを採っているとひとつだけ輝く石ころを見つけた。
「なんだ…コレ?綺麗だなぁ……」
日に当ててみるとより一層輝く…宝石かな?
「高く売れそうだな。今度採掘系のクエストでも受けてみるか」
「……トーゴ、あれ…」
ノアの指差す先にはデカイ狼に追いかけられているテイルが……。
「でっか…一旦退いた方がいいんじゃないか?」
「いや、1匹くらいならなんとか…」
ノアの体にバチバチと電気が流れだし戦闘態勢に入る。
「受付の人も言ってただろ?討伐は4人以上からだって。何があるかわからないんだからここは退くのが正解だろ、火吹いたりするかもしれないしな」
それに俺は素手だ確実に足手纏いになる。
「もう遅いよ。こっちきてる」
ノアが発した電気に気づいたであろう狼がこちらに向かってくる。
すかさずノアが体に纏った電気を狼に撃ち放った。
しかし狼はひらりひらりと飛んでくる電撃をかわしていく。
「…撤退しよっか」
「いやもう遅いだろこれは!ノア、俺たちの周りに電気の壁とか作れないか⁉︎」
「や、やってみる!」
そう言うとノアは俺たちの周りに電気の檻のようなものを展開させた。
「で、できたよトーゴ!狼も入ってこない!」
狼は電気でできた檻の周りをグルグルと回った後…再びテイルの方へ向かって走って行った。
「あ、テイルのこと忘れてた…まぁいいかあいつ強いしなんとかなるだろ」
「僕だって強いと思うんだけどなぁ」
「そう拗ねるなよ、さっきの動き見ただろ?今の俺たちじゃアレは無理だな。
テイルなら2、300kgのものでも持ち上げられる力もあるし1日1回だけだが雷も出せるしあのままでもなんとかなるだろ」
現にああやって走って逃げれてるんだしな…ほんと凄いやつだな。
こうして俺とノアはテイルを囮にしてゼンマイを取り続けた。