初めてのクエスト
衝撃だった。
まさか来て早々手掛かりを掴むとは思わなかった。
同じ姓だからといって親父とは限らない、もしかしたら人違いかもしれない…けれどもあの男はこの世界に行けば俺の願いが叶うと言ったことを考えれば親父の可能性が高い。
「……ウサミシゲユキって人はどんなひとですか?」
東吾の顔が強張る。
それを察したのか受付嬢は何も答えずに光に記された情報をカードに書き記した。
「…どうぞ、貴方がシゲユキ様を探しているのは分かりした。お二人に何があったのかは私にはわかりませんが彼がどこにいるのかは私にはわかりませんし知っていても言えません…すみません」
大丈夫だと伝え俺はカードを受け取り俺たちは部屋を出た。
「それでは最後の説明ですが…ランクアップについてですがお手元のカードを確認してください」
カードを見るとFの横にIと書かれていた。
「なんかFの横にⅢって書かれてるけど…」
「はい、モンスターや魔物を討伐すればそれに見合った経験値がカードに蓄積されます。テイルさんはレリザードを討伐していますのでレベルがⅢになっています。
これがⅩ(10)になれば1つ上のランクのクエストに挑戦でき、それをクリアすればランクアップできます」
そんな簡単には飛び級できないってわけか…。
「それでは大まかな説明でしたがこれにて登録は終わりです。何かわからないことがあればいつでも質問してください」
「スキルポイントとかってないの?」
受付嬢はテイルの質問に小首を傾げた。
「スキルポイントですか?その様なものは聞いたことがありませんね…すみません」
「じゃぁ魔法とかスキルとかどうやって覚えるの?」
「スキルはよくわかりませんが…魔法でしたら誰かに教えてもらうか魔導書を読んで練習して覚えるくらいしか今のところ方法はないですね」
そして魔導書は結構なお値段だそうで初級魔法でも一冊100万フラムは当たり前だそうでよっぽどのコレクターでなければ教わる方が安く済むそうだ。
「で、どうする?クエスト行くか?採取系になるけど」
「ん〜…キノコ集めに薬草集め…採掘に地質調査…どれもパッとしないなぁ…ノアはどれがいい?」
少し考えたあとキノコ採集クエストを受けることにした。
「「なんでキノコ?」」
「…好きだから」
…いざ森へ!
鬱蒼たる森の中ひんやりとした空気が肌をなぞっていく。
なんか涼しい…いやちょっと寒いな。
「お、あそこにもキノコがあるよ!これで8つ目〜」
「僕は5個目…」
「危ないからあんまり奥まで行くなよ〜?ったく、ノアはともかくテイルははしゃぎすぎだろ…」
東吾はブツクサいいながらも目につくキノコを摘み取っていく。
「お、デカいなこれ…おっ!あっちもデカい!なんかテンション上がるなこれ」
夢中になってキノコをカゴいっぱいになるまで摘み取り、少し休憩をと岩に腰掛けた。
辺りを見渡すと2人が居ない…ここで森の奥まできてしまったことに気づいた。
「……どうしよう」
とりあえず叫んだ、しかし返事はない。
「まいったな、こりゃ相当奥にきたんじゃないか?………ん?」
歩いていると川へと辿り着いた。
「お…川だ!これたどって行ったら森を抜けれるんじゃないか?」
東吾は助かったと安堵し川へと走った…が、川には先客がいたようだ。
ん?こんなとこに女の子が…何してんだ?
茂みに隠れ様子見をしていると少女は服を着たまま川へと入っていった。
「なっ…自殺か⁉︎おいお前っ!考え直せ!」
急な出来事に慌てて止めに入ろうと茂みから飛び出した。
少女は東吾に気付くと後ろへ大きく跳んだ。
な、なんだ?あの跳躍力…川の中からなのにあそこまで跳べるのか?
少女は東吾に対しあからさまな敵意を向けた。
なんだこの子…普通じゃない!
とっさに身構える東吾、それを見て少女は口から火を吹いた。
「嘘だろおいっ⁉︎」
不意を突かれた東吾は防具のない顔を庇うように腕をクロスした。
灼熱の炎が東吾に纏わり付くもその炎は一瞬で掻き消された。
「なんだ…?何が起こったんだ?」
少女の方に目を向けるもすでに少女の姿はなかった。
「なんだったんだよ今のは……ってあぁ!カゴが!キノコが燃えてる!」
さっきの炎でキノコがカゴごと燃え尽きてしまった……最悪だ。
「なんだったんだよ…クッソ〜!キノコ全ロスだ!」
憤慨し後ろを振り返ると東吾はゾッとした。
後ろの草木が、正確に言えば自分の後ろ一直線の草木が燃え尽きていたのだ。
「……本当になんだったんだよ」
俺はその場から早く離れたくなったので走って逃げた。
「あっ…東吾!どこ行ってたの?探したんだよ?」
どうやら戻ってこれたようだ…。
「わ、悪い。夢中でキノコ取ってたら奥の方まで行っちゃっててな…崖に落ちそうになってカゴごと落としてしまった…あはは」
とっさに嘘をついてしまった。
「えー…自分で奥いくなって言っといてそれはどうなの?」
ぐぅ…悔しいけどなんも言い返せない。
「見て、トーゴ!キノコいっぱい取れた」
ノアは自慢げにカゴの中身を見せた。
ノアの見つけたキノコはどれもこれもはちきれんばかりに大きく育っていた。
「デケェ…こんなデカいのばっかよく見つけたな」
その言葉を聞きテイルが待ってましたと言わんばかりに語り出した。
「キノコってのはね…雷で育つんだよ!
最初は焼き焦がしたりしちゃったけど程よい電流を当て続けて行ったらこんなにも大きくなったのさ!」
「へぇ…ん?待てよ?お前1日1回しか雷出せないんじゃなかったのか?」
「僕がやったんだよ」
そう言ってノアは指先からバチバチと小さな電気を放った。
「凄いでしょ?私には及ばないけどノアも雷というか雷気を操ることができるんだよ!」
「なんでお前がドヤ顔するんだよ…でも凄いな!戦いでも頼りになるな」
ノアの頭をわしゃわしゃと撫でた。
「トーゴ……鎧が痛い」
「す、すまん…それじゃぁ帰るか」
俺たちはなんとか日が暮れる前に森から抜けれた。