冒険者登録
照りつける日差しの中荷車を押す2人。
「気づいたことがあるんだけどさぁ…ここの世界の言葉ってさ何語なんだ?会話できてたけど文字は読めなかったんだよなぁ」
「確かに…なんで言葉はわかるのに文字は読めないんだろうね。まぁ異世界だしいいんじゃない?」
そんなたわいもない話を続けていると目的のトカゲとそのトカゲのそばに子どもが立っているのが見えた。
「おーい、何してんだ?迷子か?」
少年は少し考え、口を開いた。
「迷子…なのかな?わからない。気づいたらここにいたから…」
「お前も俺たちと同じか…」
「なになに?また転移者?3人同時ってなかなかないんじゃない?私はテイルだよよろしくね。あとこっちは東吾だよ」
少年もよろしくと言いながら握手を交わしにこりと微笑んだ。
「僕はノアだよ。2人も女神さまに送られたの?」
「女神さま…?俺の時は背の高い細身の男だったけど…」
「まぁまぁ細かいことはいいじゃん。これも何かの縁、いや運命だよ!転移者同士一緒に行動しない?いわゆるパーティーってやつだね!」
そう言いながらテイルはトカゲを抱え上げ荷車に乗せた。
「まぁ俺は構わないけどな…お前といればすぐ死ぬことはなさそうだし…って重いっ!」
俺もトカゲを運ぼうとしたが重すぎてびくともしない!
「東吾はまだまだだなぁ私に任せなさい」
「お〜…テイルは力持ちなんだね」
あの重さを…テイルのやつ一体何者なんだ?
「それで…ノアはどうする?一緒に行動するなら荷車押すの手伝って欲しいな」
ノアは首を縦に振り一緒に荷車を押し始めた。
あれからハプニングもなく無事ギルドに到着した。
受付の人にトカゲを見せたところ目を丸くしながらも買い取ってくれた。
「レリザードですか…あまり脅威性はありませんがそれでも冒険者でもない方が討伐するとは…すみません、失礼しました。こちらが買取金額の50000フラムになります」
渡されたのは金貨5枚だった。
後から聞いた話だがこの国の通貨は金貨なら1万銀なら1000銅なら100青銅が10で鉛が1フラムだそうだ。
「あのトカゲ5万だって、やったね。分け前はどうする?」
「全部お前もちでいいんじゃないか?倒したのはテイルなんだし」
「そうはいかないよ、2人には運んでもらったんだしちゃんと分けないとね!ここは公平に…3/1/1でどう?これなら冒険者登録もできてお釣りもくるでしょ?」
異論なしということで俺とノアは好意に甘えることにした。
「ではまず冒険者登録する前に冒険者について説明させてもらいます。
冒険者にはランクがあって下限がFランクで上限はAAAランク…ですがAAAランクは現状登録されているのは過去2名で現在1名だけですので実質AAが上限になりますね。
そしてクエストの受注方法についてですが受注する際に契約金をいただきます。
そしてクエスト失敗時には違約金を払ってもらいます、金額についてはクエストのランクと冒険者ランクによって異なってきますので自信がない場合は受注する前にあらかじめ聞いておくことをオススメします」
クエスト受けるのにも金が要るのか…世知辛いな。
「そしてクエストにも種類があります。
採取系、討伐系の2つですが採取系のクエストは最低2人以上で受けてください。
そして討伐系ですがどんなに低難度のクエストでも必ずDランク以上の冒険者含む4人以上で受けてください」
「4人以上ってのはわかるけどなんでDランク以上の冒険者が必要なの?」
テイルの質問に対し受付は厳しい顔つきで説明を続けた。
「もう10年以上も前のことですが駆け出し冒険者4人が低級モンスターの討伐系クエストに行ったところ…帰ってきたのは1人だけでその1人も毒によりすぐに息絶えました。
そのためこう言ったことが2度と無いようにこのような決まりを設けました」
こっわ…俺冒険者になるのやめようかな…。
「では改めて…冒険者になる方はこちらへどうぞ」
はーいと言いながらテイルはお姉さんについて行き、ノアも迷ってはいるもののテイルの後に続き案内された部屋へと入っていった。
「…討伐系クエストを受けなけりゃいい話か」
悩んだ末俺も後に続いた。
部屋に入ると中は薄暗く中心には薄く光る丸い水晶の様なものが置かれていた。
「ではこちらに手をかざしてください」
言われるままテイルが水晶に手をかざすと淡い光が現れ、そこに描かれている文字をお姉さんがカードに書き記している。
「テイルさんですね…身長は160cm体重52kgで年齢は…15ですね。魔力量が……⁉︎」
先ほどまで淡々としていたお姉さんがもの凄い勢いで二度見した。
「…すみませんもう一度かざしてもらっても構いませんか?…ありがとうございます。
………⁉︎嘘…また同じ数値⁉︎」
「えっと〜…どうだった?」
「異常です‼︎はっきり言ってこんな数値見たことも聞いたこともありません!あなた何者なんですか⁉︎」
受付嬢の異様な慌て様に気になったノアと東吾は覗きこんだ。
2人とも文字は読めなかったがそこに示されている数字の羅列に驚いた。
「何これ…9がいっぱい…」
「いやもうこれカンストしてるんじゃないか…?」
受付嬢は震える手でそこに書かれている数字をカードに書き記した。
「と、とにかく…テイルさんの冒険者登録はこれで終了です!こちらをどうぞ!」
テイルは食い気味にカードを渡された。
「じゃ、じゃぁ…次は僕が…」
ノアが手をかざすと同様に光が現れた。
「ノア・バーンズさん10歳…135cm28kgですね。魔力量は…またですか…貴方も規格外ですね」
テイルほどではないが多分高いのだろうな。
「次は俺かぁ…なんかドキドキするなぁこれ」
俺は恐る恐る手をかざした。
「ウサミ・トーゴさん……ウサミ?」
受付嬢は名前を見た途端書くのを止め東吾に尋ねた。
「もしかして…ウサミシゲユキ様の御子息…ですか?」