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運気は逃したくないな

帰宅前の花曇り

いかにも嘆息を具現化したような情景に息をはいた。

誰もいない薄暗いただ水を吹き上げているだけの公園を横目に、生暖かい風に煽られ生きているのか死んでいるのか分からない地べたの虫達を素通りし、視力が落ちはじめ霞んだ視界を気にせず、重い足を進めた。


微妙に痛い頭に少しの苛つきを覚え、朝から今日のお供である紺色の傘に右手を塞がれ、意味もなく信号を逃した。


早く帰りたい気持ちと、動きたくない気持ちが重なりもどかしい。今すぐ走り出して家に帰りたい。踏み込んだ瞬間だるさと気恥ずかしさが混じり足が止まる。とりあえず面倒。

「...はぁ」

目を閉じて開ければそこが自室だったらとここまでで何度思ったやら。


「 ...」


瞳を開ければ青信号が点滅していた。


腑に落ちないとはまさしくこういう事だろう。そんな事は起こらないと分かっていてもやってしまう思春期の悪い所だ。

早く帰りたいという願望が帰宅時間を遅くする、なんという皮肉。このままバスも逃し、しばらくするとそこに美少女が、、、という流れだが、あいにくバスは乗らないのでセーフだ。


何がセーフだ。


こういう胸糞悪さが人を自殺などに追い込むのだろうか。いや自分と異なり、抽象的になってしまうが辛く苦しい事が積み重なった上での希望の消滅が一番くる と他人の心を理解できない自己中(死語)が思った。


事の積み重ね、そんなものは特にない。悩んでいる事も特にない。だから何に悩むべきか悩んでしまう。


そう今の自分には何もない。




何もなかったんだこの時まで、、、

 と希望に満ち溢れた事を言っておこう。唇を緩ませ、軽く弾みながら前進。


「 ...」


左に見えていた陰、人影が振り返る。

痛い、口に出た。痛すぎる。

独り言を言った時だけ近くに人がいるのはなんなんだ。咳払いをするというベタな誤魔化しをし早足でその場を立ち去る。

帰宅時間が早まって助かる。


結局は早く帰りたいんだ、体がきついだけで。

4月の新生活。電車通学。肉体的疲労は仕方ない。

いっそ身に付けてるものがワープマシーン()にならないのか。


これで何度目だ。


直後、空いた右手が宙をおよぎ、足が止まった。

怠惰な作者に御慈悲を...

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