301 1周年特別編 出会って一年たった二人。
お読みいただきありがとうございます!
去年のゴールデンウイークに始まり、丸一年がたちました。
おかげさまで、215万PV、34万ユニークを達成することができました。
このお話は完結しておりますが、感謝の思いを込めて一話だけ追加しました。
よろしくお願いします!
<西宮陽視点>
僕と佐々木瑞菜さんが出会って丸一年が過ぎた。クリスマスイブ、お正月、瑞菜さんの誕生日、バレンタインデー、そしてホワイトデー。僕達は二人っきりで、誰にも邪魔されることなく西宮家でそれぞれの時を祝った。
二人で部屋をかざり、二人で料理を作り、二人で食事を楽しみながらおしゃべりして、二人で皿洗い。お片付けも、お掃除も、洗濯もいつも二人の共同作業。日常の事だけでも、新鮮でとても楽しいし大切な時間となった。
妹の西宮月は八重橋元気先輩と一緒にお出掛けしてご満悦だ。やれクルーズだの、温泉だの、海外だの。元気先輩はどんなに忙しくても妹の月ことを気にかけてくれる。目立ってしまって外出するのがなかなか難しい僕らの事情に配慮してくれている。ありがたいことだ。
僕こと西宮陽は十八歳の春を迎えていた。一年前は当然のように平凡に高3の春を過ごしていると思っていた。が、人生というものは何が切っ掛けで、どう転ぶか全く予測がつかないものだ。
見上げると、今年も賑やかに咲き誇った桜の花も散り、青葉が暑苦しいくらいに生い茂っている。去年、高校の教室からぼんやりと眺めたことが懐かしい。
ここは田舎町にある遊園地だ。僕と佐々木瑞菜さんは二人並んで春の日差しを避けて、木漏れ日のさす小道を歩いている。木の葉をすり抜けた幾筋もの光線が作り出す光と影のコントラストが荘厳で何とも美しい。
「まさか、こんな形で陽くんと遊園地デートをすることになるなんて思いませんでした」
「弥生さんの結婚式に向かう時にした約束通り、貸し切りです。元気先輩にも聞かれちゃいましたしね」
「これって貸し切りですか?」
「ええまあ、僕たちの以外ゲストはいませんから。一応、貸し切りです」
「ふふっ。わかりました。ところで、陽くんと出会って丸一年ですね」
「はい。そうなりますね」
横にいる瑞菜さんの一言で思い出す。一年前、僕が求めていた平穏な生活は、結局、訪れることはなかった。それよりも、ずっと心が豊かで穏やかな素晴らしい未来が待っていた。国民的無敵美少女アイドルが、僕の彼女だものなー。夏には世界的無敵女優になっているかもしれない。
「瑞菜さん。ハリウッドはどうですか?」
「ええ。陽くんの『YADOYA』を、ずっと大きくしたような場所ですね。奇想天外で面白い人たちばっかりが集まっています」
「そうですか。楽しそうですね」
「はい。オファーを受けて良かったです。陽くんの後押しがなかったらハリウッドには来てません」
「寂しくなったらまたこうして合えば良いじゃないですか」
瑞菜さんが僕に手を差し出してくる。僕はその手を取る。指先のごつごつした感覚は、まだまだ改良の余地があるって感じだ。瑞菜さんのすべすべした手とは大違いだ。それに寄り掛かられるとかなり重い。
「瑞菜さん。見た目は同じなのに、少し見ない間に随分と重くなりましたね。一緒にジェットコースターに乗れるか心配になってきました」
「もう、陽くんったら。私は重くなんかなってません。そっちの技術の人に聞いてください」
「そうですね」
僕が笑うと瑞菜さんも一緒に笑った。そう、佐々木瑞菜さんは今、ハリウッドの特設スタジオにいる。映画の撮影が始まっているのでそうそう気軽には帰ってこれない。そして僕は今、とある田舎の遊園地で研究中の二足歩行ロボットと歩いている。僕のつけている3Dゴーグルの中ではロボットの姿はかき消され、現実の背景に瑞菜さんの姿が合成されている。
とてもリアルで、瑞菜さんと並んで歩いているように感じるけど、さすがに肌が触れ合うと違和感がある。それでも、一緒にいる気分は十分に味わえる。
この技術の先には、障害を持った人々や足腰が弱ったお年寄りの未来がかかっている。もちろん、リアリティーのあるバーチャル旅行にも使えるし、人間が入り込めないような危険地帯での作業もできる。
ハリウッドにいる瑞菜さんとデートをするために『YADOYA』に集まる技術者たちのモニターをかって出たのだ。遊園地は貸し切り、乗り物も乗り放題だ。但し、瑞菜さんの身代わりロボットがちゃんと乗れればの話だけど・・・。
思いのほか問題なく、ジェットコースターもコーヒーカップもメリーゴーランドも楽しめた。身代わりロボットくんの性能は見た目以上だ。いつもふざけてばかりだけど『YADOYA』に集まる技術者は優秀だ。僕と瑞菜さんは最後の乗り物、遊園地の定番、大観覧車に乗り込んだ。
「沢山の乗り物に乗ったし、瑞菜さんとも沢山話せた。このシステムは想像以上ですね」
「はい。こんなに遠く離れていても、陽くんを強く感じることができるなんてびっくりです。これなら世界中を飛び回って仕事をしても、一瞬にして陽くんの元に帰れますね。本当に魔法みたいです」
「新しい技術は魔法です。人を幸せにも不幸にもできます。正しく使われるように働きかけていくのが僕の仕事ですかね。今日のデートで余計に瑞菜さんに会いたくなっちゃいました」
「ふふっ。私も陽くんに会いたいです」
「そうなんですよ。こっちの瑞菜さんは、肩を寄せてくると恐ろしく重いんです。それに同じ側の席に座るとゴンドラが少し傾くんです。ダイエットが必要ですね」
「まあ、ダイエットですか?陽くんがパワーアップしたらどうですか?」
「ぼっ、僕がですか?」
「やっぱり嫌です。ムキムキの仙人さんなんて見たくないです。陽くんは陽くんのままが一番いいです。ハリウッドに来てください」
3Dゴーグルの中の瑞菜さんがふんわりとした笑顔をつくった。本物には敵わない。佐々木瑞菜はどこにいたって、無敵美少女のままだ。
「そうだなー。たまには旅行も悪くない。僕が行くまであんまりアメリカで人気にならないでくださいね。ギャラリーが増えて、あちこちの観光地や遊園地を気兼ねなく歩けなくなりますからね」
「だったら今すぐ飛んできてくださいね」
瑞菜さんはそう言って僕を見つめたまま目を閉じた。僕は瑞菜さんの顔にそっと自分の顔を重ねる。明日の朝、一番で飛行機のチケットをとろう。大切な人と過ごす時間はどんな贅沢よりも価値がある。
おしまい。
お読みいただきありがとうございます!
これからも特別編を追加するかもしれませんし、しないかもしれませんが、この物語をよろしくお願いします。(Season3はありません)
今年のゴールデンウイークに合わせて新作をスタートしました。
『スマホアプリで俺が創った女神様そっくりの美少女が転校してきた。』
https://ncode.syosetu.com/n8419fl/
こちらもスマホ向けに短めにしておりますので、電車の中や待ち合わせなど空いた時間に気軽にお読みいただけたら嬉しいです。




