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妹のラブレターを代筆したら、無敵美少女アイドルと同居することになった。  作者: 坂井ひいろ
Season2

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227 意地悪な質問ですね

西宮陽にしみや よう視点>


 季節は秋から冬へと移り変わった。青く澄み渡った空を見上げる。冷たい風が頬を撫でて通り過ぎて行く。隣りを歩く佐々木瑞菜ささき みずなさんの吐く息が白い。


 僕たちは森崎弥生もりさき やよいさんと宮本京みやもと けい社長の結婚披露宴会場へと向かっていた。月日は駆け足で走り抜けて行く。


「とうとう、この日がきましたね。同級生が結婚するなんて何だか不思議な気分です。半年前まで同じクラスで過ごしていたことが遠い昔のようです」


「陽くんにとって弥生さんはどんな人ですか」


 僕は私立修学館高校2年3組で過ごしていた頃のことを思い浮かべた。教室の窓から入り込む、五月の夕日がつくり出すやわらかい日差しを受けて居眠りしている僕。


 妹の西宮月にしみや つきに頼まれて、夜遅くまで瑞菜さんに向けたラブレターを代筆した次の日のことだった。僕を起こそうとして机の前に仁王立ちしている弥生さん。


 あの頃の弥生さんは、チョー堅物真面目女子で、赤フチメガネがトレードマークの生徒会風紀委員長。メガネ越しに、ジーっと僕の瞳の奥を覗き込んでく彼女の顔。窓から差し込んでる夕日が彼女を照らして、ハッとさせられたっけ。


「高校に入学早々、八重橋元気やえばし げんき先輩と事件を起こしたヘタレな僕を更生させるのが、彼女の任務だったようです。保護者気取りの幼なじみってとこでしょうか」


「更生ですか?驚きです。それで、陽くんは更生できたのですか?」


「どうでしょうか。少なくとも、ヘタレでは無くなった様な気がしますが」


「そうですか。陽くんはヘタレじゃなくなったんですね」


 瑞菜さんが僕の腕を取って引き寄せ、悪戯っぽく微笑んだ。国民的無敵美少女アイドルの女神の瞳が僕をとらえる。僕の心臓の鼓動が高鳴る。


「正直なところ瑞菜さんの前では、永遠にヘタレかもしれません」


「私もヘタレかも知れません。ほら」


 瑞菜さんが僕の手を彼女の胸にあてた。コートの上からでも彼女の心臓の鼓動を感じる。激しく力強く。


「人が見ていますよ」


「かまいません」


 恥ずかしそうに顔を赤らめてうつ向きながらも、瑞菜さんは僕の手を抱きしめる様にして歩く。彼女の指には僕があげたダイヤモンドの指輪がキラキラと輝いている。


「ねえ、陽くん。もしも、私がいなかったら弥生さんとお付き合いしていましたか?」


「意地悪な質問ですね」


「はい。私は欲張りなんです。今、気づきました。私の知らない陽くんの時間を弥生さんは知っています」


「僕は、これからの時間を瑞菜さんの為だけに生きると約束します。この指輪に誓って」


 僕は瑞菜さんの手を握り返した。白くてしなやかな細い指。僕の大切な人。望んでも得られないような女神。この人の為だったら僕は何だってできる。


「私は幸せ者ですね」


「僕の方こそ。それじゃあ、弥生さんの祝福に行きましょうか」


「はい。あっ。そうです。その前に。指輪のお礼です」


 瑞菜さんはポケットの中に手を入れて、ラッピングされたギフトボックスを取り出した。僕の手を取って、手の平にちょこんと置く。


「開けてください」


 僕は彼女に促されるままにリボンを解き、ラッピング用紙を取った。額がぶつかるくらいの距離で、二人でその箱を見つめる。僕はそっとケースの蓋を開けた。


「腕時計ですね」


「気にいっていただけましたか」


 心配そうに僕を見つめる瑞菜さん。今すぐ抱きしめたくなるくらい可愛らしい。


「はい。大切にします」


 僕の答えを聞いで瑞菜さんの顔が華やいでいく。なんて可憐なんだろう。アイドルとしての凛とした姿も大好きだけど、僕にしか見せない可愛らしさをたたえた瑞菜さんの顔が何とも言えない。


「二人の時を刻む音がします」


「陽くんは詩人さんですか?」


「恥ずかしいので聞かなかったことにしてください」


「だめです。もう、聞いちゃいました」


 このまま会話を続けると顔から蒸気が噴き出しそうだ。僕は少しばかり話を逸らした。


「付けても良いですか。これ」


「私が付けてあげます」


 瑞菜さんが腕時計を箱から取り出して、僕の腕にはめてくれた。うん、ピッタリだ。


 何も言わなくても僕の好みをちゃんと理解してくれている。それが国民的無敵美少女、佐々木瑞菜。僕の心をとりこにしてやまない完璧な女の子なんだ。


「ありがとうございます」


「はい。私もこの指輪を大切にします」


 幸せ過ぎて動けなくなる。ずっとこのまま瑞菜さんのことを見ていたい。


「いつまで、そこでじゃれ合っているんだい。見ているこっち迄、顔が赤くなるだろ」


 後ろからそっと肩をたたかれた。振り向くとニヤニヤしている元気先輩がそこにいた。


「元気先輩。いつから見ていたのですが?」


「さあな」


「妹のつきには内緒でお願いします」


「隠すようなことじゃないだろ」


「そうですが・・・」


「まあ、瑞菜さんに免じて許してやるか」


「元気さん。月ちゃんと二人っきりで遊園地に行ったんですってね」


「瑞菜さん。今、そのことは・・・」


「月ちゃんが嬉しそうに報告してくれました。ねえ、陽くん。羨ましいです。私も陽くんと二人っきりで遊園地デートがしたいです」


「瑞菜さんは国民的無敵美少女アイドルですから、周りが二人っきりになんてさせてくれませんよ」


「それなら変装して、お忍びならどうでしょう」


 正直、変装しても瑞菜さんの溢れるオーラは隠しきれないような。丸メガネだろうとなんだろうと、どんな衣装も着こなしてしまう。正に無敵の完璧美少女。


「百メートル離れていても、仕草でバレてしまいそうです。遊園地を貸し切りにしないといけませんね」


「益々、遊園地デートがしたくなりました」


「無理を言わないでください」


「なあ、陽くん。二人の時の瑞菜さんって、何時もこうなのか?」


「元気さん。私、変ですか?」


「いや、その、CMとかドラマとか。スッとした大人の女性なのかと・・・」


「陽くんの前では、私は、自分勝手で、わがままな普通の女の子なんです」


「こりゃあ驚いた。陽くんは、国民的無敵美少女アイドルを恋する乙女に戻す魔法を持っているのか」


「元気先輩。何を言い出すんですか」


「わるい、わるい。二人ともお似合いだなって思っただけだ。仙人と女神の組み合わせかー。最強すぎて誰も割って入れんな。


 陽くん!こりゃあ是が非でも瑞菜さんの遊園地デートの夢を実現させないとだな」


「だそうです。西宮陽くん。私を遊園地デートに連れてってください」


「まあ、その前に弥生ちゃんの結婚披露宴だな。『Be Mine』の春夏コレクションの発表会も兼ねているからって、先に行った月ちゃんは、ものすごく張り切っていたし。宮本京社長と森崎弥生ちゃん、あの二人の事だからきっと、尋常じゃないサプライズを用意しているに決まっている。遅れる訳にはいかないな」


「そうですね」


「急ぎましょうか」


 僕は瑞菜さんにもらった腕時計を眺めて、瑞菜さんの手を取って走り出した。元気先輩の声が追いかけてくる。


「おっ、おい。俺を置いていくなよな」

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