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妹のラブレターを代筆したら、無敵美少女アイドルと同居することになった。  作者: 坂井ひいろ
Season2

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76/99

208 投資指数、5000!

矢内真司やない しんじ視点>


 ピーンポーン。


 誰か来た!佐々木瑞菜ささき みずなさんが玄関に向かった。チャンスだ。いちご大福地獄から抜け出す切っ掛けをさぐらなきゃ。これ以上、食べたら本当に死にかねない。ヘレン様のピュアな悪ふざけは笑えない。それに油を注ぐつきさん!こののポンコツさ加減は危険度マックスだ。


「弥生ちゃん!アメリカから帰って来たんだ」


 んっ!西宮陽にしみや よう西宮月にしみや つきちゃんも走り出す。何だか玄関が騒々しい。


「ヤ・ナ・イ!これはどう言う事じゃ。わらわ一人、取り残された脇役ムード満載の状況を説明してくれないか」


 げっ。ヘレン様、顔は笑っているけど目が完全に座っている。出るのか。あれが出るのか。あの恐ろしいあれが・・・。逃げねば。


ヘレン様・・・。違います。ヘレン様が脇役なんて滅相もない・・・。今、連れ戻してまいります」


「ヤナイ!逃げようなんて魂胆じゃないよな」


「そんなことはございません。かりにもヘレン様の『執事』である、この私が主を置いて逃げるなどあろうはずがありません」


「そうか?腰が引けておるぞ」


 くっ。見抜かれている。


「ぐほっ!うぎっ!ぐえっ!」


 はっ。始まった。こうなったら最後、三十分はおさまらない。


「ウンギャー!フンギャー!!ウンガ―!!!」


 天地を揺るがす超高音大音量。共振したワイングラスが音を立てて吹き飛んだ。やばい。ヘレン様の『幼児退行』、通称『地獄の赤ちゃん帰り』!耳の感覚が消え失せ、平衡感覚までおかしくなっていく。吐き気がする。早く脱出しなければ・・・。


「なんだ!何が起きた?」


「リビングで何かが唸っている!」


「鼓膜が破れるー」


 玄関で慌てふためく西宮家の関係者。


「たっ、助けてくれー」


 俺は残った力を何とか振り絞って廊下へ出ようとした。出入り口で西宮陽、西宮月さん、佐々木瑞菜さんともう一人、四人と鉢合わせする。


「誰?ご近所迷惑な!騒音問題は『お隣さん殺人事件』の原因だって知らないの?元、私立修学館高校、生徒会風紀委員長、森崎弥生もりさき やよいが許さないんだから」


「・・・」


 げっ!またもや、いかれキャラ。金髪、サファイアブルーアイ!誰?でも、可愛いじゃないか。


「ウンギャ?・・・?森崎弥生?『Be Mine』の社長?」


 うっそだろー。ヘレン様が泣き止んだ。初めての展開!って、この、何者なんだ?


「ヤナイ!何をしておるのじゃー。そこの巨乳娘を確保するのじゃ」


「はいっ?」


「はっ、早く確保するのじゃ!今、世界で最も金のなる木。『Be Mine』社長。森崎弥生を知らんのか?この通り、わらわの投資センサーがビンビンに反応しておるぞ」


「えっ!」


 頭を示されても。投資センサー?それ、単なるアホ毛でしょ!


「ええーい。あてにならん。こうなったら自らダッシュ!・・・?」


「不思議ちゃん。残念でした!弥生ちゃんは渡さないんだかんなー。ぐふふふ。懐かしや。このポヨヨンな感触。スリ、スリ」


 金髪、サファイアブルーアイの胸に顔を沈める西宮月さん。阻まれるヘレン様。どんな展開なんだ、これ?状況がまるで掴めない。


「投資指数計測開始。わらわの目に狂い無し。森崎弥生、16歳。クールジャパンを牽引する新進気鋭の作家。発想力363、行動力275、変態度519。将来ポテンシャル・・・げげっ。なんと5000越え!一般人の50倍?買いじゃ。爆買いじゃ。うはははは。金がい舞い込むぞー」


 ドテッ!


 信じられない。投資指数、5000!聞いたことがない。過去最高で1500。あの時は50億円を稼ぎだした。今回はいったい、いくら稼げるんだ。


「あのー。矢内真司やない しんじくん。主が口から泡を吹いて倒れてますけど・・・」


 うるさいなー。西宮陽。今、脳内、お取り込み中だ。んっ。何か言ったか?あっ!俺としたことが。興奮してヘレン様のことを忘れるなんて『執事』にあるまじき失態だ。


ヘレン様!お気を確かに」


「気を失った時は往復ビンタに限る。アニメでやっていた」


 すっ、素早い!つきさんの動きは野生動物そのものだ。先が読めない。


 パシ、パシ、パシ!


「おりゃ、おりゃ、おりゃー。起きろー、不思議ちゃん!」


つきちゃん。めなさい」


 佐々木瑞菜さんが月さんの手を取って、めにかかる。スラリとした立ち振る舞い。まさに正統派美少女。大人の色気すらまとっている。


「うほっ。瑞菜様!ボクやり過ぎだった?」


 すごい!あのポンコツ娘をいとも簡単に手なずけるなんて。


「んーん」


 んっ!ヘレン様に反応が・・・。


「大丈夫ですか?ヘレン様」


「あー、良く寝た。あれっ。ヤナイ、ここは何処じゃ・・・。うおっ。森崎弥生!」


ヘレン様、冷静に。森崎様は逃げたりはしません。森崎様、ご紹介が遅れました。こちらは我が主、ヘレン・M・リトルにございます。ヘレン様は森崎様に投資をしたいと申しております」


「投資?」


「左様にございます。ヘレン様、細かい打ち合わせは『執事』であるわたくし、矢内真司にお任せください」


「ヤナイ、任せたぞ」


 うー。投資指数、5000!これを成功させれば、俺は間違いなく『執事』界のプリンスだ。裏の支配者としての実力を存分に発揮して見せるぞ。ふはははは。

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