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妹のラブレターを代筆したら、無敵美少女アイドルと同居することになった。  作者: 坂井ひいろ
Season1

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058 キミ、いったい何をするつもり

森崎弥生もりさき やよい視点>


「さあ、これからどうするつもりか、じっくりと聞かせてもらうわよ」


 宮本京みやもと けい社長はソファーにどっしりと腰をすえた。西宮陽にしみや ようんくと佐々木瑞菜ささき みずなさんが向かいのソファーに座る。私と西宮月にしみや つきちゃん、八重橋元気やえばし げんきさんの三人は直ぐ横のダイニングチェアに腰をかけた。


 西宮家のリビングの空気がピーンと張り詰める。ピリピリ感が半端じゃない。壁掛け時計の秒針が時を刻む音だけが響きわたる。宮本社長!こんな怖い人、初めて見た。ニューハーフでレズビアンと言うだけでない。目だけで人を委縮させる。瑞菜さんが女神ならこの人は魔神。底が見えない。


「僕たち、結婚することに決めました!」


 陽んくがいきなり切り出す。宮本社長はピクリとも動じない。


「そう。残念ね。今の日本では、男子は18歳まで結婚できないわよ」


「知ってます。でも、それは大人が決めたことです。形式や法律なんて意味がありません。心がつながっていれば、それだけで十分です」


「生活はどうするつもり。高校生が親のすねをかじって新婚生活!笑えるわね」


「いえ、高校は自主退学します」


「ちよっと。陽くんまで辞めるつもりなの」


 私は驚いて、つい口をはさんでしまう。先に辞める私にそれを言う資格はないけど。


弥生やよいさん。これからの日本は学歴なんてなんの役にも立たない社会になるんです」


 陽くんは、何時になく真剣だ。瑞菜さんの存在が、陽くんを変えていく。何だかたのもしくもあり寂しくもある。私の力で変えたかった。私も瑞菜さんの存在で変わることができた。彼女は迷える人々を導く女神なのだ。


「・・・?血は争えないわね。彼と同じことを言うとは」


 宮本社長がため息をつく。この社長と渡り合っている陽くんはヘタレの片鱗へんりんさえ感じない。すごい!


「ハッキリと言います。僕は藤原克哉ふじわら かつやに手助けしてもらうつもりはありません」


 何々?藤原克哉って誰?どこかで聞いたことがあるような。私の知らないところで何かが動いている。瑞菜さんの顔が曇ったのを私は見逃さない。


「陽くん・・・」


 瑞菜さんがうつむいてつぶやいた。何かある。私のゴーストがささやく。


「僕は自分の力で瑞菜さんと暮らして見せます」


 陽くん?どうしたの。怒っているの。陽くんらしくない。


「知ってるのね。KFホールディングス 代表取締役社長、藤原克哉が傘下企業の広告塔として瑞菜さんを起用したことを」


「ええ、瑞菜さんから聞きました」


「兄貴。藤原克哉って誰?」


 つきちゃんが陽くんに尋ねた。あっ!あの時の。思い出した。CMの撮影現場に宮本社長といた紳士だ。ファッション界を含む財界の大物。あの人と陽くんが、どんな関係があるって言うの?


「僕の実の父親です」


 うっそ!『KIRA』ブランドを傘下に持つ大企業、KFホールディングスの社長が陽くんの実の親なんて信じられない。とんでもない展開になってきた。宮本社長の目がキラリと光る。


「藤原社長は、今回のことを利用したいと思っているみたいよ」


「そんな事だろうと思いました」


 陽くんは動じない。陽くんじゃないみたい。やっぱり陽くんはかっこいい。


「社長、どう言うことですか」


 瑞菜さんが口をはさむ。彼女の顔は困惑している。宮本社長はニヤリと笑った。


「国民的無敵美少女の心を射とめた天才少年が、KFホールディングスの後継者として現れる。これ以上の話題もカリスマ性も、今の日本にないわ」


「僕は西宮家の長男です。藤原克哉もKFホールディングスも興味はありません」


「兄貴・・・。あんがと・・・」


 つきちゃんが泣き出しそうな顔をしている。元気さんがそっとつきちゃんを支える。元気さんって意外に女心を理解する繊細な人なのかも。


「西宮陽くん。藤原克哉社長はキミの潜在的能力を高くかっているわ。これはキミにとってもチャンスのはずよ。KFホールディングスの次期社長として才能を存分に発揮できるのよ。子供みたいな意地をはってチャンスをみすみす逃すつもり。後悔するわよ」


 宮本社長は陽くんの方にグッと身を乗り出した。


「宮本社長。僕はまだ16歳です。子供ですよ。社長がおっしゃるのは大人の理論です。子供には子供だからできることがあるんです」


「例えば」


「そこにいる森崎弥生さんは『Be Mine』と言う会社の社長です」


 えっ、私。陽くん、なんで私を持ち出すのよ。


「クールジャパンの急先鋒『Be Mine』の社長がこの子?」


 知っているの。私って有名人?なんかちよっと鼻が高い。


「これからは僕たちの時代です。大人が作り上げた今の日本の社会では、もう世界に太刀打ちできないんです。大企業も巨大テレビ局も必要なくなります。タレント事務所も」


 陽くん!何を言い出すの。後に引けなくなっても知らないから。ほら、宮本社長の顔が・・・、怖い。


「西宮陽くん。キミ、いったい何をするつもり」

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