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妹のラブレターを代筆したら、無敵美少女アイドルと同居することになった。  作者: 坂井ひいろ
Season1

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44/99

044 後、十分だけ。このままで

西宮陽にしみや よう視点>


 小鳥のさえずりに急かされるようにして、僕は目覚めた。朝の気だるい光が、カーテン越しに差し込んできている。ベッドの上で意識がまどろみを求める。寝直そうとした瞬間だった。


「うわっ!」


 横を向いた僕の十センチほど目の前に国民的無敵美少女アイドル、佐々木瑞菜ささき みずなさんの無防備な寝顔があった。長いまつげ、筋の通った鼻、小さな唇。静かに呼吸を続ける彼女の顔を見つめる。起きている時の凛とした印象とは違って、どこか幼さを感じる。


「陽くん。ずーっと一緒です・・・」


 瑞菜さんが僕にしがみついてきた。瑞菜さんは目を閉じたまま、ゆっくりと胸を上下させながら呼吸を続けている。パジャマの上から彼女の体温が伝わってくる。


「瑞菜さん?・・・。なんだ、寝言か」


 びっくりした。寝起きには良くない刺激だ。あれ、やばい!動けない。どうしょう。彼女の顔がほんの数センチ先へと近づいている。僕がほんの少し動いたら、お互いの唇が触れてしまうくらいに。人間抱き枕状態だ。僕は彼女を起こさないように固まるしかなかった。


 昨日の晩は彼女の横でラブレターを十回以上読まされることになった。読むたびに彼女がダメ出しをしてくる。


「速すぎます。もう少しゆっくり」


「そこは強弱をつけて感情を表してください」


「最後の一言はタメを入れて」


 と言った具合だ。まるでドラマの撮影みたいだとこぼすと「陽くんの弱点を見つけました」と笑われた。目の前にいる女性に向かってラブレターを読み上げることが、こんなに恥ずかしいとは知らなかった。まあ、口に出して言えないから手紙にしたためるのがラブレターなんだけど。


 で、結局OKが出たのか分からない内に彼女は眠りについていた。添い寝をしたのは僕の方だった。そうは言っても、国民的無敵美少女アイドルの寝顔を見つめながら眠りにつけるなんて贅沢を体験できる人なんてそうはいない。僕は数センチ先の彼女の長いまつ毛を見つめながらそう思った。


ジリリリリリン。ジリリリリリン。


 目覚まし時計が突然鳴り出した。心臓がギュッとなった。アラームを切るのを忘れていた。


「よっ、陽くん?」


 僕に抱き着いたまま、瑞菜さんが目覚めた。みるみるほおも耳も赤くなっていく。それでも離れようとしない。そんな様子がまた、たまらなく愛おしてかわいい。


「起こしちゃいましたね」


「はい。朝のキスをしてください」


 瑞菜さんはあごを少し上げ、僕に唇を差し出してから瞳を閉じた。


「それはできません」


「いつになったらしてくれますか」


「僕が、国民的無敵美少女アイドルの佐々木瑞菜さんに見合う男になったらですかね」


「なれますか?」


「もちろんです。本気の僕を甘く見ないでください」


「頼もしいですね」


「えぇ。そろそろ起きます。朝食の支度をしないと。今日の朝ご飯は炊き立ての白ご飯に、アサリの味噌汁。焼き鮭とだし巻き卵でどうですか」


「美味しそうです。でも、後、十分だけ。このままでいさせてください」


 瑞菜さんは目を閉じたまま、腕に力を込めて僕の体を引き寄せた。

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