表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妹のラブレターを代筆したら、無敵美少女アイドルと同居することになった。  作者: 坂井ひいろ
Season1

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/99

040 つい見とれてしまいました

西宮陽にしみや よう視点>


 玄関を開けたら佐々木瑞菜ささき みずなさんが立っていた。彼女と同居して、もう二ヶ月が過ぎたと言うのに、未だに慣れない。どんな美人でも一緒に過ごせば慣れてしまうと言う人もいるけど、きっとそれは間違っている。いつまで経っても、僕は彼女の完璧さにフリーズしてしまう。


「今晩は二人きりです!まったりしましょう」


「・・・」


 困った。答えることができない。国民的無敵美少女アイドルを前にして『二人きりです!』と挑発されたらどうします?気安く触れたら僕の心臓は止まってしまうかもしれない。その彼女が顔を赤らめながら言ったんだ。


「それともお風呂が先ですか?そろそろお湯が沸いたころです。汗かいたでしょ。背中でも流しましょうか」


「瑞菜さん。冗談が過ぎます。僕を殺すつもりですか」


 僕には正直にかわすことしかできない。キッチンからアップルパイの甘い香りが漂ってきている。『美味しい料理は人を幸せにする』と言うのが僕の口癖。でも、彼女のアップルパイは僕を天国へといざなうのだ。僕はゆっくりと深呼吸して心を落ち着けた。


「アップルパイをいただきます」


「はい」


 僕は、嬉しそうに前を行く瑞菜さんに続いてリビングへと向かった。瑞菜さんの長い黒髪が左右に揺れている。ただ、それだけなのに見惚れてしまう。後姿だけでも人を引き付けるアイドル。それが、佐々木瑞菜さんなのだ。


「どうぞ」


 リビングテーブルに置かれたアップルパイ。添えられたアールグレーの紅茶の香りが心をなごます。僕は紅茶をひとくち口に含んだ。豊かな香りが鼻を抜けていく。激しく打ち付けていた心臓の鼓動がようやく収まる。


 フォークを手に取って、アップルパイをひとかけら切り取る。口へと運ぶ様子を不安そうな表情で見詰める瑞菜さん。輝く瞳に吸い込まれそうだ。


「美味しいです」


「よかった」


 一瞬にして咲き誇った笑顔。奇跡の瞬間。


「一緒に食べよう」


「はい」


 今度はアップルパイを食べている瑞菜さんの姿を、僕が見つめる番だ。白くてスラリとした指が、フォークを器用に操ってパイを切り取り口へと運ぶ。小さな唇から整然と並んだ白い歯が覗く。パイを嚙む姿、パイを飲み込む姿。細い首元。彼女の動作はどれをとっても女神の様だ。


「そんなに見つめないでください。手が止まっていますよ」


「つい見惚れてしまいました」


「幸せですね」


「あっ。うん」


 瑞菜さんのやわらかな笑み。向かい合って見つめ合う二人。僕たちに言葉は要らなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ