039 今晩は二人きりなのです!
<佐々木瑞菜視点>
西宮陽くんと妹の西宮月ちゃんと暮らし始めて二ヶ月が過ぎようとしています。時間が経つのはあっという間です。中学一年生から芸能界に入り、上京して四年。ようやく私にも落ち着ける場所ができました。
それにしても陽くんの幼なじみ、森崎弥生さんの変貌ぶりには驚かされます。真面目で頑固者、で、ちょっぴりひねくれ者。弥生さんは栗色の髪にサファイアブルーの瞳を持つ美少女。その上、コスプレをベースにした衣装作りのセンスはピカイチと言う隠れた才能を持っています。
今、弥生さんはその才能を活かして高校生社長になりました。あの、チョー堅物真面目女子、名門修学館高校の生徒会風紀委員長の弥生さんがですよ。弥生さんが弾けたのは、体育祭での陽くんの活躍を見たせいです。私も陽くんの活躍ぶりには興奮しました。影響しあえる仲間がいるのは、とても素晴らしいことです。
そんなことを考えながら、私は西宮家のリビングで陽くんの帰りを待っています。今日は午後から珍しく仕事がオフだったからです。明日は土曜日。月ちゃんは弥生を手伝うと言って、泊まり込みの荷物を持って出かけていきました。
そう、そうなんです!今晩は陽くんと初めて二人っきりなんです。ちょっと、いいえ、かなり。ドキドキなんです。私はいつも陽くんがしている黒いエプロンを身に着けて、彼の帰りを待ちます。西宮家のオーブンの中にはアップルパイ。自分で言うのもなんですが、初めてにしてはかなり上手にできました。
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン!
玄関の呼び鈴が三度たて続けに鳴りました。もうおなじみになった、陽くんが帰ってきた合図です。私はスリッパをパタパタさせながら急いで玄関に向かいます。ふふっ。若奥様みたいでしょ!顔がにやけてしまうのが抑えられません。
ガチャリ。
玄関のドアが開きます。どうしよう。どんな顔でお迎えしましょうか。私はにやけ顔を天使の笑みに切り替えます。
「お帰りなさい!」
「たっ、ただいま・・・」
驚いた陽くんは玄関で棒立ちになりました。かわいい。いつもは私が『ただいま』で陽くんが『お帰りなさい』です。でも、今日は違います。
「お帰りなさい。陽くん」
私はもう一度声をかけて、陽くんの学生カバンに手を伸ばしました。ふふっ。新婚さんみたいです。彼は素直にカバンを預けてくれました。陽くんのスリッパを並べて差し出します。
「アップルパイを焼いて待ってました。二人で食べましょう」
「美味しそうな匂いですね。月は?まだ、帰ってきていないのですか」
「月ちゃんは弥生ちゃんの所に、泊まり込みでお手伝いに行きました」
「えっ」
陽くん、またまた固まっちゃいました。もう私の心臓も爆発しそうです。でも、思い切って言います。
「今晩は二人きりです!まったりしましょう」
「・・・」
陽くん、ウブだから本当に意地悪したくなります。でも私の顔も熱いです。それでも頑張ります!
「それともお風呂が先ですか?そろそろお湯が沸いたころです。汗かいたでしょ。背中でも流しましょうか」
恥ずかしいです。私、溶けてしまいそうです。




