031 私の親友に手を出さないでください
<西宮月視点>
月、西宮月は美しい女性を見ると、どうしても飛びつきたくなってしまう。まあ、母性本能をくすぐる容姿の月だから許される特権。宝塚の男役のように背が高くてシュっとした大人の女性も素敵なのね。
「社長様ーっ!」
スリ、スリ。
「ん?」
クン、クン。おにょ!・・・?この香りは。もしかして。
「男の人?」
「良くわかったわね。ボクちゃん。私はニューハーフよ!」
事務所の社長こと宮本京は見上げる月のほっぺを両手ではさんだ。涼しい瞳で月を見つめる。
「その上、レズビアンなのよ。業界では有名な」
隠すどころか自慢顔だ。ニューハーフのレズビアン?ど、ゆこと。男が女で、女の子が好き?ややこしい。それって、つまり男性が女性を好きってことで、ある意味、正常ってこと!でも、見た目は妖艶な女性?大人の世界は複雑だ。さすが、芸能界。想像を遥かに超えた人種がいる。
「ボクちゃん、可愛いけど。でも、残念ね。ロリコンの趣味だけはないのよ。ポイッ!」
ポ、ポイッって、この月が捨てられた。そんな!そんなバカな。月は床に崩れるようにして、恨めしそうに瞳をうるうるさせてみせたが見向きもされない。んがー。
「それより、青い目の彼女。貴方の瞳は神秘的だわ!」
宮本京社長は森崎弥生に歩み寄る。
「は、はい?」
宮本京社長は森崎弥生のあごの下に手を差し入れて、クイッと上を向かせた。二人が見つめ合う格好になる。おー。見た目、百合の世界!でも相手はニューハーフでレズビアン。ややこしいぞ!
「きれいだわ。生まれつきなのね。こんなサファイアブルーの瞳は見たことないわ。それに、栗色の髪の毛ととてもお似合いね。日本人なの?」
「お爺ちゃんがフランス人で、その、クォーターです」
「目力だけで男の子も女の子もとりこにできるでしょ。貴方、グラビアアイドルにならない。売れるわょ。私が保証するわ」
宮本京社長に見つめられて、森崎弥生の白い肌がピンク色に上気していく。やっぱり、かわいい。弥生ちゃん!
「だっ、ダメです。私は私立修学館高校、生徒会風紀委員長です。グラビアなんてハレンチな仕事はできません」
弥生ちゃん。そんなに激しく首を左右に振ると、バストがプルルンって!説得力がないぞー。
森崎弥生は佐々木瑞菜に助けを求める目を向けた。
「社長!冷静になてください。私の親友に手を出さないでください」
佐々木瑞菜は挑みかかるようなキリッとした瞳を宮本京社長に向けて言った。
「こんな逸材には滅多にお目にかかれないから興奮したわ。考えといてね」
「楽しそうだけど。私は、そろそろ仕事に戻らないといけない」
宮本京社長の横にたたずむダンディな紳士が、一目で高級とわかる腕時計を示して告げた。
「そうね。藤原社長、失礼しました。行きましょうか。マネージャー、後は頼んだわよ」
オドオドするマネージャーを残して、事務所の宮本京社長と藤原社長はスタジオを後にした。




