019 美少女のご褒美って
<西宮陽視点>
あれから一週間が過ぎた。佐々木瑞菜さんのスケジュールは正に分刻みの忙しさだ。毎日、どこかのテレビに登場し、新刊雑誌の表紙をかざる。駅の広告ポスターから商店街のBGMまで。街中が彼女であふれている。
不思議な感じた。今、僕の目の前で瑞菜さんと妹の西宮月、幼なじみの森崎弥生がふざけ合っている。まるで当たり前かのように、瑞菜さんが我が家に馴染んでいる。女の子が三人揃うと賑やかさが半端じゃない。
瑞菜さんと森崎さんのバトルが勃発するのかと思いきや、二人ともまるで昔からの親友のように仲がいい。宣戦布告はどうなったのだろう。これだから女子の気持ちってわからない。僕が女の子と話すのが苦手な理由の一つだ。
僕はリビングでじゃれ合う三人を見守りながら、コーヒーを片手にソファーでくつろいでいた。
「ねえねえ、いいもの見せたげようか」
そ、それは。思わずコーヒーをこぼしそうになった。
「えへへへへ。見たいでしょ!兄貴のプライベートアルバム」
妹の月が得意そうにリビングテーブルの上にアルバムを置いた。小さい頃の写真を見られるのはかなり恥ずかしい。自分でも存在を忘れていたほどだ。
「ばっ。バカ。何を持ってきているんだ」
「いいじゃない。減るもんじゃあるまし」
「月ちゃん。やるじゃん」
「うっわー。私も写っているかな」
佐々木瑞菜と森崎弥生のテンションが上がりまくっている。止めたところで聞かないだろう。そもそも他人のアルバムなんて、そんなに楽しいものではない。僕は早々に止めるのをあきらめた。
「じゃあお二人さん。んーん」
「なに?」
「えっ?」
妹の月がアルバムに顔を寄せてきた二人の間に顔を突き出した。
「何ってご褒美に決まっているじゃない。美少女のご褒美っていったらチューに決まっているでしょ。でなきゃ見せてあげない」
ぶふぇ。
「兄貴、コーヒー吹き出してんじゃねーよ。ほんと、どんくさいんですけど」
「しっ、知るか。二人に失礼だろ」
「別にいいけど」
「うん。月ちゃんかわいいし」
妹の両方のほっぺをはさむように両側から二人がキスをした。真ん中が小動物のような妹、右が女神のような佐々木瑞菜、左が妖精のような森崎弥生。生々しくも神秘的な光景が僕の脳裏に刻まれた。やばい。完全にのまれている。




