017 お姉ちゃんって気持ちいい
<森崎弥生視点>
美味しいとは噂に聞いていたが、西宮陽くんの料理の腕前がここまでとは。ファミレスはおろか、そのへんのレストランのシェフだって脱帽する。これでは一生、陽くんにお弁当なんて作れない。
「ごちそうさまです」
くっ。悔しいけどさすが国民的無敵美少女アイドル、佐々木瑞菜。ナイフとフォークの使い方に慣れている。きっと毎日、贅沢な料理をこれでもかと食べ続けているに違いない。お皿の周りがあんなにきれいなんて、私と月ちゃんへの当てつけだわ。
「私もごちそうさま。陽くんの手料理、本当に美味しかった」
「喜んでもらえてなによりです」
陽の笑顔って物静かで心地いいな。
「ごめんなさい。テーブルの上をこんなに汚して。こんどテーブルマナーの特訓をしなきゃ」
白いテーブルクロスに、こぼれたスープや肉汁がシミを作っている。私はそのシミを見つめてから上目遣いで恥ずかしそうに言った。もちろん、その角度が私を一番かわいく見せることを知っての上だ。プラス庶民押しで、金のかからない家庭的な女の子をさりげなくアピールした。
「兄貴、デザートがまだだよ」
・・・。妹の西宮月、この娘が西宮家のキャスティング・ボードなのは事前に調査済み。もちろん、彼女が金松堂のいちご大福に目がないことも。彼氏の家族とうまくいかない恋は長続きしないから。
「月ちゃん。後でお土産のいちご大福食べよ。あっ、ソースが口についてる」
横にいることをいいことに、私はハンカチを取り出して彼女の口の周りをひと拭きした。
「うぅーん。お姉ちゃんやさしい」
うまい具合に抱き着いてきたので胸の中に顔を埋め、頭に手を乗せて優しくなでる。ふふっ。やっぱりすりすりしている。お子様を手なずけるなんて簡単。お母さんと離ればなれならなおさらでしょ。
「月ちゃんったら。恥ずかしいですよ」
ほらほら。無敵美少女が動揺しだした。佐々木瑞菜、あなたは完璧すぎなのよ。異次元すぎるのよ。男の子は、最後には側にいてホッとする女子を求めるものなの。私にだってまだ勝機はある。
うっひっひ。
「・・・?月ちゃん。なにか言った」
「ううん。なんにも。弥生お姉ちゃんって気持ちいい」
「月ちゃん。涎、出てない?もう、昨日も私を見て発情してたでしょ」
「ばっ、ばれたか。瑞菜様も弥生お姉ちゃんもかわいいんだもの」
えっ!この私が西宮月にもてあそばれている?私立修学館高校、次期生徒会長と噂されるこの私が。




