016 いちご大福、食べてもいいかな
<西宮月視点>
西宮家のリビングテーブルに四人が座っている。もうかれこれ10分以上は沈黙が続いている。目の前には、それぞれ金松堂のいちご大福が置かれている。
うぉー。何と言う気まずい雰囲気!月が毎週欠かさず見ているテレビ番組「浮気現場を直撃!」のお話合いタイムのようだ。兄貴、男だろ。なんか言え!って、言ってもこの場面では男のほとんどが沈黙するのがパターン。
「・・・」
やはりヘタレ兄貴。世間の男どもと変わらない。で、話を切り出すのが元カノ。でも矛先は彼氏じゃない!えへ。
「どうして佐々木瑞菜さんがここにいるのですか?ロケは終わったはずではありませんか?」
おおっと、森崎弥生、予想通りの先制パンチ!西洋ドールのすまし顔がかっちょいい。
「西宮陽くんが私の彼氏だからです!」
うわ!真正面から受け止めた。無敵美少女、佐々木瑞菜。余裕の天使スマイルだー。
「あ、あれは番組の中での話でしょ。一般人を惑わすのはいかがなものかと思います」
くー。おしっこちびりそうー。氷のスマイル返しだー。弥生おねえちゃんも負けてない。
「私は保育園の時から西宮くんのことを見てきたわ。失礼ですけど佐々木さんは昨日会ったばかりですよね」
弥生先輩の連続攻撃だ!金松堂のいちご大福、食べてもいいかな。
「はい。でも昨晩は一緒に過ごしました」
ひぇー。無敵のメガトン爆弾炸裂!金松堂のいちご大福、食べちゃダメだよね。
「えっ!」
なっ、なんでここで月を見る。弥生先輩の視線が痛い。大福どころじゃない。どうする西宮月。
「いえ、そのー。月も一緒にいました」
佐々木瑞菜の口角がクイッて上がった。美人の不敵な笑みってしびれるー。もう、いちご大福は後回しだ。
「私、陽くんと同棲することになりました」
無敵美少女の追い打ちをかけるような容赦のない第二次攻撃!
「えっー!」
今度は二人で月を見るわけ?
「いゃ、その。そう、最近流行のシェアハウスと言うやつでして。ほら、お家がこの通り広いわけで。それにアイドルの一人暮らしは危険と言うか」
「森崎さんは何をしにいらしたの」
「そっ、それは。私立修学館高校の生徒会風紀委員長として、陽くんが下品なバラエティ番組に出たのを注意しに来たわけで」
・・・。さりげなく『西宮くん』から『陽くん』に変わっている。
「それに、ほら、ほっとけないでしょ。幼なじみなんだもの。ねぇ、陽ちゃん」
・・・。今度は『幼なじみ』に加え『陽ちゃん』に。じんわりと親密度をアピールする作戦に出たか。かわいい顔して西洋ドール、おぬし、ただものではないな。どうする兄貴。
今度は二人が兄貴の顔を見つめる。
「まあまあ、お腹が空くとイライラするから。そろそろ夕飯の支度をしないと。料理はたくさん作るほどおいしくなるんだ。森崎さんも食べていきなよ。料理には自信があるんだ」
あ、兄貴・・・。なにトンチンカンなことを。いや、意外にいいかも。のった。
「そうだね。月、お腹空いた。みんなで兄貴の手料理を食べようよ。『美味しい料理は人を幸せにする』んだったよね。兄貴!」
「ふふっ。陽くんの手料理!」
「そうね。いただくわ」




