灰燼にする者
「力でくるなら圧倒します。策を弄するなら燃やします。立ち尽くすなら灰にします。全てを灰燼にするのが私の役割です。」
燃え盛る体。触れている地面が温度によって結晶化していく。
「熱っ…。いるだけで周りに影響を。流石に帝だな。」
創士がそう溢す。木暮から迸る熱波は3人のもとにも届いていた。
「こっから本番って訳ね。『火拳』」
「上等じゃねーか。『風纏螺旋槍』」
「…先ずは1人…『炎天火』。」
木暮が右手を剣の方に向ける。
『ゴォォォォォオ…』
剣の上空から炎の柱が降り注ぐ。
「な⁉︎くそが!。…くっ…くぅ…」
咄嗟に風纏螺旋槍を上に指し上げ相殺しようとする剣。しかし炎の勢いはおさまらない。
「剣!。くそ!。俺が…」
その様子を見て重が木暮に向かって駆け出す。剣に魔法を使用している隙に攻撃を仕掛けるためである。
「(ただの魔法は効かない。集中…火拳に込める。)…L2『火炎』×100。」
重の右手。火拳の炎は大きさと密度を増しあたりの空気を焦がしながら木暮に襲いかかる。
「…本当の焔を知らないのですね。『蒼炎』。」
木暮の体から蒼い炎が放たれる。その蒼炎は重の拳とぶつかる。
「…ウソ…届いてない。」
重は木暮に触れることすら出来ずに止まっていた。どれだけ力を込めようとも魔力を込めようとも一歩も前に進めない。
「1人目です。『円点火』」
木暮が左手を差し出す。差し出された左手の人差し指の先。小さな炎の球が発生する。
「…ッゾッッ…⁉︎」
重の体に悪寒が走る。木暮が使った魔法の危険さを感じ取ったのだ。しかし動くことができない。魔法に魅入られていた。自身の脱落を覚悟するが衝撃はこない。
「ぐわぁぁぁぁあ‼︎」
後ろにいた剣の叫び声が聞こえる。剣には五本の炎の棒が刺さっていた。
『ゴォォォォォオ』
それによって体制を崩し炎天火にも焼かれる。あたりに煙が立ち込める。
「……ぅ……かはっ…。」
白煙が晴れた時剣は倒れていた。
「これで1人。あとは…」
木暮が倒れた剣を見ながら言うがその途中で言葉を止める。
『ザシュ!ザザシュ‼︎』
地面から刃が現れ木暮に斬りかかる。
「…いないと思っていましたがそんなところにいたのですか。後輩を見捨てて奇襲とは…ある意味清々しいですね。『火翼』。」
木暮の背中から炎で出来た翼が生える。上昇気流を起こし木暮は空に飛び上がる。それによって創士の斬撃を回避した。
「俺は戦いに卑怯はないと思っています。何がなんでも勝たなければないない時は必ずある。その信念に基づいて行動しています。」
創士が地面の中から現れ木暮に向かって言う。
「なるほど…中々に合理的です。ですが…それすらも届かない。『火帝の翼撃』。」
木暮の翼から羽の様な物が舞い落ちる。不規則に揺れるそれはまるで雪の様であった。
「…八神重。少し離れていろ。まだ俺自身どうなるかわからんぞ。」
創士が重に忠告をする。それは自分一人で木暮と戦うという意思表示だった。
「1人ではどうにもなりま…」
「L6『神※※※※』。『守らずの型』。来い、狩刺刈刃」
創士の鎧がひび割れ落ちる。それと同時に狩刺刈刃を錬成し木暮に飛びかかる。木暮のだした炎の羽は創士に触れる直前燃えて無くなってしまう。
「…速い…ですが『蒼炎』。」
木暮も蒼い炎を身に纏い迎撃の構えを取る。
『ギンッ‼︎ガガガガッ…』
帝とlevel6。2つの魔法がぶつかり均衡する。
「…その魔法、level6ですね。まさか使用者がこんな所にいるとは…。」
創士の魔法を見ながら言う木暮。
「つい最近発現したんですよ。だから加減はできません!。」
創士が大鎌を振りかぶり蒼炎を斬り裂こうとする。
「…やれやれ甘く見ないでください。まだ完全に発現していないlevel6で、私に勝てると?。『蒼炎龍』。」
木暮が纏っていた蒼炎が龍の形をとる。長い身体を木暮に巻きつけ佇む姿は神々しささえ感じられる。
「『龍撃』…塵になれ。」
蒼い龍が一直線に創士に突っ込んでいく。
「な⁉︎…ぐっ…うっ、うぁぁぁぉ」
創士を捉えた蒼い龍はそのまま地面に着弾し爆発する。龍の身体全てが地面に触れ爆発が終わった時完全に気を失った創士の姿だけがそこにあった。
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「会長‼︎。」
真利谷の叫び声が響く。創士が地面に叩きつけられ気絶しているのが見える。
「おうおう、雅の奴、蒼炎龍まで使ったのか。あれは人を塵にするぞ。一発で気絶だろうな。」
如月が戦いを見ながら言う。
「まぁあいつにそこまでさせたことを誇れよ。それにしても…あの感じlevel6か?。」
「…はい、そうです。会長は先日level6が発現しました。」
「ほぅ、だがまだまだだな。全然使えていない。一文字といったところか。あいつに言っておいてくれ。しばらく目は覚めんだろうからな。完全に使えるようになったたら…俺のところに来い。相手をしてやると。」
「さて、残りは八神重だけか。戦力差は圧倒的。どうする?。」




