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紅蓮の使徒

「さて、それでは始めましょうか?。どうします、1人ずつかそれとも…3人同時でも良いですよ。」

 日が変わり重、剣、創士の前に木暮が立つ。昨日の約束通り3人と対戦することになった。その対戦形式を決めるにあたって木暮が3人に問いかける。


「3人同時…。良いのか?。俺らはあんたは倒してそこの国家魔導師を引きずり出したいんだぜ?。その為なら手段は選ばねーぞ。」

 木暮の言葉に剣が微かな苛立ちを覚えながら言う。言葉の通り国家魔導師である如月をこの場に出し戦ってみたい気持ちはある。しかしそれでも3人同時と言われたことにプライドを刺激されないはずはない。


「言うは易し行うは難し。物事を言うには何事も力無くては。実力なき者の言葉それはただの空気の振動となり消えていく。あなた方が彼を引きずり出すことはありません。『紅蓮の使徒』木暮雅が打ち倒しましょう。」

 木暮が二つ名を名乗り構える。それは暗に3人でもなんでもいいから、掛かって来いといっていた。


「くそが…L4『風斬りの大剣』。」


「あ、おい剣!。」

 重の忠告も聞かず飛び出す剣。


「仕方ない、まぁ俺も侮られているのは嫌だしな。俺も出る。L4『斬岩剣』。」

 その剣を見て即座に止めることは無理だと判断し同時攻撃を仕掛ける創士。2人の剣が木暮に迫る。


「…侮っているのはどちらですか?。」

 瞬間凄まじい殺気を放つ。


「な⁉︎…(やばい…このままいけば何か分からないが…くる!)。」


「くぅ…」

 剣、そして創士が一瞬の殺気に体を固くする。そのわずかな隙を見逃す木暮ではない。


「早いですが…2人脱落ですね。L5…」

 木暮が2人に両の掌を向ける。そこから凄まじい熱量が発生、放たれようとしていた。


『ドドドドッ‼︎』

 そんな木暮に無数の火玉が降り注ぐ。


「これは…」

 火の玉の中平然と立ちながらその出先を探る。重の放った蛍火は木暮の体を穿つが木暮の顔に焦りはない。


「…っは!。助かったぞ、重。」

 その間に剣、創士が下がる。


「命拾いしましたね。そこの彼に感謝すべきですね。」

 炎に包まれた木暮が姿をあらわす。


「真利谷の言った通り…やはり自己変化型か。それも…火。燃え盛るその体は触れるものを燃やし更に周りの炎を力に変える。」

 創士が木暮を見ながら言う。


「解説ありがとうございます。さて…それでは殲滅を始めましょうか。L5『星華火』。」

 木暮が先ほど中断した魔法を放つ。その両の掌から光球が放たれる。その光球は渦を巻きながら3人に向かって突き進む。


「あれは⁉︎。見たことないぞ。」


「火の自己変化…ん?んん⁉︎。あの俺火属性しか使えない…」


「あれは火属性のLevel5『星華火』。気をつけろよ…あれは厄介だ。」

 木暮から放たれた星華火。回転が止まると突如弾ける。


『バンッ‼︎ババンッ‼︎ババババ…』

 1つから2つ。2つから4つ。その数を倍々に増やしていきいつしか目前全てが星華火で覆われていた。


「数が⁉︎くそが。L4『土門』。」

 剣が土の壁を張り防御の体制をとる。しかしその土の壁に星華火は当たらない。


「火祭剣、八神重、星華火は放った後増えて操れる。その対策は斬ることだ。潰していくしかない。数自体は込めた魔力に依存する。この感じだともう打ち止めだろ…っ…だから!自分でなんとか…しろ!。」

 創士が襲いかかってくる星華火を斬り捨てながら重と剣に助言をする。しかし途中で背後からの直撃を受けてしまう。


「そんな余裕をかましてられるんですか?。」

 木暮が自ら前に躍り出る。星華火を操りながらの接近戦を仕掛けてくる。


「L2『火炎』×100。『火拳』。」

 重は火拳を発動し木暮の迎撃に向かう。


「火属性しか使えないそうですね。そのあなたが私に何の用ですか?。」

 当然木暮が操作する星華火が重に殺到。物量で圧倒しようとする。


『ドドドドッ‼︎』


「…はぁはぁ…まだだ。まだ届く。密度をあげろ。濃く…強く。」

 重はその燃える拳で星華火を殴りつけていた。拳が触れた途端爆発が起こる。爆発威力に火拳の魔力の密度で対抗していたのだ。


「くそ…すぐに解ける。…っ『火拳』!。」

 その代償として火拳は打ち消されてしまう。その度に火拳を纏い直す重。


「私の魔法を殴って消しますか。その魔法興味深いですね。ですがっ、……ぐふっ…なるほど…」

 木暮の胸から二筋の直線が生える。風を纏った槍と、燃え盛る剣。


「…あんたを侮るわけないだろ。」


「初めから1人でやる気はなかったです。貴女は強い。なので策を弄しました。」

 風纏螺旋槍を構える剣と鎧を纏った創士。昨夜の段階から木暮の強さを予想し、対策を練っていた。強い魔導師は得てして自分が見たことのない魔法に興味を惹かれる。なので重が木暮の気を引き剣と創士が背後からの渾身の一撃を放ったのだ。しかしその一撃も炎に包まれる。


「…ふぅ、それで?ここからどうしますか?。『火帝』。」

 全てを焼き尽くす帝が顕現した。


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