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創士と若草 1

「さぁ、お前の心の入った戦いを俺に見せてみろ。『超絶技巧』と謳われる実力を。」

 創士が若草に向かって言い放つ。


「…心の入った戦いですか。確かに僕は戦いに心を込めない。しかしそれには意味も有るんですよ。L4『風舞の珠』。」

 若草が唱えると空中に小さな風の球が現れる。小さな風の玉は徐々に回転速度をあげながら大きさを増していく。


「それが風舞の珠か。信じられないことだがお前のオリジナルの魔法。学生が魔法を作り出すとはな。…そして…後二つ出るんだろ?。だがそれを俺が許すと思うか?。L4『斬岩剣』、L4『針撃盾』。」

 片手剣スタイルで若草に斬りかかる創士。大きく振りかぶった右手には既に籠手が装着されていた。それによって剣が炎を帯びる。


「…L4『炎焼糸』。物事を客観的視点で見る。それが僕の強みであると思ってます。それを見せましょう。」

 若草が両の手のひらを合わせる。そしてそれを離すとその間に炎を糸が張られていた。


『ヒュン‼︎。』

 そして若草の手の動きに合わせ糸が創士に向かう。


『シュルシュル…!…ジュッ!。』

 創士の剣に絡みつき動きを拘束する。


「こっちからいきますよ。」

 その様子を見て若草が飛び出す。


「ちっ、この拘束力、魔力の集中か。たかが糸と思ったが迂闊だったか。だが…」

 創士が剣を地面に突き刺し捨てる。そして盾を右手に持ち替え若草に突っ込む。


「な⁉︎。(恐ろしい状況判断…これが経験か。)それに…糸が。」

 突っ込んでくる創士に対し糸が剣に絡まったまま固定されている若草は空中で動きがとれない。


「この盾は突撃を想定している。このままいかせてもらうぞ。」

 炎の灯った盾を前面に押し出し突撃を加えようとする創士。その攻撃が若草を捉えたと思われた矢先創士の体を風の奔流が襲う。


「くっ、これは…くそ。」

 そして押し戻される創士。その風は若草が遅延魔法で発動したものだった。


「L3『大豪炎』。」

 若草の指先から熱線が創士に向かい放たれる。


「ち、態勢が…受けるしかない。」

 盾を構え大豪炎を受ける創士。盾は大豪炎と相殺し消滅してしまう。


「…やはりお前は一筋縄ではいかんな。常に何か隠している。こちらから攻めにくい立ち回りだ。中々に厄介だ。」


「僕はそういう戦い方ですからね。おっと…回収します。」

 空中で勢いを増し続けた風舞の珠に右手をかざす若草。すると、それは体に取り込まれてしまう。


「ふぅ、L4『火焔の珠』。」

 風舞の珠同様空中に撃ち出された燃え盛る球。


「あと一つか。だがこちらも整ってきたぞ。L4『紅蓮の双牙』。」

 ふた振りの小刀を構える創士。左手にも籠手が装備され、足にも鎧が纏われている。


「その姿は…もうほとんど完全体ですね。…となると…僕はこうしますよ。」

 途端若草の姿が消える。


「…っ!おそらく遅延。それで何をしたかだが…。…!。」

 そう考察する創士。ふと下を見ると影が見える。それに気づき上を見る。


「流石です、まさか気づくとは。ですが…L4『紅炎』。」

 上空から若草が魔法を放つ。両の掌から放たれたその魔法は渦を巻きながら創士に襲いかかる。


『ゴォォォォオォォ』

 地面に直撃し大量の土煙をあげる。


「…っと。…」

 地面に着地し直撃した地点を観察する若草。煙が晴れたときそこには何もなかった。


『ガガガガガガッ‼︎』

 若草の足元を割るように創士が飛び出してくる。その両手の刀を振りかざし若草に斬りかかる。


「くっ、まだだ。」

 その姿を視認した若草は咄嗟に遅延魔法を発動。突如燃え盛る爆炎が現れ2人を飲み込む。


「な、…自分ごとか。」

 刀を体の前でクロスし爆風から身を守る創士。しかし若草とは距離ができてしまう。


「熱つ…ギリギリですね。」

 若草も態勢を取り直し創士に向き直る。


「…あなたの足の装備の能力は地中での移動を可能にすることですね。」

 若草が創士に尋ねる。あのタイミングでの奇襲を躱された。その経緯としてそれ以外が考えられなかった。


「そうだ。便利なもんだろ?。そしてこれが…鎧だ。」

 創士が胸に手を当て最後の詠唱をする。


「どうやら俺の方が早かったらしいな。だが俺はお前の魔法の完成を待つほどお人好しじゃないぞ。」

 全身を武装した創士が若草に言った。


 ーーーーーーーーーーーーーーーーー

「大樹さんのあの魔法はなんだ?。」

 重は他の面々と試合を見ていた。そこで創士が使用した魔法。ただ空中にあるだけ。そして回収されてしまう。意図がわからなかったのだ。


「さぁな、俺も見たことがねーな。先輩達ならなんか知ってんじゃないっすか?。」

 そう言い剣が生徒会の方を見る。


「…確かに俺らはあの魔法を知ってる。一回だけ見たことあるわ。前に見たときは若草ブチ切れとったけどな。いつもみたいな詰めとかなくシンプルに力で押しとった。それで強かった。」

 風待が剣の質問に応えるように喋りだす。


「なにせ当時の第五輝を圧倒した魔法やからな。会長もそれを分かってる。今の冷静な状態であの魔法を使われたらヤバイってな。だから速攻で鎧を纏ったんやろ。」


「…大樹君の魔法は今までの魔法の概念さえ変えてしまうかもしれない。天才。魔力のコントロールと発想が同居してる。」


「そうですね。彼は紛れもなく天才でしょう。ただ彼が欲しいのは才能ではなく切磋琢磨しあえる仲間だったようですが。」


「お兄は昔からそうだった。自分の為じゃなく、誰がの為に何かをするのが好きな人だったからね。それが今は自分の意志で自分の為に力を使おうとしている。剣君達がお兄に会ってくれて良かった。」

 生徒会の面々から絶賛を受ける若草。普段のイメージとかけ離れすぎて重達はコメントできない。


「…大樹さん本当にすごかったんだ。」

 重のそんな言葉だけが響いた。

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