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澪の心、その強さ

「なるほど…考えましたね。確かにこれなら貴女が凍ることはないでしょう。」

 真利谷が目の前にいる澪に向かって言う。


『パキキ…パリーーン‼︎。」

 澪の周りの空間にヒビが入り砕け散る。しかし澪には何もない。いや、何もなくない。澪の息は乱れていた。


「…はぁはぁ。…体の周りに水の膜を貼りました。凍らされる度に貼り替えます。」

 体の周囲1メートルに球状に水の膜を展開。真利谷の氷の魔力での攻撃を水際で防いでいた。


「…確かに貴女の魔力が切れない限り負けないですね。ですが…それは私が攻めないという前提のもとに成り立っています。はっきり言いましょう。今私は意識的には何もしていない。」

 真利谷が衝撃の発言をする。ただそこにいるだけで周りを圧倒する。自己変化型の手本のようであった。


「…そんな。でも、夢坂君が来てくれれば…」


「…貴女は夢坂君が会長に勝てるとお思いですか?。…残念ながらそれはありません。見た所夢坂君は帝を使いこなせてはいない。習熟度で言えば貴女の方が上でしょう。その貴女より強い私でも会長との戦績は2勝8敗。あの人は…努力の天才です。そしてそんな会長を私は尊敬します。」

 普段の創士に対する態度が嘘のように創士を絶賛する真利谷。その表情は真剣そのものだった。


「いきますよ。『氷柱針』。」

 鋭利な氷の結晶を澪に向けて飛ばす真利谷。


「くっ…『水陣壁』。『水獄』。」

 水の壁で氷柱針をやり過ごし水獄での拘束を試みる澪。しかし、


『バキンッ‼︎。パラパラ…』

 真利谷に触れた途端凍りつき崩れ落ちてしまう。


「効きません。『氷薙刀』。」

 右手を横にあげそこに氷の薙刀を錬成する。その佇まいはは凛として触れれば切れる鋭い刃の様だった。


「つっ…『ザザッ…』『水転掌』。」

 その姿を見て警戒を露わにする澪。両手に水の渦を纏い近接戦に備える。


「その対応は…間違いですね。」


『ビュン‼︎。…パキキキキッ‼︎。』

 真利谷が薙刀を振るう。それに合わせて氷の斬撃が澪に襲いかかる。


「くっ…でも…これなら…『パキン!。パキキン‼︎。』」

 襲いかかる斬撃に対して体を回転させながらいなし続ける澪。しかし、


『ザシュッ‼︎…パキッ。』

 真利谷の薙刀から伸びた氷の切っ先が澪の胸を貫く。


「な⁉︎、くぅ、うあぁぁぁあ‼︎。」

 刃に貫かれたところから凍結しだした体に驚き取り乱す澪。魔力を体に込め抵抗するが魔力が切れ始めているのか徐々に侵食は進んでいく。


「直接干渉すれば私に凍らせれないものはありません。このままでも終わりそうですが…今後に期待を込めて私の全力を魅せましょう。『凍る生命』。」

 真利谷が両手を上半身の前で大きく開く。その言葉に呼応する様に空間に無数の氷の結晶が現れる。


「…まだ終わってない。終わらせない。ぐぅぅあぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎。」

 凍りついた体を無理やり動かし真利谷に向かって突っ込む澪。その手には既に水転掌はなく帝すら切れていた。


「なんだ、その心があるじゃないですか。ならこれからも精進しなさい。心が折れなければ人は強くなり続ける。」

 そして真利谷が手を合わせる。


『パンッ‼︎』

 それはさながら祈りの様であった。氷の結晶が澪に向けて凝縮する。そして大きな氷の塔となり固まる。澪はその中で動きを止めた。


「…ふぅ…少し…疲れましたね。」

 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


「真利谷。まだやっていたのか。君にしては優しいじゃないか。それに凍る生命まで使うなんて。…気に入ったのかい?。」

 そこに夢坂との戦いを終えた創士が現れる。


「そうですね。当初の評価を改めましょう。彼女は強い心を持っていました。…はっ‼︎。」

 創士に澪について話している真利谷が何かに反応する。その視線の先には氷の塔がある。


「じっ………まさかそんなことはないですね。」

 真利谷は気をとりなおして創士に向かう。


「そうだ!若草大樹が提案してきたんだが…」


「その話なら私も聞いています。了承して良いかと思います。」


「分かった。若草大樹には俺から伝えておこう。っとそれよりそろそろ解放してやれよ。」

 創士が氷の塔を指先言う。既に戦いは終わった。だから無駄に氷漬けにする必要はない。


「そうですね。『ぱんっ!。』」

 真利谷が手を合わせる。すると氷の塔は倒壊し澪が投げ出される。


「すぐに保健室に運んでもらいましょう。かなり消耗しているはずです。」

 そう言い真利谷が澪に手を伸ばす。その時、


『ガシッ!。キュインキュイン‼︎』

 意識が無いはずの澪が真利谷の腕に摑みかかる。さらに魔法を発動し澪の腕に周りに水の渦が発生する。


「な、⁉︎…そこまで…閉ざされた氷の中でまで勝つことを…。やはり先ほどの気配は貴女のものだったのですね。その心意気は素晴らしい。」

 そう言うと真利谷は澪の魔法を無効化しダイヤモンドダストに変える。


「先生!。試合はもう終わりです。早く彼女を保健室へ。いえ、私が付き添いましょう。」

 そう言い真利谷は澪を担いで保健室へ向かった。


『ぱちぱちぱち‼︎』

 そんな姿を見て観客たちは拍手を贈る。それは澪と夢坂にも贈られたものだった。


「さてと…これで1学期は終了か。疲れた。」

 創士は1人呟くのだった。




次回更新はお休みします。

次の更新は3月12日になります。

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