合成錬成の力
「待たせたな。これが俺の本気だ。」
全身を武装で包んだ創士が言う。
「先に言っておこう。この鎧の能力は…魔法の制御だ。余りある魔法を制御し自分の力にする。抑えきれない魔力を放出する機構を備えている。」
創士が夢坂に自分の能力について説明する。そしてその能力の正しい使い方は…
「お前はコンビ戦で火祭剣とやったのだろ。あいつの魔法の合成錬成は俺が見せたものだ。火祭剣はまだ完成していないようだが…俺は十全に使えるぞ。L4『轟の鉄槌』、L4『真刃の刀』。」
創士の左手に大振りの槌が握られ右手には切れ味だけを追求したような和刀が握られる。
(混ぜるのか?。…火祭の時はちがう属性だったが同じ属性か。…あの左手の槌、草薙さんが使っていた時の質量は片手で持てるようなものでなかった。軽くしているのか。どうなる?)
静かにだがしっかりと創士を観察する夢坂。
「ふっ!。合成。…『狩刺刈刃』。見誤るなよ。この長さを。」
創士の手に大鎌が握られる。持ち手は創士の身長に迫りその刃は湾曲し見事な弧を描いていた。その大鎌を肩に担ぎ創士が言う。
(あのリーチは厄介だな。だけど俺の速度についてこれる訳はないんだ。)
「『鬼纏雷』。『降雷』。…天からの雷滴にご注意を。」
夢坂が右手を上に掲げ雷を呼び寄せる。夢坂に導かれるように雷の雨が降り注ぐ。
「L4『炎大蓋』。…うむ。これでは…」
創士が右手を天に向け詠唱をする。炎の膜が展開され降雷から創士の身を守る。しかし雷の貫通力はそれを貫いてくる。
『ザザッザザ‼︎。』
降り注ぐ雷が地面を穿つ。そして土煙が晴れたとき創士の姿はなかった。
「(またいない⁉︎。…俺が考えた通りなら…)下だ!。『雷公砲』!。」
左手を下に向け魔法を放つ夢坂。地面がえぐれるが下には誰もいない。
『ガッガガ…ザザザ!。』
そんな夢坂の目の前に創士の大鎌の刃が迫る。地面を斬り裂きながら進むその様はまるで獲物に迫る際の鮫のようだった。そしてその鎌が夢坂に向かって飛び出す。
「!。パチチチッ。くそっ!…今…刃が…。」
即座に回避行動をとる夢坂。完全に躱したと思われた大鎌はしかし夢坂を切り裂く。
「はぁはぁ…。」
呼吸を整える夢坂。
「見誤るなよと言っただろ?。」
創士が地面から出てきて言う。そして肩についた土を払いながらさらに続ける。
「お前はどちらかと言うと攻撃に対してギリギリで躱す傾向にある。それは自分の速さに対する自信の表れだろう。そこを逆手に取らせてもらった。…」
また大鎌を肩に担ぎ創士がいう。そして大鎌を右手に持ち替え振りかぶる。
「おりゃ‼︎。」
鎌の持ち手の部分が関節と伸縮部分に別れ伸びながら夢坂に迫る。さらに右手の能力により炎を纏っている。
「…更に伸びるのか。それなら離れればいい。パチチチッ…」
距離をとる夢坂。大鎌が地面に突き刺さる。
「ドンッ‼︎。…シュルルルル…」
その刺さった部分を基点とし、縮む肢の部分。その勢いそのままに創士が夢坂に突っ込む。
「!。カウンターを食わらしてやる!。『雷公砲』」
その創士に対し夢坂は避けず雷公砲を放ち迎撃する。それに対し、
「L4『甲鉄盾』L4『針撃の盾』…合成。『螺子巻殼』。」
盾同士を合成し渦が巻いたような盾を錬成する創士。その盾の表面が回転し
雷公砲の威力を発散させ消し去る。そして2人は対敵する。
「うおぉぉりゃぁぁぁ…‼︎」
創士に向かって拳を連打する夢坂。雷速の打撃が次々と叩き込まれる。しかし…
「それではこの盾を突破できんな。」
回転する盾に拳が弾かれて思うように攻撃できない夢坂。
「くそっ、『雷槍』『雷撃』‼︎。」
闇雲に攻撃をする夢坂。その顔には余裕がなくなっていた。
「足りないな。…いくぞ!。」
創士が盾を右手に持ち替える。すると火を纏い回転によって炎の竜巻が発生する。
「ぐっ…ぐぁぁぁ。」
突如の反撃で身を焼かれる夢坂。
「はぁはぁ…くそっ…もう…帝が。」
その姿は雷でなくなっていた。
「うむ…どうやら終わりのようだな。」
そう言い創士も武装を解除する。
「まだだ!。まだ…終わっ…てないだろ‼︎。L4『矢雷』。」
力を振り絞り雷を飛ばす夢坂。しかしそれは創士によって弾かれてしまう。それを見て夢坂はついに横になってしまう。
「…お前の敗因は2つ。魔力の配分が出来ていないこと。これは帝を使いこなせていないことが原因だ。もう1つは…雷の属性を知らないこと。もっと出来ることがあるはずだ。それを考えろ。そしたらもう一度…今度はサシで闘ってやる。夢坂当夜、強くなれ。」
そう言うと夢坂に背を向け澪達の方へ向かうのだった。
(…負けた。だけど…この戦いで何かを掴んだ。それを…具現化する。…矢沢さんは…どうなっただろうか。)
ここまで考え夢坂は意識を手放した。




