垣間見えた実力
「「「ウオォォォォオ‼︎」」」
闘技場は観客で埋め尽くされていた。話題の1年生コンビと3年最強のコンビとの戦い。さらに終業式の後ということもあり殆どの生徒が駆けつけた為である。
「それではこれよりエキシビションの試合を始める。特典としての試合だがお互いに全力を尽くしてくれ。…言われなくても大丈夫そうだなその顔なら。」
試合の監督を務める槙野が2組の顔を見ながら言う。
「えぇ、もちろん本気の本気でいかせてもらいます。『体雷化』。」
「相手の方が格上だから…先手を取らないと。『体水化』。」
夢坂、澪が自己変化を発動する。帝は発動しない。相手の手を見てから発動する予定だった。
「うむ、どうするか…」
「…会長ここは私が…。貴方達は何故初めから全力を出さないのですか?。それは…命取り。文字通り致命傷です。L5『氷帝』。」
そんな澪達の機先を制するように真利谷が氷帝になる。
「「いきなり⁉︎。」」
「相手が格上だから様子を見てくれると思わないでください。『氷土』。『氷樹海』。」
辺り一面が氷に覆われる。更にその氷から次々に樹が生え澪と夢坂を襲う。
「…ちっ、…L4『雷槍』。」
それをかわしながら雷の槍を飛ばす夢坂。
『キュィィィ…パキキ…』
しかしその槍は次々に生える氷の樹に防がれ真利谷に届くことはない。
「届きませんよ。そんなものでは……‼︎」
「L3『水撃掌』。」
真利谷の目の前には傷を負いながら拳を構える澪の姿があった。距離を置いて戦っていては埒があかないと考えてダメージ覚悟で接近したのだった。
「『ドゴッ!』まだです。『ドドンッ!』L4『時雨弾』。」
右手の掌底から左足を軸に回転し肘打ち、そこから魔法を放つ澪。水撃掌を纏っての打撃なのでダメージは通る。
「ぐふっ……いい考えね。そして…当然くるわよね。」
「当然。L4『雷斧』、L4『雷槍』。」
澪からのダメージで怯む真利谷に夢坂が 雷速で迫る。そして斧と槍が真利谷に振りかぶられる。
「…『凍る…』」
真利谷が魔法を唱えようとする。とそこへ、
『ヒゥィィィーン‼︎…ガガガッ!』
無数の槍が降り注ぐ。槍と呼ぶには少し細い、貫くことだけを考えたようなそれは澪達3人に平等に降り注ぐ。
「ちっ、バチチチッ…」
「きゃっ⁉︎」
夢坂が攻撃を放棄し澪を抱き寄せその場を離れる。
「…会長?私もここにいたのですが?。それなのにこの広範囲の攻撃ですか?。」
槍を全て氷を八角形の形にしたものでピンポイントに止めながら真利谷が言う。
「すまないな。だが…真利谷がその魔法を唱えてしまうと…今のままでは終わってしまうだろ?。2人はまだ帝になってないしな。」
そう言う創士は二の腕を籠手で覆い脛当ても装備していた。それを見た夢坂は
「…思ったより早いな。」
と呟いた。
「?。早いってなんのことですか?。」
そんな夢坂に澪が疑問を口にする。
「…創士さんは武器錬成型なんだけど全身を鎧で覆うんだ。…各部位に魔法が付与されているから詠唱に時間がかかるけど全身が覆われればはっきり言って…かなりヤバイ。だからその前に勝負をつけないといけないんだ。」
夢坂が自分が知りうる限りのことを説明する。
「説明ご苦労。俺は凡人だから時間がかかってしまうんだ。だがまぁ…君達ならフル装備にならなくてもいけそうだな。L4『斬岩剣』。」
創士が剣を錬成し構える。
「矢沢さん。なるしかない。ここで詰めないと勝ち筋がなくなる。『雷帝』。」
「分かりました。『水帝』。」
2人揃って帝になる。
「やっとなりましたね。まぁ及第点ですね。ここまでして帝にならなければ…終わらせているところでした。」
背筋が冷える声で真利谷が言う。その言葉に澪、夢坂だけでなく何故か創士も震える。
「…それじゃあ第2ラウンドといこうか。君達の健闘に期待する。」