夏の暑さに勝る戦い
「本日をもって夏季休暇に入る。それぞれこの夏を過ごす事だろう。怪我をするな等と無粋なことは言わない。怪我をしてでも何かを得た方が良い。1年、この学園の仕組みは分かっただろ。夏明けからは挑んでいけ。その為の力をつけろ。2年、上にも下にも生きの良いのがいるぞ。上に挑み、下を蹴散らせ。3年、最高学年として恥ずかしくない力をつけろ。それはこれからの人生の力になるだろう。…休み明けに諸君の引き締まった顔を見るのを楽しみにしている。」
学園長が終業式の壇上から生徒たちに向かって言う。それぞれの学年に対して発破をかける発言。それは休み明けにある、あるイベントを見据えてのことだった。
「…後は…言っておこう。夏が明けると諸君らの人生を変えるかもしれない出来事がある。ただしそれに参加できるのは選ばれた者だけだ。参加したければ勝ち残るしかないな。」
以前如月が訪問した時に話をしていたイベントである。
「さて、あまり話しても飽きるだろう。これで式を終了とする。」
学園長が式の終了をつげる。その言葉を合図に生徒達は各自の教室に引き上げていった。
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「イベントだって。何すると思う?。」
重が剣に尋ねる。先ほどの話ででた夏明けのイベントについてである。
「ん?そんな話もしてたな。…そうだな、…なんだろうな?。」
式の最中に寝ていた剣。おぼろげな記憶の中から探し出すが結局考えても分からず、適当に返事をする。
「剣に聞いた俺が馬鹿だったよ。澪ちゃんにも聞きたいけど…もういないしな。」
剣の態度に呆れる重。いつも一緒にいる澪はこの後の試合の準備の為既に闘技場に向かっている。
「よーし席につけ!。サクッとホームルームするぞ。みんな矢沢の応援に行きたいだろ。えー…っと死ななければ良い。楽しく過せよ。…以上。」
その言葉通りサクッとホームルームを終わらせる槙野。そのまま教室を出て行ってしまう。その向かう先は当然…
「あ!ちょ、剣。もう先生行ったぽいよ。俺らも行こう。」
槙野の行方を見て重が剣に言う。そして教室を飛び出る。
「わぁーたよ。行く行く。ちょっと待てよ。」
その後を剣が追って行くのだった。
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「どうだい?矢沢さん。今日の調子は?。」
夢坂が軽く体を動かしながら隣にいる澪に尋ねる。
「そうですね。バッチリです。本気でいけます。」
澪も集中を高めながら夢坂に返す。2人は今闘技場近くの教室に設けられた控え室にいる。対戦相手の2人の姿はない。
「…来ないな。舐められているのか、それとも…」
夢坂が何かを考えるような顔をする。そこへ、
『ガラガラガラ〜』
ドアが開き人が入ってくる。
「おや?もう来ていたか。だがまぁ遅刻はしていないだろ。」
「会長が時間をかけすぎたせいですね。」
創士と真利谷が現れる。その額にはうっすらと汗が滲んでいる。
「そんなことを言うなよ。本気で戦うためにはそれなりの準備が必要なんだ。特に俺みたいな凡人にはな。」
創士が言う。聞く人が聞けば怒り狂うようなセリフを。
「自分のことを凡人なんてよく言いますね。この学園で二輝まで登りつめておいて。」
夢坂が苦笑いしながら言う。
「いーや、俺は凡人だ。君達のような自己変化でもなく、特に魔法の才能があるわけでも無かったからね。でも…凡人が弱いとは限らない。努力あるのみだ。それは確実に俺の力となった。」
あくまで自分の考えを言う創士。その言葉の端々に確固たる自信が伺える。
「…だから今日は楽しみだ。君達は2人とも才能豊かだ。そんな相手とやると自分の強さを実感できる。今日は…とことんやりあおう。」
そう言い創士が手を差し出す。
「…こちらこそ今日は勝つつもりでやるんでお願いします。」
こちらも闘志を迸らせて手を握り返す。一方…
「あ、あの真利谷先輩お久しぶりです。先日はありがとうございました。先輩のアドバイスのおかげでここまでこれました。」
「そんなことはないわ。貴女は自分の力の使い方を知ったのよ。それを使いこなしたのは貴女。ここまで来たのも実力よ。だから…今日は楽しませてもらうわ。」
こちらでは女子同士が話をしていた。和やかなムードになるも戦いの前独特の雰囲気もある。
「…それじゃあそろそろいこうか。みんなが待ってる。」
そう言い創士が教室を出る。それに3人が追随する。いよいよ学園の最強コンビとの戦いが始まる。
誠に申し訳ありませんが次回更新はお休みさせていただきます。
次の更新は2月24日です。よろしくお願いします。