夏の計画
場所は全星寮。無事にテストを終え残すは終業式と澪の応援のみとなった重達が夏季休業について話し合っている。
「早いもんだね。もう夏だよ。」
重が1学期の間を思い出し言う。入学した当初は多重魔法のみしか使えず荒い戦いしかできなかった。今でもその荒さは残るものの遅延魔法と魔力のコントロールによって大分バランスのとれた戦いが出来るようになってきている。
「…本当にこの学園に入って良かった。新しい可能性を見つけられたからね。」
もちろん今のままで良いとは思っていない。まだまだ強くなる必要があることを如月との戦いで知った。
「めずらしく意見が一致したな。それに関しては俺も同感だ。この学園には倒したい奴がいっぱい居る。今はまだ…少し勝てない。だが勝つために必要なことはわかった。だから…夏明けからは挑んでいく。その中には…あんたらも入ってんだぜ?。」
少なからず自分に自信があった。才能に関しては抜群だと。能力によるゴリ押しで押せると。しかしそれは井の中の蛙だと知る。剣はそれを受け入れた。自分自身を見つめなおし現状を把握、自分の取り柄を知り、勝ち筋を見つける。そんなクレバーな戦いをするようになる。そんな剣が倒したいという人物は同じ寮にいた。1人は重。2人目は…
「わ、私ですか?。……私だって…負けません。…今回の1年生のコンビトーナメント、夢坂君と一緒に優勝しました。私が足手まといでなかったと証明するために勝ち続けます。」
自分に自信のなかった澪は今回のトーナメントで一皮むけ、自信を持つようになった。コンビではあるが1年生のトップに立ったのである。そんな澪に剣は勝ちたい。そしてもう1人はもちろん…
「ん?僕もかい?。そうだねー今はまだ倒されるわけにはいかないな。先輩としてそこは譲れないよ。君達で僕の本気を引き出してごらん。」
若草が笑みを崩さず言う。余裕からではない。本心からその事を望んでいるからである。
「…時に君達は夏季休暇中どうするんだい?。」
若草が3人に夏休みの予定について尋ねる。
「そうですね、うーん、多分一回は家に帰ると思います。そうだろ剣?。」
剣と地元が一緒の重が答える。
「…あぁそうだな。まぁ3日ぐらいは帰るか。その後はこっちに帰ってくるかな。思いっきり魔法を使えるのもここぐらいだしな。」
重の言葉に応える剣。どこか帰省に対して躊躇いがみえる。
「私も実家に帰ります。多分1週間ぐらいになると思います。」
澪も重、剣に続いて自分の予定を述べる。
「なるほどなるほど…つまり休みの後半はここにいるってことだね。う〜ん。」
若草が顎に手を当て考えるような仕草をとる。
「…何かあるんですか?。」
その様子が気にかかり重が若草に尋ねる。
「んー?別に何もないよ。ただ確認しただけだよ。」
どこか意味ありげな顔を若草がするが重達は追求を止める。これまでの生活で意味がない事を学習したためである。
「…さて、もう寝ようか。明日は終業式だし、澪ちゃんは大一番がある。頑張ってね。」
若草が澪に告げる。
「はい、頑張ります。…それじゃあお休みなさい。」
そう言い自室に戻る澪。
「剣…明日は寝坊するなよ。」
「わかってる。出来るだけ善処する。」
「それはしない奴のセリフだろ…。」
言い争いをしながらも重、剣も自分の部屋に帰る。1人残った若草は…
「楽しい夏にしてあげたいな。その為には…明日あの人のところ行って話をするか。」
考えを巡らせるのだった。