超絶技巧の血縁者
「剣の姿が見えない…。これが…彼女の能力か。」
重はその身を持って実感していた。花凛が用意をできたと言ったその直後後ろから斬りかかられた。
「重君。これからは無闇に魔法を使わない方が良い。花凛の魔法は全てを狂わせる。」
事前に情報を仕入れていた草薙が重に注意を促す。が、
「ボヤボヤしてんなよ。」
真っ正面から剣が突っ込んでくる。
「…L2『火炎』×10。」
何もせずにはいられず迎撃する重。炎の塊が剣の方に向かう。しかし剣は一切防御の体制を取らずそのまま突っ込む。
「…⁉︎。なんで…」
剣に被弾したかに見えた魔法はそのまま通り過ぎてしまう。
「!L4『土門』。」
草薙が土の壁を張る。それは後ろに展開されていた。
『ガキンッ…ドゴッ…』
「ちっ、いい感してるぜ。助かったな重。草薙がパートナーでよ。」
そして剣はまた姿を消してしまう。
「今のは?魔法が剣の体を素通りしていったよね。」
重が草薙に尋ねる。
「…おそらく花凛の魔法は…幻覚を見せる類のものだと思う。だから見えたものが正しいとは限らない。」
「あはは、そうだよ。私の魔法は細かい水の粒子を魔法でコーティングして光の屈折を曲げてるんだ。」
花凛が普段通りの姿を現し言う。
(なぜ言う必要があるんだ⁉︎。剣はなぜ止めない。)
花凛の行動を不審に思う重。剣の性格からして何か突っ込むと思ったが何の反応もない。
「行くぜおら!。」
剣が今度は草薙に向かって走る。
(前にいるのはフェイント…。だから後ろ、とはならないはず。なら…)
「L4『斬大地』。」
自分の後方全てに魔法を展開する草薙。
(…待てよ…さっき花凛さんが言ったのが罠だとしたら…)
「!。茜ちゃん!前が本物だ。」
「遅い。」
剣がふた振りの剣で交差するように切りかかる。
「ガッガガガ…。ザシュッ…」
草薙がかろうじて反応し籠手でガードを試みるが籠手ごと斬られてしまう。
「ッグゥゥゥ…」
斬られた痛みでうずくまる草薙。
「これで…終わりだ!。」
さらに剣を振り上げ草薙に向けて振り下ろす剣。
「…ただではやられっ、…ない。L4『土竜窟』。」
草薙が渾身の力で魔法を発動する。草薙と剣の周りの地面半径5メートルぐらいが4、5メートル陥没する。
「お、っと。これは…めんどくさいな。」
上を見上げ呟く剣。
「心配しなくても大丈夫。あなたはここからださないから。L3『覆天蓋』。」
ダメージから回復した草薙が空間に蓋をする。
「つまりあれか、ここを出たければ私を倒していけってやつか。…面白い。」
笑みを浮かべる剣。
「L4『鋼甲冑』。あなたが私に倒されても開くけど?。」
全身を覆い耐久に振る草薙。この狭い空間では機動力は不要と考えてのことだった。
「「………」」
『ガキンッ!。』
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「落ちてっちゃったねー。」
花凛が姿を現わす。
「茜ちゃん…助けに行かないと。」
駆け出そうとする重。しかし、
「おっと、そうはいかないよね。剣君が下に行った以上君の相手は私がするしかないよね。」
そう言って姿を消す花凛。
「っ…L2『蛍火』×100。」
魔法を放つ重。
「ダメダメ。その魔法は視認してないと追尾してくれないよ。L4『水波』。」
重に大波が襲いかかる。
「L2『火炎』×100。」
波に向かい魔法を撃ち相殺する重。
「思った通り。L3『水撃掌』。」
後ろから花凛が現れて重の体に掌底を浴びせる。
「ぐ…『火拳』。」
攻撃を食らいながらも振り向きざまに炎の拳を振るう重。
「L4『水沼』。沈んじゃって。」
重の足元の土が液状化を起こし膝まで沈む。
「…まだだ。L2『…ゴボッ⁉︎」
「だろうね。だから覆うよ。L4『水獄』。」
重の顔にだけ水獄が展開されて呼吸を封じられる。
(それでもまだだ…まだ火拳が残ってる。先ずは土台を殴って…)
「こうすると君は思うよね。それならこの拳でって。だからそれも許さない。L4『水成槍』。
重の二の腕に水の槍が刺さる。
「ゴボボッ……(うぁぁっ!)」
若草を彷彿とさせる読みの力で確実に重を追い詰める花凛。
「君とは仲良くなりたいけど…これは勝負だから。それに剣君とも約束があるしね。」
「だからこのまま私に倒されて。」




