それぞれの戦い 2澪
SIDE澪
背後からの奇襲に失敗した澪。風待の後方2メートルぐらいのところで何かにぶつかり停止した。
「…っ。(今のは?。完全に気づいてなかったはずなのに…。何かにぶつかった?。ダメージ自体はそんなに大したことない。というより…私がぶつかる時のエネルギーそのもの…。)」
冷静に現状を分析する澪。その推理は確実に真実に近づいていた。
「いや〜いきなり消えるからびっくりしたわ。でもまぁ、問題ないわ。既に終わってる」
風待が不敵な笑みを浮かべる。
「L4『風刃』。」
風待が魔法を発動する。風の刃が澪に襲いかかる。
「…それくらいなら…」
魔法を使わず避ける澪。しかし
「…ガッ…。また…なにかに当たった。」
横への回避をしようとしたが回避した先で先程と同じようになにかにぶつかってしまう。
「そこに止まっとったら終わりやで。L4『風斬』。」
風待の手の振りに合わせて風の刃が澪に向かって飛んでくる。
(…下手に動けない。受けるしかない。)
「L3『水陣壁』。」
水で壁を張る澪。しかしそれだけでは止まらず体に斬撃を浴びる。
「…くぅ…まだ、まだやれます。」
「流石に耐えるか。ええやん。燃えてくるわ。」
(さっきからのあの謎を解かないと…満足に動くこともできない。…さっき先輩はもう終わっていると言った。…つまりそれは…!。もし本当にそうなら…)
「…L3『時雨弾』。」
澪が魔法を放つ。しかしそれは風待にではない。先程なにかにぶつかった場所。すると、
「…ドンッ。」
空中で時雨弾がはじけた。というよりまるで壁にぶつかったようだった。
「…やるやん。よう気づいたな。」
笑みを消し真剣な顔で澪を見つめる風待。
「先輩は…風属性で見えない壁を作っていたんですね。」
先程の検証から得た答えを言う澪。
「…そうあんたの予想通り俺は見えへん物体をこの空間に配置してんねん。ちなみに俺には見えてるけどな。」
「まぁ種明かしが済んだところで俺も本気でいこかな。眠たなってきたし。」
風待が駆け出す。
「…L2『水波』。」
体から水の薄い波を飛ばし風待の魔法を察知する。しかし有効範囲は体から2メートル。しかも常に放出するので魔力の消費が激しい。
(こっちにも…一体いくつあるの?。)
自分の周囲2メートルだけでも2つ感知できた。
「いくで。」
風待が上空に飛び上がる。その高さは普通ではない。
「まさか…自分の魔法を踏んで。」
「そう。俺にとっては階段と一緒。ほんで…気つけや。俺は出した後の魔法を操られへんとは言うてないで。」
風待が人差し指を横に振る。
「ま、…くっ…。」
先程感知した物体が澪にぶち当たる。
「…L4『水柱』。」
水の柱を召喚し風待へと攻撃を仕掛ける。が、
「残念。届かんわ。」
途中で防がれてしまう。
「…ほんまにこんなもんなん?。…ちょっと期待ハズレやわ。終わりや。」
風待が手を動かす。
(まだ…やれる。…!なにかくる。これは…この形は…)
「…ぐっっ…カハッ…。」
飛来したもの。それは長さ1メートルの槍だった。感知した時には遅く貫かれる澪。
「あんた帝になれるって聞いとったのにな。なんでならへんのか知らんけど負けたらそれまでやで。勝ったもん勝ち。負けたらなんの意味のない。」
「うぅ…(わかってた。帝にならずに勝てる相手ではないと…。なのに…試しもしなかった。怖いから。失敗して結局なれなかったら居場所がなくなる気がして。近づけた距離が遠くなるような気がして。…でも、みんなは頑張らない方が怒るよね。なんでこんなに気づくのに時間かかっちゃったんだろ。)。……L5『水帝』。」
澪が口にする、そして発動する。
「あまり時間が残ってませんがよろしくお願いします。」
魔力の残量が少ない澪。
「なんや、やっぱりなれんのか…」
「L4『白浪』。」
姿を消す澪。
「消えたか…。(多分さっきまでと違うな。こっちも本気でいかな押し切られる。)。」
物体を操作し自分の周りに配置する。その形は立方体やトゲトゲの球、槍など様々である。
「そんでこれを…」
風待が念じると物体たちが高速で周りを巡回し始める。
「どうや?。」
「…今の私にそれは無駄です。」
上半身だけの澪が風待の目の前に現れる。その両手には水が高速回転した弾が納められていた。
「…そこから来るんか!。」
右手を振り槍を向かわせる風待。
「無駄です。」
槍の進路に水の盾が現れる。
「下半身を霧状にしてこの一帯に散布しています。今なら全てわかります。」
そう言い両手を突き出す。澪の最後の一撃。当たればタダでは済まない。
「くっ、…さっき期待ハズレ言うたんは謝るわ。でもな、この言葉は訂正せーへんよ。終わりや。」
風待が両手を振り落とす。すると風待が乗っていた物体が炸裂。中から風の刃が四方八方に飛び出してくる。それは澪だけでなく風待にも襲いかかる。
……………そこにいたのは、
「…つぅ…痛いわ〜。できれば使いたくなかったのに使わされるとはな。でも流石にこれは避けられへんかったし…魔力切れやな。」
その手には澪が抱かれていた。風待の自爆で魔力が切れ気絶してしまったのだ。
「…若草の言うとった通りこの子は自分に自信がなさすぎるわ。こんだけ強いのに…もったいないわ。俺やったらイキリ倒してるやろうけどな。」
「はぁ疲れた。眠かったけど最後に眼覚めてもうたな。この子送ったら特訓しよかな。」
そう言い澪をおぶって保健室に向かうのだった。
次回更新は12月24日になります。




