それぞれの戦い 1草薙
SIDE草薙
闘技場の地形はめちゃくちゃに変形してしまっていた。それは2人の魔法の属性によるものである。
「L4『大震脚』。」
草薙が並木に攻め寄る。その手には甲鉄籠手が装備されている。
「もらった。」
飛び上がりアームハンマーの要領で腕を振り下ろす。
「ダメ。L4『斬大地』。」
並木が足を踏み込み地面から岩の棘が飛び出す。
「っく…。」
とっさにガードする草薙。しかしそれは相手の思うツボだった。両手を前にしてのガード。それによって草薙の視界は無くなっていた。それに気付き並木を探して前を見た時既に並木はいなかった。
「…ちゃんと相手を見て。」
いつの間にかタックルの要領で腰に接近されていた。
「…L4『堅体芯』。」
体の表面を岩で覆った並木の体当りのような一撃。
「グッ…うぁぁぁぁー。」
その衝撃に耐えきれず吹き飛ばされる草薙。
「L4『土門』。」
草薙の背後に土の壁が出現。
「…ガハッ…グゥ…。」
その壁に叩きつけられる草薙。
(な、なんとかしなければ…)
何か手を打とうとする草薙。しかし並木は手を緩めない。
「…L3『土砂縛』。L4『岩錠』。」
土門から鎖で這い出て草薙の体を拘束。さらに手首と足首に枷が課される。
「…う、動けない。え、L3『礫土岩』。」
草薙が苦し紛れに礫を飛ばし攻撃を仕掛ける。
「無駄。L4『斬大地』。」
冷静に防ぐ並木。そして草薙に歩み寄る。
「…くっ、ここまでの…差が…あるなんて。」
壁に張り付けられた草薙が言う。
「同じ属性。同じ戦闘スタイル。それでこれだけの差が出る。これが経験。」
草薙の対戦相手である並木が草薙を見上げながら言う。その両手にはその小さな体には似つかわしくない籠手が装備されている。
「あなたは大技で決めに行き過ぎ。小回りが利かなすぎる。だから見失う。懐に入られる。」
「属性のことを知らなすぎ。私たちの土属性は他の属性に比べて応用がきかない。重い。硬い。つまり膂力。それを活かす方法を考えて。」
「その後の対応もダメ。何かをするのが遅すぎる。結果手遅れ。もう終わり。」
淡々と事実を告げる並木。
「これで終わりにする?。それとも…トドメを刺す?。」
草薙に尋ねる並木。ここで解放して終わるか気絶させるか。その選択を草薙に委ねる。
「…最後までやってください。その痛みをこの身に刻むことにしましょう。そして忘れません。私は…強くなりたい。」
並木から目を背けず気絶することを選ぶ草薙。
「ん。その覚悟は良い。わかった。頑張って強くなって。その時はまたやってあげる。」
並木が右手を振りかぶる。
「じゃ。お疲れ。」
そして草薙の戦いは終わった。
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SIDE澪
「それじゃあやろや。」
澪の対戦相手である風待が言う。
「はい、お願いします。『体水化』。」
澪が早速自己変化する。
「おー自分自己変化か。珍しいな。」
風待が驚いた様に言う。
「ほんだらいくで。L3『風切』。」
風の刃が澪に迫る。
「L3『水陣壁』。L3『時雨弾』。」
水陣壁で防ぎ時雨弾で切り返す。
「おお!。ええやん。L3『風陣壁』。」
お互いに遠距離の魔法で様子を見る。
(この人は今は私の様子を見ている。攻めるなら今。)
「L2『散り霞』。」
一旦姿を隠す澪。
「お?。なんや見えへんな。」
キョロキョロとあたりを見回す風待。
「L3『水鎖』。L3『水撃掌』。」
風待の動きを水鎖で止め水の掌底を加えようとする澪。背後から加速し接近する。
「…え…な、なん…で…。」
しかし澪の掌底は届くことはなかった。
「そこにおったんか。びっくりしたわ。」
澪の方を振り向く風待。その顔にはいたずらが成功した時の子供の様な表情が浮かんでいた。
次回更新は12月22日になります。




