重対草薙後半戦
「L4『甲鉄籠手』。この手で私は自分の願いを掴み取る。」
草薙の両手に籠手が現れる。先程より大きく二の腕までを覆うそれは鈍い光を放っている。
「L4『土門』。」
草薙が唱える。するとなぜか重の後ろに土でできた壁が出現する。
「な、なんで⁉︎。」
重が動揺し草薙から目を離す。
(やばっ、さっきと同じ展開じゃん。)
その目前には腕を振り上げた草薙の姿があった。
「やばっ、L2『火炎』かけ…。」
『ドゴッ』
咄嗟に魔法を詠唱しようとする重。だが先程の奇襲の失敗から重の反応速度をしった草薙は詠唱が終わる前に重に一撃を加えたのだった。
「うわっ…、く〜、今のはもろに食らったな。実戦だったら…終わってたかも。」
そう言いあたりを見渡す重。しかしそんな彼に草薙は攻撃の手を緩めていなかった。
「まだまだいくぞ。L3『礫土岩』。」
石の礫が重めがけて飛んでくる。
「L2『火炎』×10。…こっちからもいかせてもらう。L2『篝火』×100。」
礫を火炎で防ぎ反撃に転じる重。篝火によって相手の視界を奪う。
「L2『火炎』×100。(この力を右手に…)。」
重の右手に本来発生するべき魔法が集まる。
(熱っ。あまり長くは維持できない。自己変化型でもないしね。…決める。)
そう決意し、草薙の方に駆け出す重。
「!。(何か来る。)。」
使えない両目を閉じ、集中をする草薙。
「うおぉぉりゃー。」
重は渾身の力で右手を振り下ろした。
「…危なかった。君が最後に出した声が君の敗因だ。」
そこには両手の籠手で重の右手を受け止めた草薙がいた。その籠手はすでに焼け落ちている。
「この籠手は特別製だ。私の魔力を流し続ける限り再生し続ける。…なんとか止まった。」
重の攻撃でほとんど焼け落ちていた籠手が今は半分ほどになっている。
「……………。」
「どうやらそれが奥の手だったみたいだね。この距離に入ったのは間違いだった。私の勝ちだ。L3『土縛鎖」。」
重の足に鎖が巻きついていく。草薙が両腕を振り上げアームハンマーの体制に入る。
「終わりだよ。」
「…どうやってここまで近づくかが問題だったんだ。」
重が言ったその時、
「がっ…はっ、…な…に。」
草薙がその顔に苦悶の表情を浮かべ、そのまま倒れたのだった。
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「教えてくれ。最後に一体何があったんだ。」
病室で目を覚ました草薙が重に問いかける。最後の場面重は自分の前にいた。何も不審なことなどしていなかったはず。
「私が説明してあげよう。」
東堂が病室に入って来る。
「2人とも素晴らしかったよ。いいものを見せてもらった。っと、それより最後のことだよね。」
「あの時、君は確かに彼を追い詰めていた。あとはその腕を振り下ろすだけで君の勝ちだっただろう。だが彼は隠していた。」
「最後に使ったのは遅延魔法だね。目隠しをしている間に唱えていたのだろう。そして討って出た。その一撃は君に防がれるのは計算のうちだったんだろ。」
「君は彼が自分の目の前にいることに安心してしまった。この油断こそが彼の狙いだった。そして遅延魔法でためておいた魔法を発動し君の後ろを取ったわけさ。」
東堂が最後にシーンの説明を終える。
「八神くん…だったかな?。君の遅延魔法は…。」
「はい。若草先輩に教わりました。まだ一個だけだし少しの間しか留めておけないですけど。」
時間にして約2分。それが重の限界であった。
「そうか。若草が…。あいつも変わったな。」
東堂は小さくそう口にした。
「…私の完敗だな。最後の最後まで勝つ努力をした重くんの勝ちだよ。」
草薙が自分の敗けを認める。
「あ!そういえば勝った方が負けた方に一つお願いできるんだったな。どうするんだ八神君。」
戦う前に決めた約束を思い出した東堂。
「え⁉︎俺は別に何も…」
「…私にはなんの価値もないということか。」
重の発言を聞き見るからに落ち込む草薙。想い人になんとも思われていないことに落ち込む。
「ま、待って。そんなことないよ。えーと、そうだ!。俺と友達になってよ。また一緒に訓練しようよ。」
(か、重くんと友達に…。そうよね。まずは友達から。)
「…いいわよ。友達になりましょう。」
顔を赤くしながら了承する草薙。その顔には笑みが浮かんでいた。
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「だから俺は用事があるって言ってんでしょ。」
「黙って課題をやれバカ!。」
先生に捕まった剣はまだ解放されてなかった。
次回更新は11月24日になります。




